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ZEROミッシングリンクⅡ【2】ZERO MISSING LINK2  作者: タイニ
第十五章 繋がる点や線
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91 マフィアも警察を呼…びたい



真夜中のスラム。


ある路地に入ろうとしたカップルを、完全装備の男が遮る。

「すみません。こちらは今立ち入り禁止区域になっています。この区間から引き返してください。」

カップルの男の方が面臭そうに反抗しよとしたが、武装の男の大きさと、手に握られていたライフルを見て引き下がった。


その、現在立ち入り禁止区域。

河漢の中心地から少し離れたところで、静かなる喧騒が起こっていた。殆どが起こっていることと対称的な小さな音だったが、時々銃声が響き、何かがぶつかったり弾けたりする音がする。


さらにその近くの建物の奥。大きな机越しに対面するスーツの男と、足を組んでふてぶてしく座る、黄の入った白金の髪の女。


「で、まあよくウチのに手え出してくれたな。」

どう考えてもいい人には見えないが、チコである。

何枚かの怪我の写真を出して責任とれという物騒な女性。


チコの横には3名の武装兵。

男の横や部屋全体は、柄の悪い連中が取り囲んでいた。

「お前らが俺らの土地を荒らしてるんだろ。」

「はあ?お前の土地の訳ないだろ。ここは河漢の土地だよ。」

「河漢行政はお友達なんだよ!ベガスに引っ込んでやがれ。」


「あっそ。でも、一定以上の襲撃があったり怪我人が出た時点で、私たちが河漢に入れるよう決まっていてね。ありがたくこの前の襲撃で、うちのを派遣していいことになったわけ。アンタレスの中央行政からお許しを貰えました。」

「はああ?!!」

「それに、お金を掛けたから東アジアに奉仕しろと言われて。私もちょっとくらいベガス以外で役に立たないと。」

「チコ様、だからと言って河漢を〆ろとは言われていません。」

横からアセンブルスが口を出す。

「うるさい、お前は黙ってろ。」


スーツの男は偉そうにチコに言い返す。

「何も殺そうとしたわけじゃない。腕の2、3本折って分からせようとしただけだ。ガキどものな。」

「…。」


スーツ男が合図を出すと、近くにいた手下が素早い動作で武装兵の1人の頭に銃を突きつけた。

「いい気になんなよ。」

とスーツ男が強がったとたん、武装兵がトリガーごと後ろにいた手下の手を掴み一気にねじ伏せる。もう1人の手下が武装兵に発砲したが、掌で弾を受け3人ほど一気に蹴り倒した。

「ひいいいいっ!」

スーツや手下たちはおののくが、チコたちは微動だにもしない。

「お前たちリサーチ不足だろ。ユラスに手を出すなって聞いたこともないのか?」


場が騒然となったところで、1人の手下があっという間にアセンブルスの横に入りナイフを振りかざした。


が、アセンブルスも簡単に剛腕な手下を机にねじ伏せてしまう。

横にいたチコに足蹴りを入れようとしても、チコは椅子のキャスターを動かして少しずれた。アセンブルスにも当たらない。


「どうします?分からせるために、この男の腕の2、3本折っておきますか?それとも息子さんの方で?」

アセンブルスが冷たく言いさらに付け足す。

「苦しみたくなかったら、一瞬で殺る方法も知っていますが?」

「お、お前らやくざか?!警察を呼ぶぞ!」

スーツ男がビビる。

「なんでヤクザにヤクザ呼ばわりされるんだ…。しかも警察って…。」

他の武装兵が呆れる。そこでチコが思い出したように言う。

「あ!私たちが動いたら、一般の警察は来ないから。」

「はあ??!」

「特警が来る。彼ら、お友達だから。ちょっと微妙な関係だけど。」

「くそお!!!お前ら殺れ!こいつら殺っちまえ!!!ジリオルはどこだ!!」


と、その時大きなドアから、武装兵ことフェクダが部屋に入って来た。

「チコ様!ひどいんです!カウスの奴!!」


チコたちが無言でドアの方に注目すると、フェクダはガザっと2体のロボットを転がす。

「壊すなって言ったのに、あいつボッコボコにしました!」

「正統防衛だ。正当防衛!」

そう言って現れたカウスが、もう1体の機体を転がす。


その機体を見て真っ青になるスーツ男。

「ジリオル!!!!」

なんだなんだと男を見る武装集団。多分、カウスが抱えて来たニューロスアンドロイドの名前だろうとは思う。


「ふざけんな!1体いくらすると思ってんだ?!!5億だぞ、5億!!」

あー。やってしまったという顔をする、チコやアセンブルス。

「お前らのせいで、この前1億ちょいの機体を13体も回収されて、ニューロスまで!!」

「すまん。」

「あの業者悪どい商売しやがったな!!この機体なら河漢ぐらいイケるとか言いやがって!」


フェクダはまだカウスに食って掛かる。

「壊すな!て言っただろ!」

「反撃がしつこいから…。俺が怪我する前にこっちも反撃しただけだろ?」

「ニューロスだったら人を殺すようなことはしないだろ!!ロボも15体全部壊しやがった!」

「全部じゃない。数体残ってる…。というか、俺の身の心配しないのか?殺されなくてもケガはする…」

普通のロボットと違って、意志あるニューロス体は人間を殺すことは基本できない。絶対にカウスは楽しんでいたと決めつける武装集団。


「カウスを連れて来たのは間違いだった…。」

チコがうなだれる。どう考えても必要以上にボコってあった。

「お兄さん悪い。たくさん壊したみたいだけど、賠償はしないから。」

スーツ男にチコが謝る。が、犯罪組織の犯罪に使った武器を壊しても罪にはならない。むしろ回収である。


「この野郎!絶対に殺す!!」

スーツ男がかかってこうとするが、スーツ男自身の大柄の部下に押さえられていた。周りももう動かない。絶対に敵わないと思ったのだろう。


「元気だな。」

スーツ男に呆れるも、チコはアドバイスしておく。

「ウチらにロボットを投入しても無駄だし、ニューロスも5億なんて中途半端なの買うぐらいなら、20億とか30億の買った方がいいぞ。護衛じゃなくて戦いたいんだろ?一般の護衛なら十分だと思うけど。」

「うるさい!黙れ!黙れ!黙れ!!」

「パパからもらったお小遣いだろ。どんな金にせよもっと考えて使えよ。」


「その前に、戦闘用のニューロスなんて一般で手に入りませんから。変なアドバイスしないでください。」

アセンブルスが付け足す。

「俺ら一族は一般じゃねーんだよ!!!」

「私たちは一般人ですのでこれで幕引きします。」

「ふざけんな!お前らが一般人の訳ねーだろ!!!!俺らより悪どいわ!!!!」


そしてスーツ男を止める部下に話しかけた。

「お前の方が話が通じそうだな。」

「…。」

「今度正式に別途話し合おう。こいつのお父様に、バカ息子を回収するように言っとけ。」

「くそおお!どいつもこいつも俺をバカにしやがって!!兄貴がなんだ?!俺の方が優秀なはずだ!!」


このスーツ男。別の場所を仕切っていた組織の4男で、優秀な兄たちと違い邪魔なので親が河漢に入れて放置していたのだ。元々いた河漢の組織とぶつかってはいたが、親同士の話し合いで囲いを決めこれまでギリギリで共存してきた。


「今時こんな前時代な方法馬鹿らしくないか?まだお前らみたいなのがいるなんて思ってもいなかった。話し合ってみるか?それとも今、特警呼ぶか?」

「メカを回収してもらわないといけないので、もう呼んでいます。」

「…。」

折角選択を与えたのに、何もかも手早いアセンブルスにチコは顔をしかめる。



何人かの男たちは黙って聞いていた。

ユラス再建で使った、理性があり頭の回る人間から囲っていく方法である。




***




アンタレスのある有名大学の講堂。


よく晴れた日、講堂内は大きな活気に満ちていた。



「そうですね。なんだかんだ言って、電気が一番スムーズなんです。人間の中にも電気は流れているし、すべての物質に電気は働いているでしょ。」


シリウスが指を弾くと、指から美しい青白い光がふわっと現れパチンと弾けた。

講堂に様々な感嘆や笑いが起きる。


その日シリウスは大学内のフォーラムに参加していた。


「では技術的な質問から内情的な質問に移りましょう。シリウスさんの精神性などについて質問があればお挙手をお願いいたします。」

MCの学生が進めていく。


ひとりの青年が挙手をして発言の機会を得る。

「ロボットを人類の構想の中に生んだ時から、ロボットを婚姻的パートナーにするという映画や小説的な夢があります。それに関してはどのような考えがあり、またその考えの根源は何ですか?」


シリウスはにっこり笑う。

「私の礎は人類歴史を作って来た聖典にあります。ただ、それは人が読む角度だけでなく、そこに隠された暗号まで解読していきます。その点で言えば、答えは『そのパートナーにはなれない』です。」

会場が騒めく。


「人間同士が愛し合えないことを、私たちで補うことはできません。人間がその努力を放棄したこと自体が、コンピューターに、機械に物に支配された世界を生むのです。」


シリウスは様々なホログラムを映し出しながら続ける。

「ある意味で私たちはデバイスによって、あなた方の愛と関心を80%くらい人から奪い支配しています。

スマホやデバイス中毒の方、たくさんいるでしょ。」

シリウスはいたずらっ子のように笑った。


「でも、情報(それ)は浮遊しているだけなんです。


お話しできることはたくさんありますが、このことは次回にしましょう。質問の枠では収まらないので。」




全体が終わり、暫く学生たちに囲まれているシリウスは、少し後ろの席を見た。

その学生たちから少し離れたところにいる、背が低めの眼鏡の男子。スタッフに頼んで彼を控室に彼を呼んでもらった。




「こんにちは、お久しぶりね。覚えています?」

「…はい。お久しぶりです。」

「よかった。ラス・ラティックス君」


ファクトの幼馴染のラスだった。



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