アップグレード・十二月~(LED化)暗い夕方『早めのライト点灯を』
十二月
彼女のアドバイスどおり、僕は三か月かけて貯めた三万円と、ボーナスを握りしめ上機嫌に
「お待たせ」
「『お待たせ』って、誰も待ってないわよ。で三万持ってきたのね……おすすめのパーツなら用意してあるわよ」
「ありがとう。でもカーナビとか便利だよね」
「は⁈ 三万でナビって」
「ちがうよほら、ボーナスから十万。合わせて十三万で中古のナビない?」
「もちろん有るけど……あんたの腕前じゃロングドライブなんてまだ危険だから……十万はいざって時のたんす貯金にでもしておきなさい……ヘッドライトのLED化と、黄色ハロゲンのフォグランプ取り付けね」
用意してくれていたのか(なかば押し付けか)、段ボールをテーブルに置き開いた。
「フォグランプってバンパーにつける補助等の事。でも何で黄色? ヘッドライトと同じ白いLEDの方が統一感が有ってかっこいい」
「それはたしかに。LEDは明るくて、フォグランプも統一するとかっこいいけど、実は白い光って雨や雪に弱いのから黄色……ほら」
『ここを見ろ』と箱を指でたたく
「確かに『雪、雨天に強い黄色』て書いてる」
「それで、これつける……わよね?」
ぐっと顔を近づけ視線をあわせ……。
(こうも至近距離でにらんでくる相手に……『いや、もう少し考えさせて』だなんて言える訳もなく)
「う、うん。お願いします」
かたことな言葉で頷く僕に、彼女は
「そうこなくっちゃ」とにっこり微笑み、右手のひらを差し出し
「パンパー穴開けたり、カプラーいじったり加工作業するけど、おまけして二万五千円で、今すぐしてあげるから領収書作ってる間に、車を裏のガレージに回しといて」
三万円出し、お釣り五千円受け取り、ひらめいた。
(よしこれは、日頃世話になってる彼女へプレゼントの足しにしよう)
「それじゃあ車、裏に回してきます」
「シャッターのカギ開いてるから、あげて入っといて」
「うん」
『勝手知ったる他人の車庫』とはいえ、他人の車庫を開けるのは少し気が引ける……なんて思いながら僕はたんたんと車を車庫に入れ、彼女を待つ。
「さあ始めるわよ」
(フォグランプのバンパー加工ってどうするのか期待する)
と彼女はしゃがむなり、僕に断りもちゅうちょもなく。
バンパーの両端にドリルで拳だいの穴を開け……フォグランプ本体をビスで止め、パテで穴を埋め……「よし」と笑顔で立ち上がる。
この間わずか三十分。
「早い」
関心する僕をよそに、彼女はパテが固まるまでLED化をするためボンネットを開け配線に手を伸ばす。
(ヘッドライトのLED化は、雑誌などで予習してたとおりで、正直がっかり……とはいえ、前かがみで作業する彼女の胸元が見えたのは……秘密だ)
そして乾いたパテを表面処理して、塗装……乾くまでのあいだ配線し、シャッターに向け試験点灯と光軸調整。
(完成だ)
……外を見ると、おあつらえ向けにもうすぐ日が沈みきる。
そして帰り道……その変化に僕は、好きな音楽が耳に入らないほど驚いた。
「夜間、早めのライト点灯は自分の視界確保のみならず、相手からも発見してもらいやすくなるので『早めの点灯』を」
……なんてぼくは、標語のような言葉を呟きながら帰宅した。
読んでいただき、ありがとうございます。
『車に興味ない僕が、カーオーディオ、はじめました。』
第十四部『アップグレード・十二月~(LED化)暗い夕方『早めのライト点灯を』』
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by.メガネ君(作者)