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ZEROミッシングリンクⅡ【2】ZERO MISSING LINK2  作者: タイニ
第七章 消えたあなた
3/110

1 森のレプシロン

※この物語は『ZEROミッシングリンクⅠ』の続きです。

https://ncode.syosetu.com/n1641he/

※このお話はその時のメイン登場人物で、文章の視点が変わります。



よろしくお願いいたします!





美しい山の中に幅広で大きな滝が流れる。



小さめの山脈、森林地帯の中に点々と平地がある神秘的な地形。


熱帯のようで温帯であるここは、朝の霧が晴れて今日も美しい晴天である。




「せんせーい!どこですかー?」

助手は見つからない先生をずっと探している。


「せんせーい!」


ここを探すのは3度目だ。

「はあ…。」


「やっぱりいないの?」

「いないみたい。ごめんなさい。」

「いいよいいよ。そのうち会えるよ。」


「でも、先生喜びそう。前来た時より大きくなったね。」

もう1人の助手が頭を測る。

「リートさんが小さくなったんですよ。」

「なっていません。」

そのリートと呼ばれた助手は顔を赤らめた。



ワンワン!


すると、山裾の方から大きな白いフサフサの犬が駆けてくる。


「タロウ!」

タロウは少年に一目散に駆け寄って、思いっきり抱き着く。

「うわ!やめろ!」

顔中を舐められそうになるので、あっちこっち撫でてやると、犬は目の前にお座りをして落ち着いた。


そして少し経つと、もう2匹の狼のような犬を連れて、少し背が高めの茶髪の男性がやってくる。

「ファクト!元気だったか?」


「トルク!エタム!」

2匹の犬も少年の方に向かって来るので、首回りを両手で抱きしめる。犬たちは嬉しすぎて、遂に少年を押し倒してしまった。

「やめろって!久しぶり。いい子だな!」


「…犬が先なのか…?」

さみしそうに言ったのはトルク、エタムと一緒に来た心星(しんぼし)ポラリス。その少年ファクトの父親である。



「博士、何言っているんですか!こんなに探したこちらの身にもなって下さい!!昨日の連絡も処理していないでしょ!」

男の助手の1人が怒っている。

「いいよ。全部返さなくても。」

「返すべきものは、私が仕分けしています。返してください!」

「分かった…。はあ…。」

「父さん、みんなを困らせないでよ。」

「…。ファクトにそんなこと言われるなんて…。」


「皆さん!お茶にしましょー!」

建物の方からお手伝いの夫人が呼ぶのが聴こえる。

「行こう。」

ポラリスが言うと、タロウがファクトを引っ張るので皆でゾロゾロ移動した。




***




ここはアジアから離れた国、タニアのレプシロン研究所である。


吹き抜けのフロアに、温かいお茶の香りがする。


外には美しい自然が広がっていた。



「母さんは来ないのか?」

父ポラリスに毎回聞かれるが、母ミザルは忙しい。同じロボメカニックの最高研究者だ。

少年はファクト、二人の息子である。


「父さんが一度来なよ。」

「…そうだな。そろそろ動かないとな。」

「チコが…会いたがっているし。」

「チコ?…。

チコ・ミルク…か?」

「うん、チコ。」

「お前たち会ったのか?!!」

「会ったも何も、前にベガスの学校に編入するって言ったじゃん。」

「は!そうか!!チコは今ベガスなのか!か、母さんは大丈夫だったのか?!怒ってなかったか?」

「チコ、ひっぱたかれていた…。」

「!」

頭を押さえて、大きくため息をつくポラリス。


「大丈夫だよ。母さんも仕事に関しては区別しているし。」

チコは心星家に養子になった義姉だ。母と折り合いが良くない。


ファクトはタロウをなでながら言う。

「ちょっと心配でさ。シェル・ローズ社(SR社)に行くのを嫌がっている感じなんだよね。チコ。」

SR社は、ロボメカニックの中でも生体メカニック分野の最高峰組織である。義姉であるチコはニューロスサイボーグ。ずっと調整に来るように言われていた。



ポラリスは何か考えている。


「先生、今度私たちも一緒に行きませんか?」

リートが興味深そうに言う。

「もしかして、そういうのがイヤなのかもしれなくて。」

ファクトは言いにくくて、なんとなく分かってほしい感じで言ってみた。

「…そういうの?」

研究者には理解されにくいのか。

「だって、みんなに体を見られるわけでしょ?全部。」

「…。」

そこにいた研究者たちが黙って考え込む。チコはアンドロイドではない、人間だ。数年も経てば、当時と研究所職員の顔ぶれも変わっているだろう。信頼している人以外、触らせたくないに違いない。


「…それもあるけれど、それだけじゃないだろうな…。

そういえば、チコの型は6年前だろ?」

ポラリスは年配の博士に聞く。

「そうだな…6年前だ。」

「そろそろ新調してもいい頃だ。多分、嫌なのだろうな…。全部。」

どうしようもないような顔でポラリスはトルクの首を抱く。美しいトルクが目を細めた。



人の多いそこではポラリスは、これ以上チコについては何も言わなかった。

「近いうちに行けるように調整しよう…。」



「ファクトー。馬に乗るか?」

管理人のおじさんがみんなのところに来た。

「ホント?いいですか?」


「先生、いいですよねー?」

「ああ、気を付けてくれ。」

「あ?お前大きくなったんじゃないか?俺を超えたか?」

おじさんがびっくりする。

「惚れました?」

友達のシグマやイオニアなら言いそうなセリフを言ってみた。

「ふざけるな!好みとしては10点中3点だな。まずその髪を切れ。無駄に長い!」

思いっきり頭を叩かれ、そのまま肩を抱かれて外に引きずられる。


「待ってください!私も行きます!」

リートが白衣を放り投げ着いて行く。

「あ!リートは一緒にラボを片付けよう!」

「いやです!先生も遊んでいたので、私も少し遊びに行きます!」

「リートくーん!」

何人かが先生に構わず外に出て行った。


取り合えず朝の仕事を片付けてくれと言われ、ポラリスは仕方なしに研究室に戻る。ファクトももっと別のことも聞きたかったが外に出た。




***




馬には意外にも早く乗りこなせた。


小さい頃から顔は出していたので、馬も覚えているのかどうなのか嫌われてはいないようだ。しばらく手綱を引っ張って、それから少し老年の優しい馬に乗る。おじさんが付き添いながら、なだらかな斜面をゆっくり進んだ。


柵の向こう側には牛が休んでいた。



「もうすぐ牛の出産があるんだ。今夜あたりかな?見ていったらどうだ?」

おじさんが牛を見ながら言う。

「アンタレスではそういうのは見れないだろ。」

「…最近うちの学校、農業科の別の敷地もあることを知ったんです。肉牛や豚がいるって聞いたけれど。」

「そうなのか?」

「でも、だからって見れるわけでもないから、ここで見ていきたいです。」

「おう!その時に連絡してやるから。」



「ねえ!こっちに行こう!」

リートが小川を指し、ファクトの馬がトコトコと歩いていく。


今回は1週間の予定でここにいる。しばらく乗馬も練習しようと決めた。




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