聖女が王太子の婚約者にならないといけないなんて誰が決めたのでしょう? 妹に聖女であるだけで婚約者になれたなんてずるいと言われ続けるのが辛いのですが。殿下にも想い人がいて婚約破棄したいと相談されてしまい
「お姉さまずるいー、聖女であるだけで王太子の婚約者になれるなんて!」
「王太子じゃなくて殿下でしょう。王太子殿下」
「……どっちでもいいじゃない。ずるいずるい、私も聖女になりたい!」
「いや無理ですし」
私は床に転がりずるいと泣き続ける妹を見てため息をつくしかありませんでした。
私は聖女、つまり癒しのスキルを持つので自動的にこの称号がつくだけですわ。
死者を生き返らせたりとかできるわけではありません。
私は公爵の長女、スキル判定で癒しの力がるとわかりそこから聖女の称号で呼ばれています。
このスキルは1000人に一人であり他にも聖女がいます。
その中で一番身分が高く年が釣り合うので王太子殿下の婚約者になっただけです。
聖女が代々王太子殿下の婚約者になるのですわ。
「聖女のスキルなんてずるい、私なんて水の素養しかないのに!」
「生まれ持ってのものですし水もすごいですわよ」
「すごくないですわ!」
私は妹とは両親が同じです。まあしかしこの妹は人のものを欲しがります。
お姉さまなんだから譲ってお上げと言われ続けて十数年。
でも聖女の座と殿下の婚約者の座は譲れません。
「……ずるーい、ずるいー」
私は14にもなって子供みたいな妹を見て頭が痛くなってきました。
あなたにあげたドレスや髪飾りやアクセサリみたいなまねはできません。
「聖女のスキルがない限りは無理ですわ。それに私が辞退しても次の聖女候補に……」
「ずるいですわ!」
私ははっきりいって聖女とか王太子の婚約者とか別にどうでもよかったのです。
どちらかというと魔法学園に行ってみたかったのです。友人のサリーがとても楽しそうにしていたのが羨ましくて。
だから来年から学園に通う妹のほうが羨ましいのですわ。
私は実家に帰るたびにずるい攻撃をされてもう疲れ果てていました。
なので私が婚約者でなくなればこれが止むかと考えたのです。
「聖女が王太子の婚約者になるという決まりですが得に益になることはなさそうです殿下、だって癒しのスキルは遺伝しませんし」
「そうだね」
私がなんとなく話をしてみてもやる気がなそうな殿下、というより話を真面目に聞いてくれそうにありません。いつも上の空でした。
どうもほかに想う人とやらがいるようです。
私は殿下に真面目に話がしたいと切り出しました。
そして……二人の思いがどうも一緒であることがわかったのです。なので……。
「ユーリ・バーンズ、お前は私の愛しいサーシャをいじめたそうだな。その罪により婚約破棄する!」
「……はい」
私は殿下に今王城にて婚約破棄を宣言されています。
サーシャという人は違う公爵令嬢ではありますが聖女ではありません。
「しかしサーシャのお願いによりその罪を減ずる。婚約破棄のみとする!」
「はい」
殿下の想い人は聖女ではない公爵令嬢でした。なら聖女という点をぬけば王太子の婚約者としてはふさわしいと判断しました。なので話し合いの末、この茶番を思いつきました。
私がサーシャさんをいじめたことにして、婚約破棄をする。聖女がいじめをするなんて前代未聞であるからして、聖女を婚約者にするのは今後なしとすると。
陛下もまあ聖女である王妃様と仲が悪いのでこの決まりを嫌がっていて話に乗ってくれました。
そして私は王宮を追い出され、実家に帰りました。
ずるいずるいという妹はさすがに聖女の称号をはく奪され殿下の婚約者でなくなった私にずるいーと言わなくはなりましたが。
また違うことでずるいずるいと言い出すのはわかっていました。
だからおとなしくしているうちに私は荷物をまとめて家を出たのです。
そして今まで溜まっていた鬱憤を晴らしたのですわ。
私が婚約破棄して聖女でなくなったことで両親は社交界で笑いもの。
妹のずるいずるい攻撃を親友のサリーに頼んで魔法で記録をつけておいたのでそれを殿下にお願いをして婚約式で公開してもらいましたわ。
何かの手違いということにして……。
赤っ恥を掻いた妹は両親に修道院に送られました。
あ、跡取りがいなくなったから帰ってこいといわれましたが無視しました。
今は隣国の魔法学園で生活をエンジョイしています。
恋人もできたので仲良くやってますわ。
もう聖女とかこりごりです。
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