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ZEROミッシングリンクⅡ【2】ZERO MISSING LINK2  作者: タイニ
第十章 第3ラボ
36/110

34 挨拶

何とか毎日更新できています。ご訪問ありがとうございます!




「1週間??!」

超驚きの響。


「そうだよー!!ムギもあんなんで、それで先生まで何かあったら…。ううっっ…。」

右手を握るリーブラを見て、それからその向こう側に香が焚いてあるのに気が付く。おそらくリーブラだろう。


上を向いて、握られたままの手でリーブラの手の中をゆっくり擦った。少し後ろにいるタラゼドと目が合う。

「………」


音が聴こえた…。

私、それで起きたんだ…。



ムギのことはアーツ男性陣は知らない。チコに、響に、ムギまで何かあったのか…。とイオニアやキファたちは頭が追い付かない。


そっと響が言う。

「…ファクト。ちょっと来て。」

ファクトが近くに行くと、もっと近くにと手招きし、内緒話でもするようにしたので顔の前まで行く。

リーブラは少し右に移る。


「チコは…?」

「………。」

「チコはどうだった?」

自分と響の時間の経過感覚がずれているのを思い出すファクト。

「あ、あの後3日後に起きたよ…。」


「…ほんと?」

「うん、さっき会ったらまだ動けないし話せないけれど、伝心してきて早速うるさかった。俺に怒ってた。」

「…そう…。」

少し前後事情を整理して気が抜けたのか、響はぐったりとした。

「………よかった。」

涙が出てくる。

「…よかった……」


「先生!!…ファクト!何したの?!」

泣いているので、リーブラが怒る。

「え?吉報を伝えただけだけど…。」

イオニアがちょっと我慢できなくなって、ファクトの後ろ襟をつかんで後ろに引きずった。

「ファクト…先生と距離が近い!」

キファはまだ床で腑抜けていた。



「一度体調を見よう。」

そこでシャプレーが全員を響から下がらせた。


脈を測り、血圧なども確認する。ユラス女性と白衣の女性も入室してきた。シャプレーは医療ワゴンから何か取り出し、響に確認を取って採血などもする。

「では、皆様は部屋を移して整理するまで少し席を外しましょう。」

医療や介護役の女性たちに追い出され、アーツ陣は応接ルームに移された。




***




ラグジュアリーホテルのような吹き抜けの部屋で待つように言われたアーツ。


大きなソファー席とテーブル席が2つあり、まるでホテルのプライベートラウンジでである。



イオニアやタラゼドはSR社の職員から、ここに入館したこと、見たことへの対処に関して一通り説明を受けた。入館でもいくつかサインしたが、指示事項を了承すれば、帰宅は自由にしていいとのこと。何も言うなという脅しである。


キファとリーブラは疲れたのかソファーで寝ている。女性が入室し、2人に布団を掛けていた。

「お飲み物はこちらからご自由にどうぞ。」

そう言うと、壁が動いて大きなサービスカウンターが出てきた。コーヒーメーカーもあり、説明も表示されるがそれでも使い方が分からなければ呼んでと言われる。チョコやスナック菓子なども揃っていた。


「食事もあります。準備しますか?」

イオニアたちは断ろうとしたが、真っ先にこの男が言う。

「パスタとか食べたいです。クリーム系で太い面の。あと肉……」

なぜか指でおでこを押さえる発言主。


遠慮のない発言に顔をしかめるイオニア。もちろん発言の主はファクトである。

「ファイは?昼食食べたの?」

「軽く…。」

「イオニアたちは?」

「俺はいい。」

「ならつまめるもの簡単に何かお願いします。」

「かしこまりました。」

何の躊躇もなくあれこれ言うファクトに、イオニアは思う。本当にこいつ、根はボンボンだなと。


「ファイ、お茶好きだっけ?冷たいの?あったかいのがいい?」

100種類ぐらい色鮮やかに並ぶカプセルを見てファイの目が輝く。

「温かいフルーツティー!それ飲んでみたい。コーヒーマシーンの!………って、使い方分からない…。」

「待って。イオニアは?」

「ブラックでいい。ホット。赤のじゃなくて緑の。」

酸味より渋みが好きである。



イオニアはファイとファクトに向き直る。

「その前に待て、お前らに聞きたいことが山のようにある…」


げ!イヤだ…。

「え、イオニアさん、作ってからに…」

と二人が逃げようとしたところに…サルガスとリゲルが入って来た。


「…なんでイオニアまでいるんだ…。」

呆れてしまうサルガス。

「つーか、お前らこそ何なんだ?俺が聴こうとしていたところだ。」

「サルガス様~!」

ファイがサルガスを防御にする。


「響さんが起きたと聞いたから…」

「だからなんで、お前までSR社(ここ)に関わっているんだ!」

サルガスにイオニアが突っかかっている。

「一応、アーツのまとめ役だからな…。こいつらが関わっていることに責任があるだろ。」

と、ファイを指す。全員を見渡して、イオニアは不満そうだ。

「響さんが昏睡していたのも知っていたのか?」

「昏睡じゃない。睡眠状態だ。」

「起きないことにかわりはない。身内にも知らせていないだろ。隠蔽でもするつもりだったのか?」

イオニアが怒りだす。


「待って!俺から事情は話せないけれど、響さん自身が納得して始めたことだから…」

ファクトが止める。チコの話は出さないでおくが、そうすると説明できないことも少ない。サルガスが助け舟を出した。

「全貌を知らされているのはアーツの中にはいない。俺たちも半分は憶測で動いてる。」

ファクト以外は…。だが、そこはチコの身内だから仕方ない。


「サラサさんやカウスも来ている。後で説明を受けろ。キファたちが起きるだろ。少し寝させてやれ。」

そう言われてイオニアは仕方なしに椅子に腰を下ろした。


サラサたちは先に響に会いに行ったようだった。



飲み物を聴くと、サルガスもホットでタラゼドは水でいいというので、冷蔵庫から水を出して投げる。

「リゲルは?」

リゲルはお茶をくれというので、リゲルのもペッドボトルを投げた。

「ねー、こっち。炭酸水出てくるよ!これ飲もうよ!いいねー。買わなくても酎ハイ割れちゃう!」

その後もファクトはファイとコーヒーマシーンで遊んでいる。

「どうせならミルク系にしたいけど…」


大房の知り合いはこういう機械よりも紙のドリップや簡単なものを使っていたし、逆にバリスタとかカフェ勤務が多く、業務用の本格的過ぎるものしか知らない。ファイは初めて使うのでワクワクだった。

「おもしろーい!リゲルとタラゼドも飲みなよ!作ってあげる!」

「なんでお前の遊びに付き合わんといかんのだ…」

「え?何?じゃあ、タラゼドはこのほうじ茶ラテ!一口頂戴ね。」

勝手に話を進めるファイに、面倒なのでこれ以上ツッコまない。

「甘くないの作ってあげるから!」



そういえば、アーツにはかなり元飲食店経営者、勤務者がいる。この中ではサルガスとキファ、リーブラがそうだ。

チコやカウス一行に怯えているアーツなのに、世間で怖がられているなんて不条理すぎる…。料理もできて体力腕力もあって、今ならもれなく護衛もできてコーヒーも落としてくれ、カクテル作れる奴もそれなりにいて。思えば優良物件なのに兄貴たちはかわいそうだ…と勝手な同情の目を向けるファクト。


あいつまた変なこと考えてるな、とサルガスは悟った。



二人とも寝ているし、サルガスとイオニアは、しばらく静かに話し合い、リゲルやタラゼドは聴き入っていた。




***




「失礼する…」

そこに入って来たのは、くせ毛に少し髭のある、物腰の柔らかそうな男。

ファクトを見て手を振る。


「父さん、何?」


は?ファクトの父?

起きていた全員が一斉に立つ。


「あ!こんにちは!」

こんばんはの時間であるが、混乱するも夕入り夜入りするような職場は、全部おはようでもいいくらいだろう。


「君たちがファクトの上司かな?アーツベガスの…。息子が非常にお世話になっています。ファクトの父で心星ポラリスと言います。よろしく。」

ポラリスが周りにも一礼し、立ち上がっていたサルガスに両手を出す。握手をしてサルガスも自己紹介しをした。

「いえ、こちらこそ。ドラゴ・サルガスと言います。ファクトとは、中央区大房で彼の子供の時から知り合いです。」

今更ながらドラゴってアジアンマフィアみたいな名前だなーと思いながら、ファクトはスナックをぼりぼり食べている。


ポラリスは律儀にも、起きている全員に挨拶と握手をして名前を聴いた。


「リゲルは大きくなったなあ!なんでもっとタニアに来ないんだ!それにこのピンク頭は何なんだ!」

リゲルは握手をされてから、肩を抱かれる。

「おじさんやめててよ!」

リゲルが珍しく表情を崩していた。

「みんな、疲れただろ。好きな物を食べて休んでくれ。もし帰るなら、何か包んでもらうし。」


母ミザルと対応の違いに驚くしかない。

人によってはチコとファクトに平手打ちをした時がミザルとの初対面であの印象しかないのだ。



そこに、またなんと、思い出したらそうなるのか。

入室の確認もなく入ってくる人物。


すこぶる機嫌の悪そうな顔のミザルであった。


緊張が走る。

「皆さん、こんばんは。今日は本当にお疲れ様です。」

「…あ、こんばんは…。」

全員簡単に挨拶や会釈をする。

「響さんが起きてよかったです。感謝しています。」

お礼を言われるが、ミザルの声に抑揚がない。

「はい……」


もしかしてファクト貸し出しは無許可だったのか。

いない時に、ファクトにサイコスを使わせたのが悪かったのか。


…ヤバい予感しかしない一同であった。



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