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ZEROミッシングリンクⅡ【2】ZERO MISSING LINK2  作者: タイニ
第十一章 in ベガス
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43 タウ父は今日もいる



「はい、皆様。終わったらこっちに来てください。」



南海広場で勝手に甘茶を沸かしてみんなに配っているのは、南海の太極拳おじさんとその仲間たち。


朝の太極拳後の一杯である。


「で、最近の白丸はいくつなんだ?」

花札じいさんが、タウ父を突っついてくる。

「おい!先生と賭け事すんなと言ってあるだろ!!」

他のおじさんが花札じじいたちを引き離す。ファクトが来なくなったので、タウ父が標的になっている。


長期休暇の1か月を過ぎても、なぜかタウ父は南海の朝の広場に毎日参加。


そう、ここに居座ってしまったのだ。




大学のパブリックスペースデザインのシステム管理や、キロンも参加している農業開発の授業に助言している間に楽しくなってしまって、会社に退職届を持って行ったのは少し前の話。


が、会社に止められる。

タウ父も共に進めていた南メンカルの鉄道各駅のシステム計画チームが、絶対に残ってほしいと念を押したのだ。


しかし決意の固かったタウ父は引かない。


太極拳の会の、広場の清掃当番にも入ってしまったから、抜けれないと訳の分からないこともまで言い出し、説得してほしいとタウ家族に話が来たほどであった。しかし、太極拳の集いは抜けられないという。広場など、あれだけ人がいるのなら他にも掃除をしない人もいるだろうし、2人分してくれる人もいるだろう。タウ父1人抜けたところで何も困らないのだが、それはだめらしい。


そこで散々話し合ったあげく、シクテムテック工機の社員たちがベガスに訪れ、藤湾大学や南海ベガスと話し合い、最終的にタウ父はベガスミラへの派遣員という事に収まってしまったのだ。しかも、システムテック工機は、ベガス構築自体に参加の意を示す。そして、南メンカル鉄道の話は、藤湾の学生も参加することになった。


そう、一般のネット上では、ベガスは危険な移民自治区域を拡大するという事でかなり叩かれていたが、各業界では新しい事業拡大の場として、新たな期待を注がれていたのだ。スピードの速い経済世界は、ネットの声の二手も三手も速い。危ないと聞いていても止まらない。進むのみの強靭さだ。


最新の目を持つ企業などは、これ以上変わることが難しいアンタレス中央区以上にベガスに期待していた。大企業の方が腰が重く、新鋭や中小企業の方が目を光らせている。


ベガス構築が成功すれば、そこらの一国並みの利益につながる。


なにせ彼らは都市を作る気でいるのだ。


しかも、先に矛先の立った、ユラス現地復興に参入した企業は膨大な利益を上げている。その利益の大部分は、一般の関税税金以外に社会、地域還元の義務があるが、それでも多くの旨味を残した。あらゆる場所に企業名も載る。


例えば、最初に無償、格安で西ユラスに大量のコーヒーメーカーを提供した企業は、その後一気に宿泊施設や飲食業界にその名前を刻み、世界の大手に並ぶシェアを誇ることになった。ユラスの総人口は非常に多く、先進地域の中でも珍しく人口増加傾向にある。


内戦続きの上、凝り固まったユラス人の信仰感などから、大手が企業イメージも含めて敬遠している間に、新参たちは動く。技術は高いが宣伝性やデザイン性において遅れている企業を見付け、企業改革を進めユラスに売り込んでいったのだった。企業自身もアンタレスの移民自治区域ベガスを見て回り、ユラスが変わろうとしている手ごたえをつかんだ。大型市場を持たず、イメージの打撃も少なかったその企業は現在ユラスでどこでも見ることのできる企業となった。


ユラスもユラスで、安定した社会生活継続という責任がある。


そんな風に、ユラスに新規参入することで、それなりに大きい地盤をユラスに築いたいくつかの話は、経済界で話題になっていた。



その他、先進地域の若者が嫌がる分野に進んでいった移民たちの方が、農業や土木分野で強くなり始めるのも時間の問題だと企業側が判断し始めたこともある。


ただし、計画自体はまだ完全情報公開にはなっておらず、国や企業、専門分野でしか知られていない。逆に言えば、関心を持てば知ることができる。初期こそ参入企業が少なく、ベガス側が頭を下げて地域開拓を頼み込む状態だったが、まだ先の計画も含めて取り合い状態になりそうだと、東アジアで参入企業を管理することも視野に入っている。



ただでさえ、移住を規制されているそんなベガスに、まさか自社の社員が定住どころか藤湾大学に籍まで置いていたとは…。

正しくは自由参加の生徒なのだが、タウ父は大学の食堂も自由に使っていい客員講師的存在になってしまった。タウ父のお気に入りが、エビ入りサラダと鯖の味噌煮であることは食堂職員にも知られている。



という訳で、なぜか南海の朝の太極拳から始まって、今日も藤湾に通うタウ父であった。



その奥様と言えば、時々孫を見に来ながら旅行などし、なぜか奥様も響の中央区開催外部講座に参加している。そこで、倉鍵近辺地域の参加者管理役になってしまった。



息子タウと娘ソラは、どこにでも登場してくる行動力バリバリの親たちに、恥ずかしいを通り越して感心してしまう。しかも、母がこんなに活動的な人だと今まで知らなかったのである。




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