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ZEROミッシングリンクⅡ【2】ZERO MISSING LINK2  作者: タイニ
第十一章 in ベガス

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47 きれいなお姉さん



友人と会うことになった日。


響の友人シンシー義弟のバレエ団、千秋楽翌々日である。



けっきょく会う時の内容は、みんなで少し街を歩いて食事をすることになった。

義弟もお見合いではなく、ただ会食したいとのこと。響は義姉の親友でもあるし、蛍惑物流のお孫さんでもある。蛍惑経済クラブや商工会で祖父母や父母も親友同士だ。なんにしろどこかで会う可能性もあるのでこの機会でもいいだろうと。


でも、三人で会うと響が不利になるという事で、『響側の親友との交流会』という、かわいい名目に収まった。それにもしかして、シンシーの他の親友や親戚も来るかもしれない。こちらに人数を付けておくに損はないと予測する。



そこで響側からも誰が参加するかという話になり、まず、結婚しないと言った手前、成人男は却下。

いくらお見合いしないと言っても、断った相手に男性を紹介するのは失礼だ。そこでファイ、そして高校生のファクト。それからラムダも行くことになった。ラムダは成人だが雰囲気も話すことも威圧感がなという事で。ファクトは心星というブランドを生かして、こちらの箔付けという事で。


クルバト書記官がぜひ行きたいと立候補したが、クルバトも立派な成人男性であり涙をのんで辞退させられた。




男子寮の手前1階。朝、アーツがよく集まる半セルフの食堂がある。


「リーブラは行かないのか?」

「行く訳ないじゃん。」

「昔のお前だったら絶対行くだろ。」

イオニアやシグマ、キファが聞くが、リーブラは絶対に行かないらしい。

「今日は久々の先生のお休みだから、私が研究所に行かなきゃ。」

そう言って、リーブラは朝ごはんを頬張る。

ローなども横で聴いている。


響の研究所はどうにか復帰した。学生の中には響に会って泣いている者や、キファが怖かったと訴える者もいた。SR社の聴き取り、安全の確立も合わせて1週間半の不在。この期間に少し進路変更をした学生もいて面接も行い、ささやかに復帰のお祝いをして響の研究室は再スタート。

リーブラももう少し込み入って先生たちと話し、勉強内容をしっかり決めることになった。



「どうせ響先生、今回は何も決めないから大丈夫。」

なぜか確信を持って言うリーブラ。

「なんだ、その確信は。」

「でもさ、お見合いしなくていいけど、会ってってお見合いじゃん。」

シグマが当たり前のことを言う。

「ファクトたちが、学生のノリで雰囲気をぶち壊せばいい。」

「あのメンバーが行くというだけで、既にお見合いの雰囲気はぶち壊しだろう…。」

何せファイとファクトである。


そこでシグマがみんなに尋ねた。

「その1、相手が響さんを理解できずに逃亡。

その2、響さんが勝手にパニくり過ぎて、爆死。

その3、その1日はなんとなくごまかせるが、その後やっぱりパニくって消滅。はい、どれ?」

「その1に1票。」

「俺は、その2に。」

「いやあ、いくら響さんでも1日ぐらいがんばれるだろ。大学の講師だぞ。3で!」

周りからも番号が飛んだ。大体みんなその1か2を選ぶ。



その時である。


「リーブラ!」

食堂の入口でそっとリーブラを呼ぶ声がした。ファイもいて、響が思いっきり手で招いている。めんどいな、と思いつつも立ち上がって見に行く。


「ねえ、リーブラ。どう?響先生これで大丈夫?」

ファイが言うと、入口で少し全身を見せてにっこりする響。


「っ!」

ブーーーーー!とリーブラは持って飲んでいたラテを吐き出しそうになってしまった。


「ファイ!バカなの?!!」


思わず言ってしまったリーブラたちの方にみんなの注目が集まる。

「ブッ!」

こちらでも牛乳を吹くシグマ。

「汚ねえーよ!」

「悪い…。」

と言いながら、入口を見る。入口と言ってもほとんど柵かガラスなので廊下は見える。



そこにはシンシーお姉様から送られた、白いハイネックのニットと茶系のロングガウチョに、太いベルトをする、これまたきれいなお姉さまがいた。


ピンクゴールドのネックレスとイアリング。


少し横で1つに括った髪は肩から前に流し、メイクはほんのりピンクのアイメイクでおさえる。


「ほら、響さんって表情や角度で釣り目にも垂れ目にも見えるでしょ。それで今日は垂れ目過ぎず、少し優しい感じにしてみた。」

ファイが、大型作品を仕上げた後の芸術家のような顔で言う。


「ばか!マジバカだよ!お前は!」

ファイもいつもより少しフェミニンでかわいくしているが、リーブラは容赦なく肩を揺する。

「きれいにしてどうする!ほどほどにしとけって言ったのに!」

「ちょっとやめてよー!崩れるじゃん!」


キファが呆けてこっちを見ている。響は目が合ったので、キファに手を振った。真っ赤になるし、イオニアもボーと見てしまう。


「響さんかわいー!!」

高校生同士で食事をしていたソラの声に、食堂にいる他の男子たちも廊下に一斉に注目する。

「ファイもステキだよー!かわいい!」

大満足のソラ。


しかしリーブラはそれどころではない。

「あんた、刺激してどーすんの!」

「あのね、まあ何ともないメイクにしようと思ったんだけどね、なんというか、私のメイク魂が手を抜くことを許さなくて…。」

「何ゆってんの!」

「シンシー姉さま、今回も10万円近く物を送って来たから、それに答えねばアーツの意地が…、女が廃ると…」

「廃れればいーんだよ!女子アナにしてどーする!!」

完璧すぎないスタイルと顔に、フェミニンな雰囲気。東邦アジア、地方局の女子アナに近いものを感じる。いつもブカブカなのに、フィット気味のニット。これを嫌いな男はいないだろう。


「私って思ったより天才だった…。」

「そうなんだよ!ファイってね、すごく盛るのが上手なの!ここ想像以上に塗りまくってんだよ!メイク落としてから自分の顔を見るのが怖いよ。今日は詐欺だよ!」

ナチュラルメイクに見えるけれど、めっちゃ塗りたくっているらい。ちょっとテンションの高い響。いつものブカいコートも取り上げられてしまったので、隠すものが少なくて隠れられずナチュラルハイ状態である。

いつものブカブカな服でないと、胸も目立つ。




そんな中、響は食堂の中をチラチラ見る。

「もういないよ。」

と、リーブラが言うと、響はちょこっと怒って言い返す。

「誰も探していません!見てるだけです!」

赤くなっている響をジーと見るが、確かにかわいいしきれいだ。

「………。」



「響さん、行こ!モーニングもするって約束したじゃん!」

「あ、そうだね!」

「ファクト、ラムダ君行こ!」

首にかけたストールをもう少し覆うように掛け直し、響が食べている二人を呼んだ。

「待ってー!今行く。」


「なんでモーニングするって言ってるのに、朝から食べてんの?あいつら。」

ファイが呆れる。

ファクトとラムダにも多少フォーマルな場所にも入れるように、崩し過ぎない格好でと言ったのだが、ファクトはギリギリだ。ただ、全体的に黒で決めているので派手には見えない。

「うーん。まあいいかな。」

ジーと見つめて判定した響にファクトも返した。

「響さん、キレイっすね!」

「キレイです…。」

何の躊躇もなく言うファクトと、少し照れくさそうに続くラムダ。

響はニコッと笑った。


「じゃあリーブラ、よろしくね。何かあったら連絡して。」

「ハイハイ。先生こそ終わったら研究室に直行してくださいね。4時には帰ってきてください。」

「うん!」




「…響…。」


「!」

今度はその後方に注目が集まる。


廊下にチコがいた。


話さずジーと響を見つめている。

「おはよ、チコ。」

「その恰好…」

「あ、友達に会いに行くの!」


着飾った響を初めて見るチコ。多分少々フリーズしている。

「お見合いするって聞いたから…」

「しないよ。誰が言ったの?」


心ここにあらずな顔のチコ。


ガラス越しに見ている面々が言う。

「なんで、チコさんは惚れた時のキファみたいな顔をしているんだ…。」

「ヤバいな。フラれた時の男の顔をしている。」

「いや、娘を嫁に送る親父だろう…あれは。」


そして思う。もうこの人は完全に男だ。


カウス同僚たちに囲まれているとそれでも女性に見えるが、一般女性の隣に立つと、完全にイケメンである。自分たちが主人公の漫画があっても、ヒーロー役を譲る自信がある。それくらいシチュエーションにハマっている。ドラマの見せ場か。


「…響。」

「ん?」

響のまとまった髪をサラッと手で触れる。

「気を付けて行って来いよ。ファイ、ファクト、ラムダよろしくな。あ、小遣いやる。」

何かお金を送信している。やぱり親父であった。

「私も行きたかったな。」

試用期間中のソラは行けないのでさみしそうだ。


みんな楽しそうに去っていく。チコはソラと一緒にみんなを送って外まで行き、リーブラはここで見送った。



と、廊下にいたリーブラ以外の全員が出口に向かったとたん…



おおおおーーーーーーーーー!!!!


と、歓声が起こって、何人かが入口の去っていった方を見る。


食堂中大騒ぎだ。

「かわいくないか?」

「めちゃかわいい…。」

「イオニア!お前よく最初に気が付いたな!!」

「盛りまくっているそうだが。」

「全てが柔らかそうだ。」

「それは完全なセクハラ発言だぞ。」

キファとイオニアを差し置いて盛り上がるうるさい奴ら。



しかも自分たちがキレイと言ったらセクハラになりそうなのに、いとも簡単に女性に「キレイですね」という、ファクトの無神経さ。これは高校生だから許されるのか?それとも奴だからか。

「ファクト、マジあいつは許さん!」

「その前に、ファクトは学校休み過ぎてないか?今日月曜だろ!」

「留年だな。あいつ。」

「ダメだって。留年とか喜ぶだけだから。」


「おい!先の賭けに、その1の可能性は無くなった!」

「ファイにグループメール作らせろ。常時報告するように!」

というところで、サルガスにいつもの鉄拳を食らうシグマたち。


「いで!」

「お前らこそ、そんなメール作ったらセクハラどころか訴えられるぞ。賭けもすんな!響さんのプライベートだろ。」

「えー!そんなことないっす!『蛍惑&響さんと愉快な仲間たちとの交流会』代表でお出掛けしているので、留守番の俺らは一心同体です!!」

「は?それ以上言うのか?」

サルガスに頭を握られてギブアップするシグマたち。


しょうがないのでグループトークはあきらめたが、ファイに数人の代表者トークに報告を入れるように伝えた懲りないアーツであった。




***




さて、「響さん自滅」もしくは「今日だけ頑張れる」で終わると思っていた、お見合いスレスレの観光アンド会食。みんなそれぞれ仕事や学校に行く。



しかし、ファクトのこのメールで全ては変わってしまう。



『セラリ、超楽しい人キターーーーーーーーー\(^o^)/!!!!』



セラミックリーブス。超楽しい人が来たらしい。







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