クリスマス。プレゼントは重低音(大音量?)(ウーハー取り付け)
十二月もなかばを過ぎ、商店街は電色いっぱいのクリスマスムード……
そこから少し離れたここ『津出自動車』入店した僕の前には、不機嫌そうにテレビを睨む零が居た。
「は~。クリスマスでっていうのに、雪が降らないなんて最低」
(『ホワイトクリスマス』を期待していたなんて、やっぱり彼女も女の子なんだな)
あるいみ彼女を見直してる僕に気付いた彼女は振り返り言葉をつづけた。
「いらっしゃい。ねえ、クリスマスに雪が降らないなんてどう思う……だいいち今は冬なんだから、雪は毎日降り積もるべきじゃない……先週なんて雨よ」
「気持ちは分かるよ……例年通り年末に一日と、来年一月と二月に数度降って五センチ程つもるから気長に……」
「スタッドレスタイヤにはき替えたのに、雪道を思い切りとばせないじゃない!」
「おいおい」
(本気で悔しがってるよ)
雪道ではいつでも止まれるスピードでゆっくり走りましょう!
「雪道をとばすのは賛成できない」
「え何⁈ あんたもパパみたいなことを言うの」
「賛成は出来ないけど……旧空港のイベントでラリーみたいに雪をけちらしながら走る零さんの車が見れないのは、少し残念かも」
「でしょ……ああ……クリスマス連休、何しよう」
「僕は……ケーキ屋ならともかく、ハンバー屋だっていうのに……かきいれどきで休めない……けど思い出になる事はしたいよね」
なんて愚痴り続けても時は過ぎ……クリスマスが終わると同時に数日間の連休が始まった、十二月二十六日。
クリスマスは終わったけど、日頃の感謝も込めて彼女にプレゼントをおくろうと……いま僕は、小さな封筒を手に『津出自動車』ドアの前に立ち、思い出す。
……と少し余談だけど、ここまでの奮闘記を簡単にかかせてほしい。
第一案『花束を贈ろう』なんて彼女の場合「なにこれ」と花だけに鼻で笑われるだろう。
つづけて第二案『彼女は整備士。工具にしよう』と日曜大工店に行きその種類の多さと、自分の知識のなさと優柔不断さに断念。
負けずに第三案『花より牛丼』彼女はスマートに見えて「底無しか」と言いたいくらいの大食家だだから「一万円分食べるまで君をここから帰さない」なんてきざな台詞? はいたら「あんたは十万円分ね」と笑顔で倍返しされそう……考えただけでも胃が痛い、とかがんだ僕の眼下に『三十周年』と書かれたテーマパークのチラシが。
「これだ!」と第四案(最終案)。
このテーマパーク『ご都合ランド』だったら、この市に住む人間なら誰でも一度は行ってるであろうし(三十年も)安定した人気を誇っている
動物園をメインに、ジェットコースターや観覧車といった遊園地ようそも充実。おまけに小規模だけど水族館、植物園もあり。大食家の彼女にうってつけ質より量と言ったフードコートもある。
ここしかない! ……と今に至り、ドアを開ける
「らっしゃい。て、あんたか……今月(今年)はもう来ないと思ってた」
「はは。今日は零さんに渡したいものがあって」
「なに。もしかして現金?」
(整備士とはいえやはり商人の娘、そく金とこたえるか)
「ちがうよ『少し遅いクリスマスプレゼント』……でも現金をプレゼントする案は
思いつかなかった……はい」
「封筒? あ、商品券とか」
(結局、金かい)
封筒からチケットを取り出した彼女は、にこりと微笑む
「『GTR』のチケット」
「GTR?」
「うん『ご(G)都合(T)ランド(R)』でGTR……けど一部では『ご都合(G)主義(S)ランド(R)』でGSRても呼ばれてる……二枚あるってことは」
「うん」
「パパと二人で行けってことね。ありがとう……中学のとき。町内会で行ったきりだから何年ぶりかな」
「いや、出来たら僕と二人で」
「ふふ冗談。ちゃんと分ってるって……それじゃあんたの都合が良い日っていつ? 合わせてあげる」
「急なんだけど明後日は無理かな?」
「ねえ、合わせてあげるって言ってんのに……そんな弱気に答えないで……はいもう一回」
「うん……明後日二十八日の朝九時に迎えに行くから待ってて」
「ええ楽しみにしてる……それじゃあお返しに、あたしからもプレゼント……ていっても廃車から取ったパーツなんだけど……車を裏のガレージに回してくれない?」
「うん」
ガレージ前で笑みを浮かべ待っている彼女に
(よほどプレゼントの内容に自信があるんだろう。期待せずにはいられない)
とつられて僕も笑みを浮かべ停車して降りる。
「プレゼントって何?」
「取り付け作業も有るからそんなに焦らないで……オーディオ好きのあんたに」
一気にシャッターを上げ「これなんだけど」と台車にのった
ラゲッジスペース(後ろの荷物置)にしか置けそうにない、直径三十センチのウーハーとアンプと、MFD合板(ボックス用)を指さす。
「すごい! こんな大きいウーハー、雑誌でしか見た事ないよ……迫力ある……ありがとう」
「あたしはカーオーディオは、さほど興味ないんだけど男って、こうドンドンさせるのが好きなんでしょ」
決めつけるように鼻で笑う零に、カチンとくるが図星をつかれた様に反論できない。
「うんどうだろう……でも僕はドンドコする低音好きだよ」
「良かった……じゃあ、入れて」
息をもらしながら返事する彼女に
「なにを?」
「くるま。ちなみにバックで入れてね」
「うん」
車を入れるなり彼女は時間を惜しむように無言で、ボンネット。ドア。リヤハッチを開けては、ドアステップなどの樹脂パーツを外してゆく。
「時間かかるの?」
「まあね……バッテリー直結『バッ直』でアンプの電源とったり、箱つくるから、三時間以上……うう……少し待ってて」
うなりながら答える彼女(後ろで見てるだけ、なんて出来ない)
「良ければ何か手伝える事無いかな……今後ある程度、一人でいじれる様になりたいから」
「ありがとう。それに、良い心がけね……それじゃ、エンジンルーム・バルクヘッド(仕切り板)に穴開けてケーブル通すから取って」
「うん」
あっさり穴が開き、ケーブルが通る
「交代……あたしがカーペットの下にケーブル通すから……ついでにCDデッキを外して、リヤ音声出力から信号とるから」
三本のケーブルをノイズを拾わないよう離してシートの下をくぐらせ、苦労しながら……ラゲッジスペースまでケーブルが通った。
「各種信号が取れた、これで一段落。でもここからがメイン……ボックスを作るんだけど、どこに設置して、スピーカーはどっち向ける?」
「運転する時、重量配分でぐらつかない様に、中央に置きたい」
「へえ。あたしと同意見ね……だとしたらアンプも中央でリヤシートの下か……で向きは?」
「それ一番大事なんだから、せかさないでよ」
「ごめんごめん」
あいそ笑いで謝る零をよそに、僕は頭をフル回転させる。
低音は広がる性質があるため、どこから聞こえてくるといった必要性はそれほどない……けど考えろ。
ここからは僕個人の意見です。
外に向けるとリアハッチを叩き『バリバリ』内張りが共振するだろう。
上に向けると『ズンズン』スピード感はが出るだろうけど、後部座席の人が頭を音波で揺らされるなど不評だろう……似たような理由で後部座席の背もたれへ向けるのもだめ(車酔いした時、音に背中を叩かれるなんて)
左右どちらかを向け反対側に穴を開ける……確かに良いイメージだけど、なんとなくバランスが悪い。
だから。
「テーブルみたいに足つけて、下向けに出来る?」
「出来るけど、鉄板叩くよ……ほら」
ラゲッジルームの床鉄板をノックする。
「だから先に床を作って、小さくなっても良いから余った分で箱を作ってくれないかな……スピーカーの近くに穴を作って」
「うん」
「出来れば、音を拡散させるため、こう、山型のスポンジとかないかな?」
「山型か……ううん……スポンジじゃないけどこんなのはどう」
零が胸元からおわん型のものを取り出し、手渡す
「柔らかい、これならいい感じに音が広がりそう……ちなみに温かいけど、これってなに?」
「ブラのパットだけど?」
「ごめん」
付き返す僕に、零は意外な言葉をかえす
「残念いらないか……はは」
しかし
「もし『ありがとう』なんて受け取ったりしたら、殴ってやろうと思ってたんだけどな」
(はは……これでこそ彼女だ)
などと(数秒)ひとしきり笑い終えた彼女は、ラゲッジスペースに新聞紙をあて型を取り……MDF合板をきり。ぐらつかないよう足をつけ……
「よし」とものの数分で土台を完成させた。
「すごい」
「そうだ元、さっきドアステップとか樹脂パーツ外してる作業見てたでしょ」
「うん」
「叩いてはめ込む、簡単な作業だから、戻しといてね」
突然の事で返事が遅れる僕に
「あれ。自分でも出来るようになりたいって言ってたよね……簡単だからやるように」
「その間あたしはボックス作っとくから」
「うん。がんばるよ……そうだボックスの天板はネジで止めてくれないかな」
「なんで?」
「いずれ内部に吸音材入れようと思って」
「吸音材?」
「もこもこして柔らかい」
「これ?」
と再び零がブラのパットをちらつかせる。
「違うよ。スポンジみたいなもので……もう直視できないからそのネタやめて」
「ははは」
笑いながら背を向け、ボックス作りを始める零のそばで……僕は樹脂パーツ裏側と、車体のおうとつを見合わせながら、樹脂パーツ(それ)を戻していく。
(以外と楽に出来る……僕は、やらず嫌いをしていただけか)
「おお……おお……おお」
成功するたび感嘆の声をもらす僕に『くすり』と零が笑う。
そして……彼女の指示でパッケージを見ながら、アンプの端子に着いたさび落としては防さび剤を塗ったり……車体金属部のネジを外し、ボデーィーアース作りをすること一時間ほど。
ほぼ同時に作業が終わった。
「後から手を加えるっていうんだから、塗装までしなくて良いわよね」
未完成品を作らされたといわんばかりに、不満気な顔でボックスを積み込み配線をする零に
「いや、もちろん吸音材などを手に入れたら、手伝ってもらいたいし、最後はかっこよく塗装してもらいたいな」
「そう……だったら道具用意してまってるから」
エンジンがわへ戻り、バッテリー近くでガラス管の様なヒューズを取り付た零は、息をはき笑みを浮かべ、ボンネットを閉めた。
「完成……大丈夫と思うけど、音楽をかけてみて」
「うん」
「ウーハーから音が出ていない」
「アンプは動いてる。成功ね」
「え?」
「どんなバランスになってるか分からないのにゲイン(音量)上げてるわけないでしょ」
吸音材がないただの箱だから、かたく、木を叩くような、少し違和感がある
イコライザー調整は、高温と低音を強調しVの字になった
いわゆる『ドンシャリ系である』
ダンス音楽だとスピード感と低音のパワーに、自然とテンションが上がる
だが、バラードなどだとヴォーカルは聞き取りやすいが中いきの音が抜けてる感と、高音の強さに違和感が
読んでいただき、ありがとうございます。
『車に興味ない僕が、カーオーディオ、はじめました。』
第十五部『クリスマス』
いかがでしたか? 気に入っていたたけたなら是非
ブックマーク ・ ☆一つでも、評価をいただけると……
とてもうれしく、励みとなります。よろしくお願いします。
by.メガネ君(作者)