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ZEROミッシングリンクⅡ【2】ZERO MISSING LINK2  作者: タイニ
第十四章 in ベガス2
82/110

80 鋼の男

ごめんなさい…。

また名前をいくつか間違えていました…。


エリスの美人な娘。

×陽鴉→〇陽烏 よううちゃんです。


サルガスの最初の彼女

〇ユンシーリ




完全に目が合うサダルとサルガス。

一歩後ろで青くなるチコ。お前らバカか?!の合図を送る。


サルガスは立ち尽くし、その腕を掴んで同じく立ち尽くすパイ。


アーツ側もサダル側も固まっている。何せ、胸がこぼれそうで長い足もさらけ出した女性がサルガスの腕を掴んでいる。しかもわざとらしく胸を押しつけて。大房民のダンスをするメンバーは、スカートの時はスポーツパンツ一体型やインナーパンツなど履いていることを知っているが、そんなとこは知らないであろう普通の人には、角度を変えたら下着が見える状態である。そもそもホットパンツであろうが腿丸出しだ。


なのに悠長に聞いてくるパイ。

「…あの人たち誰なの?」

今回チコは第3弾の面談はしていないので、パイはチコを知らない。

「連行されるの?」

されればよいと思ってしまう、病み気味のリーダーである。


サルガスが冷たくバッと、パイの手を振りほどいた。

「こんにちは。」

とそれだけ言いキレたまま去ろうとすると、サダルに止められる。


「ちょっと待て。説明責任があるだろ。」

ユラス基準で見たら、パイはほとんど夜の客引きをしている女性の格好であり、ベガスでなくてもアジアならオフィススタイルとしてもアウトだ。

頭を抱えるサラサ。


「すみません。昔の知り合いが来ました。管理不足です。」

「後で話そう。こういうことが頻繁にあったら問題になる。」

「…………」


それはそうだろう。ただ来ただけでなくそんな恰好で腕に絡んでいる。しかもここは、連合国認定公的機関の事務局前だ。


ジトッとみんながパイの方を見た。

「えー!?何々っ?私が悪いのー??」

戸惑うパイだが、サルガスは1人歩きながらテーブルの上にあった誰かのペットボトルを蹴り、浮いたままグジャ!と床に踏みつけ、そのままどこかに行ってしまった。ボトルに残っていた水が飛び散っている。



「なんでこんな状態が放置されている。ここはどこなんだ?」

サダルが全く無表情でチコに詰める。そして後ろにいたカウスの襟首を掴んで引き寄せた。

「お前も責任者だろ?」


「ひっ!」

パイが思わず後退りする。

「申し訳ございません。」

カウスがそれだけ言うと、サダルはバッと押すように手を離し案内された事務局前の会議室に入っていく。カウスたちも顔1つ変えず動いていた。



タウたちも見ていることしかできない。


ソアが動けなくなっているパイを捕まえ、後ろから肩を押さえた。そして、事務局にあったイータの大きなストールを肩から被せる。

「パイ、ちょっと外で話そ。ウヌクも一緒に。サラサさん行っていいですか?」

「頭が痛い………お願いする…。」


これからサダルたちと会議のサラサはちょっと泣きたい気分だった。




***




ここで、普通の人だったらこのまま帰ったり、明日も欠勤とかになるのだろうが、この真面目な男は次の時間にはもうすでに戻ってきていた。


しかも、サダルメリクの怒りの嵐が起こるかも分からない渦中にである。


「あれ?サルガスもう帰ってきたの?」

拍子抜けする、一同。

「ああ。なんで?」

なんともない顔でサルガスが言うので戸惑う。

「なんとなく…。」


「これ以上サルガスを怒らすな」と伝令が来ていたのに拍子抜けである。今週いっぱい……とは言わないが、大きなスケジュールはないし、働き詰めなので2、3日休んでもいいのに…とメンバーは思う。

成り行きでリーダーになったとはいえ、やはりチコたちが選んだ人間は違うのか。第1弾試用期間ではそれほど目立たず、黙々と仕事をこなす普通の青年に見えたのに、メンタルが(はがね)過ぎる。


誰もが、自分だったらこんなことが起こってサダルの呼び出しまで食らったら、今週いっぱいは逃げ切る!と自分の行動を確信する。



しかし、サルガスは普通の顔で仕事に移った。

「今集まれるメンバーで、組織ができてからの事をまとめよう。」


河漢に行かなかったメンバーや集められる人間を会議室に集合させる。

「かに丸。アーツが出来てからを大きい節目と弾ごとにまとめてくれ。」

サルガスがそう言うと、第1弾から3弾の大まかな年表や組織図をかに丸が作ってくれる。ちなみにかに丸はファクトが勝手に付けたサルガスのAI名である。


そして大き目のテーブルが、デバイスにあるアプリのホログラムで6つに仕切られ、第何弾を期間に変えて1期から3期までの利点欠点を分けられるようにする。テーブルタップしたり音声を入れると付箋が出るので、そこに項目の答えを読み上げ、もしくは書き込みして該当枠に飛ばせる。


例えば「第1弾 全員を把握できる。まとめやすい人数」と付箋に打ち込むと、その付箋は1期の利点に飛ぶ。「収集がつかない」と書いて3期に飛ばせば、3期の欠点になる。「事務を任せられる人間が増えた」だと利点に飛ぶ。中間意見は真ん中辺りに飛ばせばよい。


好きなだけ意見を出していきまとめていき、最終的にこれまでの記録と合わせ、自己分析や組織整理、解決方法を模索していく。



この方法を進めていくうちにシグマが1つの結論を出す。

「ここで思うのは…最初の拠点が大房で、ほぼ大房の人間で、1期はリーダーも全員大房で、しかもアストロアーツだけが出発点となっている…。」


今日、パイやウヌクに散々悩まされたローがしみじみ言う。

「そして3期も未だ大房が中心となるどころか、今まで忘れていた人物、断絶した過去も浮き上がってくる…。世界が狭いもんな大房。」

第3弾は4分の1ほど大房。第2弾は全体的には様々な地域から来ているが、半数弱は大房やその近辺だ。


「という訳で、整理しないとなー!大房!」

と、みんな笑うも、

笑えねーと、何人かがため息をつく。パイみたいなのがこれ以上来たらたまらない。


そもそも、2弾から集まってくる層が広がったため、大房のしがらみを取り去ろうと思ったのだ。

なのに、突然大房の議員や商工会などが、大房の名前を取らないで!とすり寄ってくる。チコも取り敢えず東アジア側は大房に起点を置こうと言って来る。なので、大房を断捨離できなかったのである。


熱い郷土愛があるわけでもないが、嫌っているわけではない。ただ、しがらみが多いので今後真剣に仕事を展開したいと考えたメンバーは、あまりにも違い過ぎる過去を一旦断ち切りたかった。



実際第1弾は、お互い将来を決めているパートナー以外は、彼氏彼女も全部断ち切って来いと言われ、全員そうしている。


下町ズは知らないが、最初に物理的に断ち切らないと、そういうものが流れ込んでくるという事を、チコたち霊性の見える人間は知っているからである。なので人は、世俗を離れ数千年間修道をしてきたのだ。

残念ながらまだ人間は、PCのプログラムより意志が弱いので、一時の居心地の良さに簡単に惹かれていく。それを超えるのは、それ以上の強制力や信念しかない。多少でも強さや別の精神性ができるまで、自分で断捨離的な環境に身を置くしかないのだ。



ただ、今回の場合は同じ世俗に流されるでも少し次元が違う。


ただ本人たちが感情や欲に簡単に惹かれて流されていくというだけでなく、霊性が前より高い位置に来た者を、引っ張っていこうとする力にも向き合わないといけないのだ。本人たちの精神性や霊性が上がっていくと、可視非可視関わらず、良い悪い関わらずたくさんの()()が寄ってくるからだ。



「今度またパイやユンシーリまで来たら困る。どこかで一度大房に帰るわ。

ウヌクにも言っておきたいことがあるし。タラゼドの元カノも来るって聞いたから、確認だけしておこう。」

「タラゼド?え?マジ?」

かに丸が集計していく資料を見ながら、みんないろいろ考察している。

「大房にいた頃よりベガスにいる人間は安定職に就いているし、あっちも歳も取ったから不安になってくるのかもな。噂を聞いた大房の知り合いが安定を求めて。」

ダンスや趣味をしながら仕事をしてきたメンバーたちは、人生や体の変化時に直面して、以前より安定を求めている。


「お前たち感性が老けるのが早いな。20代は無敵と思っていたぞ、俺は。」

30代のヴァーゴが感心する。



「とにかく全員気を付けろよ。女だけでなく、お金の話もあるし、スカウトもある。別の仕事を考えている時は一度相談するように。河漢に関わると、けっこう質の悪いのもいるから。」

淡々とサルガスが注意していく。

「とにかくいろんな()()が惹かれて来るってことだな。」

「そういうことだ。急に金持ちになったら、親戚や友人が押し掛けて来るのと同じだな。」



それからサルガスは、それ以外の話も詰めていく。


これから人が増えることを想定してどうまとめていくか。組織運営の規約や規定は過去のらゆる団体の見本がありそれをモデルにしているが、全くの素人集団からいきなり大型団体になったアーツは、これまでの組織の中で規格外ともいえる。

どのくらいの許容量が今のアーツにあるか、もう少し見極めることが必要だ。そして、やはり第3期以降ももっと人選を精査していくこと。


2期3期は既に学業優秀な人間が比較的集まって来ているので、運営という面においては下町ズを一気に越してしまうだろう。でも、柔軟性のある大房の下町ズだからこそ、想像以上のスピードでベガスと組み、河漢に入ることができたのも事実だ。


「ひとまず第3弾で大型採用は終わりにしよう。今いるメンバーをどう組んでいくか考えていきたい。」


正規雇用以外も含めると第2弾までで、100人を既に超えている。大房に戻ったメンバーも籍は外さない予定だが、彼らからもいつかどこかで仕事がしたいから、アーツとして自分を残してほしいと言っている。ここで言う仕事は就職の意味だけではなく、この大型プロジェクトに参加したいという事だ。


「そうか?こういう教育を残すのはおもしろいと思うけれど。」

タウとしては続けたい。

「俺も。おもしろかった。」

シグマとしても続けたいが、サルガスが考えている。

「でも、目の届かなくなる範囲にサイコスや格闘術とか教えるのはヤバいだろ。登録もいるし指導員も必要になるし、精神的指導もいる。誰が教えるんだ。外で使われたら警察沙汰になることもあるだろ。」

「その辺はエリスさんやチコさんたちがバランスとるだろ。」


そこに、はああ?という顔でリーブラが意見を出した。

「あんたたちやっぱりバカなんだね!バカバカ言われてもまだバカなままなんだね!」

「ああ?なんだ?」


「なんで格闘術教えるのが前提なわけ?

普通の組織はそんなもの教えないよ!!まあ、ちょっとした筋トレや応急とかはいいけれど、他に教えることいっぱいあるでしょ!武術は護身術止まりにしておきなさい!」


なぜかボーガンや射的まで習得してしまった普通女子リーブラが熱弁する。

「………。」

目から鱗の脳筋集団。そうか、普通の組織は接近格闘術なんて習わないのか!


普通に組織運営を教えればいいだけである。



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