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ZEROミッシングリンクⅡ【2】ZERO MISSING LINK2  作者: タイニ
第八章 河漢
20/110

18 次元の狭間

ごめんなさい、同じ部分の再投稿です!


深層心理のお話は、昔の漫画の解説をモデルにしています。



部屋には爽やかなお香が漂っている。



突然、深層世界から引き上げられて、響は状況が飲み込めなかった。


「響先生!」

ファイが乗り出す。

「先生、死んじゃったのかと思った~!!」

リーブラが涙目だ。

「だらんとして椅子から落ちそうだし、呼んでも呼んでも起きないから…キファとタラゼドを呼んだんだよ…。最初は救急にしようと思ったけれど、眠っているのか分からなくて…。」


「大丈夫っすか?」

キファが屈んだまま響の手に手を添えて心配そうに眺める。ファクトはここに来た時に変な感じがしたので、何だったのかと様子をじっと見ていた。何かが歪んでいる。


「あれ?なんで?私、施錠しなかった?」

この付近の研究室は小さな建物群になっている。施錠したつもりだったが、すっかり忘れていたらしい。部屋に入ったメンバーが心配で見ていたのだ。

「普通に開いてましたよ。」

「うそ……」

自分が間抜け過ぎて情けない。


「こんなお香なんて焚いて、椅子まで整えて倒れているから葉やクスリでイってしまったのかと………。」

キファがまじめな顔で言う。

「学校でトリップしないでください。」

タラゼドが言って、やっと二人の話を理解する響。

「へ?!違います!そんなわけないでしょ!」

空気を入れ替えようと立って数歩歩いたろことでぐらつき、タラゼドに後ろから肩を支えられた。

「あれ?ちょっと空間酔いしてるのかな?」


「え?先生マジ大丈夫?」

タラゼドが怪訝な顔で言った。

「違います!ちょっとトリップしちゃったんです!!」

ガバっとタラゼドに向き直って弁解する。


トリップってヤバくない?

という目で見る一同。

「違うってば!勘違いしないで!変なクスリじゃありません!!!」


そこでまたよろけて横向きにタラゼドに倒れ込んでしまった。もちろん受け止められる。

「わー!やめて!離して!!」

「離したら倒れるよ。ちょっとすまん。」

タラゼドはガッと響を縦に抱き上げる。

「やめてー!重いのに!重いのバレる!!」

「静かにしてほしんだけど。」

力のない手で叩いたまま、先の長椅子に横にさせられ、リーブラが大きめの膝掛けを持ってきて、響に掛けた。

「はあ…」

と、真っ赤になって片腕で目を押さえる響にタラゼドが呆れる。


「先生、何か飲む?」

「スッキリするの。」

「ミントティー入れようか?」

「お願いします……」

リーブラがお茶を淹れに行く。

「ファイ、窓開けてくれる?」

「先開けたよ。吸っちゃいけないものだと思ったから。」

「…。大丈夫です。ただのユーカリです……」


ジトッと、タラゼドを見る。重かった?私。みたいな顔で。

「…たいして重くないから気にすんな。」

「うそ!絶対重いって思ったでしょ!前、重いって言ったし!あれから体重変わってないし!」

「片腕で横からすくい抱くのと、両腕で縦に抱えるのでは全然違うだろ。でも数歩だし。」

「じゃあ、ちょっと多めに歩いたら重いって言うんでしょ!」

「子供じゃないからそりゃ重いだろ。」

「あー!また重いって言った!」

「…は?先生頭湧いてる?」


「片手で抱くとか両手で抱くとか何の話?いつそんなことしたんだ?」

キファは疑問を呈する。

「この前助けた時の話だよ…。」

と吐き出すタラゼド。


「先生気にすることないよ。私なんて55キロ越えだよ。その先は秘密だけど!先生の方が背はけっこう高いけど、体重は軽いでしょ。」

お茶を持って来たリーブラが慰める。

「……越えてはいないけど…そんなに変わらないです……。重いって思っても忘れてください……」

言わなくていいのに50キロ以上はあるだろう体重を微公表。胸もそれなりにあるのでしょうがないとみんな思う。響は先から恥かしくて慌てて、熱いお茶をすすってしまう。

「アツっ!」

「わー。先生ー!」

少しこぼして大騒ぎしている。

「先生!火傷してない?」

キファも慌てる。


「大丈夫っ。ほとんど毛布に掛かったから。」

「いつも間抜けだな。」

「ひどっ!火傷しそうだったんだよ!」

いちいちタラゼドの言葉に怒る女子。ファクトがアイスパックを持って来た。

「タラゼドってホント冷たいよね!おもしろくないし。」

ファイがつまらなそうに言った。

タラゼドからしたら、おもしろいが何に関係あるのだと言いたい。しかも、「重い」を勝手に蒸し返しているのは響なのに。


「何かやだな……」

と、騒いでいるタラゼドや響たちを見て突然キファが言い出した。

「先生、大丈夫です。鍛えているから先生くらい大丈夫っす!」

一同、今度は何の話だとキファを見た。



そこで大人世界に入っていけないファクトが、ササっと話を変えて聞く。

「で、先生はなんでトリップしてたんですか?」

「あ!」

響はまだ赤い顔で、半身を起こす。

「……あの、勘違いしてもらわないために説明しますけど……私、サイコス持ちなんです。」

「サイコス?」


「心理層に入っていける…。黙っててね。ここだけの秘密……」

「心理?」


コクンと頷く。

「いつもはこんなふうにならないで普通に起き上がれるのだけど、今日は急に呼ばれたから……鍵掛け忘れて…。」

「忘れてって、学生たちもロック解除できるから。いきなり戻って来たらどうするの?」

「……。」

そう言われればそうだ。誰が開けたか記録に残るが、全員キーを持っている。先生が倒れていたら大騒ぎだろう。

「でも、きれいに椅子に倒れる予定だったので……。寝てるかなーくらいに…。」

「学校で寝ないでください!不用心な。」


「心理層って、意識のこと?」

サイコロジーサイコスだ。

「え?危なくない?端から見たらすごく危なっかしいんだけど…。」

あんな風に倒れているのを見たら、戻って来られないのではないかと思ってしまう。


「え?それで何するつもりだったの?ただトリップしたかったの?」

響はファクトに怒る。

「そんなわけないです!急に引き上げられて空間に酔ったんです!それで、お香は帰る目印なんです。」

なんだかよく分からないけれど、すごいことなのかなーと思うアーツメンバー。

そして、響に研究室が与えられていた理由を理解するキファ。サイコス持ちだからか?



「……あ。そうだ。ファクト君。今度一緒にできない?私の手に触れていればいいから。」


「は?何を……」

引くキファ。


「先生!未成年はだめです!見るだけにしてください!!」

おかしなことを言うファイの頭を思わずペチっと叩いてしまう。

「何を考えているの!違います!あなたたちの頭はどーなっているんですか?!」

「え?毎日こんなんですけど。」

素直にキファが言う。毎日そんなことしか考えていない。



響はもう一度ファクトを見た。

「探してほしい。少しだけでいい…。」

ここでチコの名を出していいか迷う。義姉弟でも、これだけ気が合うなら似たビルドを描いているかもしれないし、共通するものがあるかもしれない。


「先生、またトリップするんですか?」

リーブラが心配そうだ。

「あのね……トリップ、トリップって言わないで……」


「今日はやめようよ。先までフラフラしてたんだから。」

キファが止めた。

「……そうだね。このサイコスは人に言わないでほしいんだけど、今度ファクト君に手伝ってほしいことがあるの。」

そしてファクトの方を見て言う。


「大切な人を引き上げたい。どこにいるのかも、できるか分からないけれど。」


それだけ聞いて、ファクトはなんのことか分かった。

周りも少し、なんとなく察する。


「一応カストル総師長には相談するけれど、今日みたいなことにならないように、体の方も誰かに見ていてほしいな。」


みんな顔を見合わせた。




***




「ばっかだねー。イオニア。」


「何だよ。」

道場で声を掛けるリーブラ。


「あんた敵が増えたよ。」

「はあ?俺はこれ以上有段にはこだわらん。」

まだ緑帯だが。

「そーじゃないっつーの。キファがヤバいってば。なんで今日来なかったの?」

「ああ?」

「電話出ないから『先生の研究室に来て―!!』てメールしたじゃん!」

イオニアがデバイスを見ると、確かにメッセージがあった。


「……ほんとだ。お前のメールなんかいちいち見ないからな。」

面倒この上ない。

「さっき先生倒れたんだよ!」

「ふーん……」


………。


「…って、倒れた?!」

「マジ?!」

周りにいるシグマなども反応する。

「マジだって!」


「え?!で、どうなったの?」

「キファとタラゼドで先生の取り合いしてた。タラゼド、先生抱いてた。先生、真っ赤な顔してた。かわいかった。」

「はあ?!!」


バジッ!!


と、自分の脱いだ上着でリーブラは叩かれる。

「いった~~い!!」

「テキトウなこと言うな。」

先、来たタラゼドが後ろで呆れている。

「えー!だって先生かわいいでしょー?!惚れない?先生抱っこしたくせにー!」

「響さんはファイだろ。」

「ファイ……?」

「あの性格……。ファイⅡだろ。惚れると思うか?お前とファイを足して割ったような性格だろ。」

タラゼドとファイは昔からの知り合いで腐れ縁。妹みたいなものだ。


「………ちょっと待て。抱っことかキファっていうのはなんだ?」

イオニアが怒っている。

「だってキファ、暇な時いつも研究室にいて学生に交じって助手までしてるもん。一緒に過ごした時間の勝利だよね。」

「あいつ、ミーティングさぼってそういうことをしていたのか……」


「何が勝利だ。勝手に創作すんな。」

さらにタラゼドに攻撃を受ける。

「ファイじゃないから、創作なんてしないってば。先生が倒れた時、キファずっと手握ってた………。」

ふふんと得意げな顔で言うと、先の服をまた掛けられて、頭を押さえられる。

「ぎゃー!やめてー-!!」


「リーブラ、チコさんがいたら半殺しにあうぞ……」

横でシグマが怯えている。一番大げさなことをするのにチコが怖いのかと周り一同は思う。


「で、先生はどこ?病院行った?」

イオニアが我に返る。

「家に帰ったよ。ファイが一緒で、ファクトとキファと寮の前まで行ったから大丈夫じゃない?!電話したらライが来てくれたって。」

「はあ?リーブラ。男に行かせんな!お前が行けよ!そうでなくとも俺を呼べ!」

「呼んだけど来なかったじゃん!メールも送ったのに!!」


「あれ、私デバイスどこに置いたっけ?」

そして鞄の中を探りに行き、そこでメールを見るリーブラ。

「え!ひどい!」

一同、また何なんだと思う。


「先の4人プラス、キロンとライたちで、ありがとうってことで焼肉行ってるんだって!なんか、響先生『力をつけなきゃ、スタミナがいる。慣れないことをするとけっこう疲れるから』とか言っていたらしい。」


「スタミナ?疲れる?」

謎過ぎる。響は運動が大して好きではない。よからぬ想像をしてしまうイオニア。

「ご飯行こう」という着信が何件か、タラゼドの方にも入っていた。


「トリップした日に焼肉に行くのか……。」

タラゼドがイヤそうな顔をする。

「トリップ???」

タラゼドとリーブラ以外、トリップとか言われても謎だ。響研究室で何があったのだ。


「行くー!準備して!」

タラゼドは早く帰りたい。

「俺はいい。」

「あんたも行くんだよ!キファの独壇場でいいの?!」

「いい。今焼肉食いたくないし。」

無理にタラゼドを引っ張るが、動かないので両手で押し、最終的に体で押す。このデカい奴め。


「ちょっと待て!俺も行く!!」

イオニアも動く。

「じゃあ俺も。」

と、シグマが立ち上がり、非常に騒がしい夕食になるのであった。



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