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ZEROミッシングリンクⅡ【2】ZERO MISSING LINK2  作者: タイニ
第十一章 in ベガス
53/110

51 来客が多い日



その日の午後。


響の研究所室はすごいことになる。


「はーーー!!!なんなの!!ここはプライベート空間じゃありませーーん!!」

怒っているのはリーブラ。

少し南海を見学してからシンシー一行は響の研究室に来たのだ。


「そんなに怒んなくていいじゃない。」

響がリーブラをたしなめる。

「怒るっつーの!!」

「特定の基準を満たした芸術家に対して見学が許されているらしくて、窓口もぜひって…。」


「めっちゃ怒ってるのなんで?」

シンシーが聞いて来るが、みんなどう言っていいか分からないし、リーオも笑うしかない。

「ファイ、ファクト、ラムダ。あんたら全然役に立たない!!」

「ひどーい!!」

ファイが反発するので、リーブラは小声で伝える。

「あのね、響先生があの人と結婚したらもう会えないかもよ。」

「えー!それもヤダ~。」


「響先生が美人とカッコいい人連れてきた…。」

と、研究室の学生たちが騒いでいるし、すれ違った大学の人たちも噂をしている。ユラス人もなかなかの美男美女がいるのだが、魅せるために仕事をしている人はやはり何かが違うのか目立っているのだ。響先生が女子アナかお嬢様のようだという声も聞こえてくる。


そんな訳で、何かに理由を付けて、他の学生や先生も差し入れやら用だとか出入りしていた。


研究室内では女子学生がお茶を準備。リーオに差し出すと、笑ってありがとうと言うので、その子は友達の方に戻ってキャーキャー騒いでいる。リーオは顔がイケメンとかいうより雰囲気全体が柔らかくいい感じを出しているタイプかもしれない。プロモーション写真より、俄然取っつきやすい。



アーツの目立つ奴ら、全員河漢でよかった…と思う今日の観光組。

ここにイオニアやキファが来たら収拾がつかない。


そこにキロンも到来。

「セラリのリーオさん……」

ですね!と言いそうになって止めるキロン。クルバトを中心に経歴はリサーチ済みと知られたら引かれそうだ…。だが、キロンもすぐにリーオのスマイルに落城され、ベガスの仕組みや大学の話で盛り上がっていた。奴らのコミュニケーション力、ヤバい。


ちょっと不機嫌なリーブラに響は擦り寄り小声で話す。

「リーブラ。ごめんね。普通に観光してただけだから。」

「響先生、タラゼドがね………」

「え?タラゼドさんいるの?」

辺りを見回す響。リーブラは響を引っ張る。

「いません!」

「そう、せっかく……」

自分の服を見てがっかりしている。

「見せたいの?」

「…………」


「!」

ふと我に返って、慌てている。

「違う違う!いつも変なこと言われてバカにされてるから、私だってきれいな時もあるんだよーって!あの時も、絶食してたのに全くもって健康そうだとか言うから!!」

「先生、小学生より小学生だよね。小2男子より小2男子だよ。」

「何それ!大学生の上、講師だよ!」

「………。」

ふーんという感じで見ているリーブラの顔をのぞき込む。

「リーブラも早く体重を戻しなさいっ…。」

「私はいいよ。これくらいがかわいいでしょ?」

「このリーブラもかわいいけど、ぷっくらプリプリお肌に戻さなきゃ!」

そう言って頬を引っ張る。

「や…め、で…。」

引っ張る手を離させて、リーブラは響を抱きしめる。ここにいることが安心するから。


あれから体重が戻らなくなってしまったリーブラ。6キロ以上は減っていないが、響は申し訳ないことをしたと胸が苦しい。リーブラも今デネブに治療とカウンセリングを受けている。


そんな二人を、ジーと見ているシンシー。

「なんか悔しい…」

「あの二人?」

ファイが指を指す。

「私の響なんだけど!」

「ハハ。いろいろあったからね…。」

「何が?」

「いろいろ。」

「何がよー!」

「秘密。」

「えー!」



その時、研究室にもう一人来客が来た。リーブラが入り口付近まで迎えに行く。


「何だよ、リーブラ。」

「あー!なんで今来るの?!」

4時過ぎに呼んだのに、3時前に来ているタラゼドである。

えっ、と背筋を伸ばし髪を耳に掛ける響。

「え?休憩中だから。4時に仕事は終わらんだろ。用事があるなら今、済ませればいい。」

「まあ、結果今でいいけどさ!」


そこで、ドアまでついて来た隣にいる響と目が合う。

「………。」

「…………」

少し見てタラゼドが言う。

「……いつもと違うね。」

「うん。」

と、それだけ言ってすぐ目線を移し、鬱陶しそうにリーブラの方を向いた。

「で、リーブラ、何だよ用事は!往復した時点で休憩取り過ぎだからサッサと言えよ。」

「はー!他に何か言う事ないの?!」

「は?」

「響先生いつもと違うのに、それ以外言う事ないの?」

「……。え?いつもと違うなーって……、思う。他に?」

「あー!ほんとおもしろくない!キファはあんなにかわいいのに、あんたは全然おもしろくない!!」


すると、ファクトがタラゼドに手を振る。

「タラゼドじゃーん!こっち来なよ!」


「何言ってるの!タラゼドは仕事中なんだよ!さっさと現場に戻りなさい!」

「え?用事は?」

「そんなのもう終わったよ!」

「マジひでーな!!」

「リーブラ、用事が終わったのに呼んだの?」

響に驚かれて、リーブラはため息をつく。


「今日は誰といるの?どこ?河漢の方?」

呼んだくせに戻れと言って、さらにめんどくさそうに聞くリーブラ。

「河漢でハウメアと南海の人とウチの会社の人たちで打ち合わせ。」

「ハウメアいるんだ。河漢に参加するんだね!」


響は申し訳ないからと、急いで冷蔵庫から栄養ドリンクを数本と焼き菓子を持って来て渡した。受け取りつつも毎日てんこ盛りのお菓子にタラゼドは呆れる。

「…先生太るの気にしてるなら、ここにお菓子を貯蔵するのやめたら?」

「っ!違います!週に3回くらいは私が買うけど、研究室は差し入れも多いんです!!」

「…ふーん。」

「なに、その()!また私がだらしない性格だと思ってる??」

「え、別に。」

控えめに言っても3回はちょっと良さ気な菓子を買っているのか…とタラゼドは思っただけだ。思っただけである。感想はない。


「ハウメア待ってるから行きな!」

「リーブラ、お前が言うのか。」


仕切り直してタラゼドはエンジンを掛ける。

「じゃあね!タラゼド、バイバイ。」

「リーブラ、お前、後でなんか奢れよ。」

「それあげたからいいじゃん!」

「これは響さんからだろ。」

「はいはい、ごめんなさい!それで許して!」


「…タラゼドさん……。バイバイ。」

「響さん、またね。」

「うん。」

バイクに乗るタラゼドを送る2人。響たちが手を振ると、タラゼドも気づいたように振り返して去っていった。


そして、それを少し遠くから見ていた、リーオとシンシーであった。

「なにあいつ。」

シンシーが何とも言えない顔で見ている。




と、今日一段と賑やかな研究室に、それと入れ替わるように地雷がやって来た。


「響!お見合いしてるってどういうこと!ソイドやソラが騒いでたよ!」


ムギである。

「ファクト!ファクトもなんでまた学校サボってるの!」

「あ、ムギちゃん。」

アーツメンバーが、またヤバいのが来たと戸惑っている。


そこでムギがリーオを見付けて早速言いがかりをつけてきた。

「…あなたとお見合い?響は誰とも結婚しません!!」

「………」

リーオだけでなく、唖然とする周囲。相手の顔を見ただけで、それは横暴な。しかもなぜ響が結婚しないことになっている。

「ちょっ!大学の人も聞いてるからやめて!」

「え?先生、お見合い??」

「違います!!」


「ムギ!いきなり失礼でしょ!友達のご家族だよ!謝りなさい!お見合いじゃないし!」

流石に響が止める。

「そうだよ!誰?失礼な!先に自己紹介しなさい!」

と、冷静ながら怒ったシンシーと目が合ったとたん…、固まるシンシーとムギ。

「!」

「!?」


「………。」

突然大人しくなったムギは、椅子に掛けてあったファクトのパーカを羽織ると、フードを深く被って顔を隠す。


そして。急に素直に謝る。

「ごめんなさい。私が悪かったです…。」


「え??」

さらにびっくりする一同。ムギはこんなに言葉が素直な性格ではない。


「それでは………失礼いたします!」

では!という感じでムギも退室し、すごい速さで去っていった。

「え?ムギ?」

響が戸惑っていると、シンシーが声をあげた。

「誰か!あの子を捕まえて!これだけ言っておいて、どこに逃げる気?!!」

ファクトが説明する。

「ここから出た時点で、ムギに追いつける人はいないと思います…。」

「はあ?!」


と、なにか気になることがあったのか、シンシーが人気のないところまで響を引っ張っていった。

「ちょ、シンシー?!」

そしてシンシーは、ガバっと響に向き合った。

「!」

「響!あんた、危ないことしてないでしょうね?!」

「え…?」

「危ない橋を渡ってないでしょうね?ってこと!!」

「…………」

「………。」


お互い顔を見合って、怒って目を逸らさないシンシーに言葉がない響。

「…。」

「どうなの?」

「…大丈夫、だよ…。」

「今の子と知り合いなの…?」

「…友達だけど…。」


そこに気になったリーオがやって来た。

「姉さん…。どうしたんですか?」

「…なんでもない。」

「…。響さん大丈夫ですか。」

「はい…。」

少し動揺している響を心配そうに眺め、肩を支える。


「…………。」

シンシーは怪訝な目で響と、ムギが去っていっただろう方向を見渡した。



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