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ZEROミッシングリンクⅡ【2】ZERO MISSING LINK2  作者: タイニ
第十一章 in ベガス

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46 モエあがる

中央区のおしゃれな街 ×鍵倉→○倉鍵


どこからか地名が間違っていました。見つけ次第直しています。ごめんなさい!

他にも名前など間違えがあるかと思います。よく間違えるのは以下です↓


空手も改装業者    ×タラセド→○タラゼド

アーツ第2弾リーダー ×シャラウ→○シャウラ です…。



チコが帰ってきたことで、騒がしい休憩時間になるも、チコは少しスタッフたちと話し込んでいた。その後、主にアーツと一部藤湾のメンバーだけが残って、また話が始まる。



「えっと、それからこれは全員に聞く。」


チコがデバイスを開けると、


ベガスに住居を移したい、もしくは今後も住みたい。

河漢計画、その後の都市改革計画に加わりたい。

ベガスでの一般職を続けたい。

ベガスから離れる者。

などいくつか項目が出てくる。


なお、アーツは一度籍を置いたら基本アーツのままである。まだ体制自体がきちっとされていないので、どうこういうところまで考えていない。


「今の人数を把握したいから、だいたいのところでいいから教えてほしい。言いにくかったら後で個別で教えてくれればいい。」

と、1つ1つ聞いて挙手をさせた。


そこでチコの手が止まる。


「…は?タラゼド。お前何考えてんだ?このまま、改装業続けるつもりか?」

一般職に就きたいに手をあげたタラゼドにチコがつっかかる。

「ああ、社長がベガスでの仕事は数十年は尽きないだろうという事で、事業拡大に誘って貰えて。」

「はあ?お前はだめだろ。」

「え?何ですか?」


「チコさん、それはパワハラだし、そんな風に言ったら誰も面談に来ませんよ!」

ヴァーゴが口を出すと、チコがすごんだ。

「ヴァーゴお前もだ。整備屋は大房でやってろ。お前ら二人はベガスか河漢を手伝え。」

「えー!少しやってるじゃないですか!」

「お前らみたいな、力を持て余している人間が、普通に仕事してどうすんだ?!」

「普通に仕事しますよ!それに俺Cチームだし。今の仕事でも力使うし!」

ガタイも顔も人を殺せそうだが、庶民派ヴァーゴは逆らう。

「お前ら二人要相談な!」



「まあいい。ではここから離れようと思う者は?」


ここでチコの目が留まる。家の事情などで数人離れるのは聞いていたが、そこに注目の一人。イオニアが、机に肘をついたまま手をあげていた。


「は?お前!」

「え?イオニア??」


これには周りのメンバーもびっくりする。

「え?イオニア行っちゃうの?どこに?大房に帰るの?」

ファイが間髪入れず聞いてくる。正確にはイオニアの住所は横の区域である。


「今度はお前か?なんなんだ。」

チコが怒っている。

「あの、ウチ。実家でいろいろありまして。父もどうなるか分からないし、家業の手伝いをしようかなと…。」

「実家の仕事を継ぐのか?!」


ええ?!という顔の一同。あれだけ嫌っていたのに。


「………。」

頭を抱えたチコが少し考えて、イオニアの横に寄って来て小声で話す。

「お前はだめだ…。」

「え?パワハラです。俺の好きにさせてください。」

「お前の提案で進めている部分がある。」

横で聴き耳を立てるファイ。少し引き離されたため聞きづらいが、クルバト書記やモアが聞き取れと無言で指示を出す。


「やめて下さい。傷心してるんです。帰らせてください。」

「は?傷心…?」

少し考えて、チコは気が付く。

「響にフフラたのか?別件があるのか?」

「プライベートは言いません。」

「言えよ!勝手に帰んな。」

「じゃあ、チコさんが慰めてくれるんすか?」

バゴ!と、頭を叩かれるイオニア。


「私にそんなこという奴、ベガスで初めて見たわ!」

「なんか勘違いしてませんか!普通にですよ!普通~に!」

頭を押さえられてイオニアが歯向かう。「何が普通なんだ?」「何を言ったんだ!」と、気になって仕方ない周囲。


「イオニア、それ他の女子に言うなよ。」

ちょっとキレ気味のチコ。

「そんな誰にでも言いませんよ!」

「お前だと冗談に思えないから、それ自体も言うな。何も言うな!」

「チコさんが言えって言ったんだろ!」

チコに一体何を言ったんだ。聞き逃したファイが悔しがる。


「多分チコさんの心が歪んでいるからそう聴こえるんです…。」

これ以上イオニアに主導権を握らせてはいけない。

「………分かった、分かったが、もう一つ聞く。」


また小声になる。

「響か?それとも気移りしてんのか?」

「響さんは無理でしょ。他にいるから。」

「……。」

ふーんという顔をして、な?!と、気が付く。


「!」

ガバ!と体を起こすチコに、みんなが注目する。

「は?誰だ?何の話だ?」

「プライベートは言いません。俺の見た感じの話だけだし。」

「言え!ああ?」

「総長、個人的な話はここではやめましょう…。」

脅しが入ってきたチコに、サラサが止めに入る。


久々に出席したチコを、ここまで焦らせる男。今日もイオニアの勝利である。イオニアも後で呼び出されていたが、チコから逃げ続けているらしい。



チコは女子たちに囲まれ、今度は話し掛けられたカウスやワズンたちとそのまま去っていった。




***




いつも大賑わいなのは女子寮。


「すごいー!またシンシーから宅配が届いてるー!!」

ファイ大喜びの小包がいくつか届いている。響のお許しを貰ってシンシー姉さんからのプレゼントを開けてみる。タウ妹のソラも遊びに来ていて、何事かと箱をみる。


段ボールの中にきれいな包みがたくさんあった。


「わあ!化粧品やスキンケアだ!」

みんなで鍋を囲いながら、わいわい包みを開けていく。

「ちょっと!シンシーの罠だよ!お見合いする気バリバリじゃん!」

「お見合いしないってっさ。観光だけだって。」

「友達と飯食うだけなのになんでこんなもの送ってくるの!!」

「自分からに見せかけて、義弟とかからだったらどうするの?!」

「いくらシンシーでも、そんな嫌がらせしないって!」

「シンシーはするよ!きっとする!」


と言いながら、興味がなさそうだったリーブラも、スキンケアに思わず反応してしまう。


広げると、それはハイブランドや個人ブランドらしきポイントメイク用品。そして、有名オーガニックブランドのオイルなどだった。ヘアオイルもあるが全部100%ピュアオイルである。ブラシやコットン、フェイスマスクまで入っている。


「すごい!これ、1本5千円もするから買えなかったのだ!」

リーブラが飛びつく。

そんなオイル120ml瓶の5種セットなども入っている。金持ちにしてみれば、5千円のオイルなど100均であれこれカートに入れていくくらいの感覚で買ったのだろう。

「このマスクも、1枚3千円だって…。」

「え?1枚で?!」

ネットで調べて、みんな驚くしかない。

外に出ていた時の火照りを冷やすミスト、爪のケアクリームまである。本当に響の性格をよく知っている。畑仕事後もあまり手入れなどしないが、しておけということであろう。


手紙には『当日はちゃんとネイルして来なさい!』

と、書かれ薄い色のネイル数色も入っていた。

「えー。ネイルって固まる前に絶対触っちゃうよねー!却下!」

笑う響。

却下じゃないつーの!と誰もが思いつつ、2箱目も開ける。



「シンシーねーさん!!これはいかん!!」

二人して大騒ぎだ。

「フットケアとかマッサージスクラブとか何?!どこ見る気?!スケベなの?!ただの会食でなんでお肌を磨かなきゃいけない訳??服やタイツで隠れるところ、関係ないじゃん!!」

ご立腹リーブラを落ち着かせる、ムギの同室女子たち。


飲む美容液やビタミンなども入っている。

「シンシー。あざといというか率直過ぎる!!」

なぜかときめくファイ。


「そんなことないよー!高校にいた時からよく、付けなさいってハンドクリームやリップ買ってきてくれていたもん。ちょっとお母さんぽいんだよねー。」

まだ響は余裕だ。このプレゼントの攻撃性を分かっていない。

「こんなに使えないし、オイルはいくらでも持ってるからリーブラあげるよ。みんなは?」

響が笑って言う。

「いい!いらない!響さんのだよ!」

香りや使い心地などは知りたいが、そこまで高い物でなくても良質なものはあるし、そんなつもりで言ったのではない。

「今度、響先生が使ってるときにお試しだけさせて。」

「私、オイルはいっぱい持ってるってば!」


他の箱の封を開けて、響がファイやライに尋ねる。

「ねえ、これ。同じような色がいっぱいあるのにどう使いこなすの?動画とか見てもメイクって分からなくって…。」

絵具のように美しく並んだ16色パレットの中身は、ゴールド、茶系からピンクまでのグラデーション。

「これ並んでいないと、色の違いが分かんないよね~。使いこなせないからあげるよ。」

ムギもじっと見ている。他のパレットも似たような色だ。

「ホントだ。全部同じに見える。肌に付けたらもっと分かんない。」


しかしファイは聞き捨てならない。

「全部同じ…?」

少し座った目をする。

「全部違います!」

「ちょっと薄いか濃いかの違いでしょ?ちょっとピンクいか、茶色いかとか。」

「これはキラキラが入ってるから、そのぐらいの違い?」

ムギと二人で不毛な話をしている。

「そもそも茶色ってどう使うの?目が真っ黒にならない?」

「これはキラキラが大きくて、これは小さいの違い?」

もう、聞いていられないファイ。


「わあ!これキレイ!」

今日、一番響の心を掴んだのは、メイク好きにしか知られていないハイブランドのコンパクトたち。

アイメイクやチークその物に、美しい鳥や動物が刻まれていた。

「わあ!」

ムギも見入っている。蛍もそっと見て、感嘆する。

「キレイ…。」

だが、デザインが気に入ったのであって、チークを使ったら彫刻のような絵は無くなってしまう。

「これは保存版ね…。見る保養!」

キラキラうっとりして響はコンパクトをそっと閉じた。



ちょっと、響さん。


あなた、いくら超ミッション系清楚な蛍惑ペトル、超お嬢様学校だったとしても、お金持ちだったら逆にかしこまった場所に出たりするでしょ?響の感覚に、ビンボーギャルだったリーブラとファイすら恐ろしくなる。金持ちは薄化粧しかしないのか。パーティーとかないのか。



「ねえ、響先生。今までメイクとかしてこなかったの?」

「えー!これでもこの歳だよ!日焼け止めとかはしっかりしてるし。眉毛も整えてる!」

キリっと眉毛を指す。確かにスキンケアや日焼け止めはなかなか良さ気なものを使っていて、何本か持っている。なにせ山に行ったり外仕事もするので、日焼け止めもクレンジングもやや良いものがよいのだ。かたやシンシーは1本5千円から1万円ほどのクレンジングオイルやクリームを同封。

「クレンジングなんて落として終わりだし、こんな高いのでなくていいのに。」

と、ぼやく響。

「使い心地知りたい~。」

キラキラリーブラはもう響を無視してトキメキ満開である。

「うん、使いにおいで。」

プレゼントで貰ったばかりだし、高すぎて気が引けると言うと、置いてあるからいつでも使いに来てというスタンスになった。



「先生のメイクセット、他は?」

響の元々のメイクセットを見ると、テカリを押さえるパウダーと眉毛を書くアイブローしかない。


「え?マジ?」

ファイとリーブラが思わず引いてしまう。

「この2つしかないの??!」

「失礼ね!そこにチークがあるじゃない!」

お菓子の箱の上に、2色のチークが置いてある。

「セットでお買い得だったから。ケースも全部シリーズでかわいいでしょ?でも、このピーチを使うのかブルーピンクを使うのか、いまだに分かんない。」


「!」

みんな驚く。すごい。これはもうドン引きを3周くらい回って感動すらする。


「だって、そもそもみんな肌の色が違うのに、塗るとまた違うんだよ?見本も参考にならないし、全然色の差が区別がつかないし。でも、私はこの暖色系の方が合うかな?」


この物持ちの無さに固まる二人を見て、呆れ笑いする他の女子たち。西アジアの子たちの方が、まだ化粧に関心があるようだ。

倉鍵などのリッチな奥方様を相手にしながら、時に美容を語りながら、ほぼベースメークだけで仕事をしてきたなんて驚愕である。ドン引いているのに、「これ何ー?」と聞くムギに、「ムギも日焼け止め塗りなさいって言ったでしょ!塗ってないの?」と、アドバイスしている。こっちが連行して指導したいと思うくらいなのに。



「先生、リップは?」

すると、ワセリンや蜜蝋(みつろう)を取り出す。

「これ塗ってるよ。ちょっと紅の入ってるのもあるの。指や髪にも付けてる。」


!!!


シンシーの気持ち、今なら分かる!

毎日会っている響より、宿敵シンシーと共鳴してしまう。


シンシーと違ってプチプラ化粧品しか送れないけれど、自分の全財産をはたいてでも全てをプレゼントしたいと思う二人。そして、ファイの中で何かがモエあがる…。


こんなこと許されない…。


この濃いベージュと赤味の茶色と黄味の茶色の区別もつかないなんて!


ある意味ワセリンとか悪い対処ではないのだが、何かがぶっ飛んでしまったリーブラとファイであった。ちなみに、普通に見えても響の持っているシアバターや蜜蝋などは本物のそれなりの品である。そして、響は自然派なのではなく、自分が好きだと思ったものをちょこちょこ買っているだけである。




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