アップグレード・九月(スーパーカー入手)(ボディーコート)(作成中)
翌月(九月)
『中秋の名月』つまり今日は、九月二十一日『十五夜』だけあって、滑走路で見る満月はきれいだ……なんて黄昏ている僕も、出店からただよう団子の匂い(あんこ)に腹がなる。
そんな僕を指さして、ひとしきり笑う零は、一面に咲く彼岸花を見て苦笑いする。
「ははは……『十五夜、彼岸花祭り』って確かに昼間みた彼岸花は真っ赤できれいだったけど……夜、これだけ一面となると、ある意味不気味ね」
「うん、赤黒くてまるで血だね」
「そういえば知ってる? ここで昔、人が首吊りしたってうわさ」
「そんなバカな」
「あたしもパパから聞いた話なんだけど……詳しくはそこのロビーで」
僕を怖がらせようと話すはずが、本人(零)も背筋が冷たくなっているようで
二人そろって背中を丸めていると。
「「おお!」」
沸き起こる歓声に、ふりかえると車がちゅうを飛んでいる。
とは言い過ぎたかも……今回のイベントは……十五夜の歌にちなんで砂で作った丘から『ジャンピングバトル』
地面にたたきつけられるように着地する車をみるたび、頭を抱え顔を引きつらせる零が後ずさりしながら。
「あたしには、理解できない」
「車の幅跳びみたいなものでしょ」
「ええ……距離に加え、高さや滞空時間なんかが、得点になるらしいけど……こんなのアスファルトに着地した瞬間足回りが壊れるだけ……ほら見てよあれ。サスペンション壊れて、波打ちながら退場してる。もったいない」
零を見つづけるける僕に
「なに? へんな顔して見たって、あたしはこんないかれた儀式なんか、参加しないわよ……さ。団子買いに行こう」
(空飛ぶ車なんて、ドリフト走行よりも、非日常だ)と興奮気味に見入る僕の手を引いて、その場を立ち去ろうとする零。
「おいおいこの前、大口たたいたくせに、こそこそ逃げようなんてやっぱり女はきたないな……けど、適当な理由つけてバトルから、いや、俺様から逃げようだなんて、そうはせさせないぞ」
女性を目のかたきにした……感情的な男の声に振り返る。
(どこ聞き覚えのある声)
「あんたか……ほんと、女、女って過去に何かあったの……ふふ、もしかしてこっぴどくふ」
「うるさい! それより覚えてるだろうな」
「ええ……て、あんたの方こそ、あれから顔見せなかったじゃない」
「おおそれは悪かったな……おかげで俺はニューマシーンを手に入れた……これだ」
ほくそ笑んだ男は『見ろ!』と言わんばかり横へスライドし、背後にある、黄色いスーパーカーを指さす。
「「おお」」と周囲の客が声をもらす。
「ゲームで見た事ある、かっこいい本物だ」
(この車、ゲームで走らせたことある……確かに直線の加速はすごく早いんだけど、いくらステックを倒しても曲がらず、壁に激突してるんだよな)
馬力自慢のスーパーカー……それで誰が呼んだかついたあだ名が『直線番長』
目を丸くしてかたまる零(あ、直線番長)
「うそでしょ」
力なく両手を下ろし、がくぜんとした表情で僕を見る零に、鼻をならし勝ち誇る男。
「恐れ入ったか!」
「ええ」うなづくなり僕のそばに寄ってきて、小声で「……始、あたし勝って良いのかな」
「え? 良いんじゃないかな、そうしないとジョニーさんに勝つ夢が」
(勝てるのかなじゃなくて。勝ち確定のセリフ)
「私。あやまらなくちゃ」
と申し訳なさそうな表情で、スーパーカーの前に立つ零に
「あやまるって……降参するんか⁈ だったらそうだな」
さらに勝ちほこり、まるでぜんこうくつのように胸を張り条件ていじする男を無視して、スーパーカーのボンネットをなでる。
「おい、勝手に触るな指紋つくだろ」(相変わらずちいさい男)
「ごめんなさい『スーパーカー』あたし、勝っちゃうけど……決してあなたが遅いわけじゃない(男が遅いだけだから)」
立ち上がり、男に名刺を渡す
「この車ならタダで廃車手続きしてあげる……それと対戦者さん……任意保険は大丈夫?(入って安心任意保険)」
「どういう意味だ⁈」
「さあ、どういう意味か知らね……あれ、もしかして怒った?」
「バカにしやがって、当然だ」
「そうね、あたしに勝ったらことばの意味、教えてあげる」
「うう~」
零が挑発するたび、男の顔が赤く染まっていく……そんなのお構いなしと彼女は背を向け僕に向かって指をさす。
「元、今ならスタートライン前が空いてるからそこで応援して」
「普通ゴール前じゃ」
「ゴール前なんて、あたしが勝つのに決まってるんだから、つまんないじゃない」
「すごい自信だな」
男が割って入る
「あんたまだ居たの、自信なんてないわ、確信、事実を言ったまでよ」
「うお~」
「うるさい」
相手にしてられないと彼女も、数人の客もいらついた表情でその場を後にして……一人とり残される男。
僕は運よくスタートライン側の最前列に立つことが出来たが、コースが広くて全体を見渡せない。
しかしさいわい、コース中央には中継用のスクリーンが映し出されている……だから今後、バトルがあるたびそれが終わるまで、三人称視点に交代して、僕は観客席で声援を送ることにしよう。
スタート位置に並ぶ青(零)黄(男)、二台の車へ声援が送られると……男はそれにこたえているのか、単に零を威嚇しているつもりなのか、激しく空ぶかしする。
スーパーカーどくとくの『ヴォ~ン!』かん高い音がひびく
(当人にとっては良い音なのだろう。その気持ちは分かるが、他人にとっては迷惑な場合もある)
元同様、耳をおさえている客も……可哀そうにうるさいあまり零も車内で耳をおさえている。
そして、レッドシグナルが、グリーンに変わり
スキール音を上げフル加速、二台いっせいに飛び出した!
『直線番長』の二つ名はだてじゃない
零の車が止まって、いや、むしろバックしてると錯覚させるほどの加速とトップスピード!(何キロ出てるんだ)
零がスリップストリーム(真後ろ)に入ろうとするが、時すでに遅し。
百メータ以上の距離をあけ、一個はコーナー前で減速(男のロマン、レートブレーキング)……からの……急ハンドル!
レースゲーム経験者なら分かるだろう。ミッドシップカーが、十分な減速もせず急ハンドル……その結果……見事にスピン!
コナー目印のコーンがとんでゆく。
エンジンストールを起こしたのか、男のエンジンが止まっている……と、悔しがる男へ見せつける様に、零は見事なドリフトでコーナをぬけていく。
零のタイヤスモークをくらい、むきになる男
「うおー! このあま~!」
エンジン顔負けの大声を上げ、コースに復帰しすぐさま追いつく……が……コーナーのたびにコースアウト。
しまいにはコースアウトしたのをいいことに、ショートカット(ルール違反)
これには周囲から「「は! あああ」」と嘲笑まじりのため息が漏れる。
そして零がドリフトをしながら最終コーナーを曲がり、ゴール前のホームストレート……と、その後ろに男の車が、意外とうまくコーナーを曲がり加速する。
再びスーパーカーのフル加速だ、勝ってっこない
だが様子がおかしいスーパーカーはマフラーからではなくボンネットから煙をはいている
零が先にゴールするが
男は零の横をすり抜け「わーわー、ブレーキ、ブレーキ」と叫びながら直進
エンジンが壊れてことで、油圧が無くなりブレーキが作動しない。
基盤が壊れたのか、電子制御のサイドブレーキも緊急ブレーキも作動しないようだ。
「これだから電子制御は」
零はすぐさまフル加速、男の横につけ一瞬考え
(このままだと大変な事になる……背に腹はかえられない)
「くそ」
軽く車体をぶつけ……正気に返った男と目が合うなり
「ダートコースにつっこめ!」
滑走路に向かい、男を追い越すと……管制塔も彼女の案に気づいたらしくダートコースをライトアップさせる。
さいわいハンドルは油圧式ではなくモーター独立……いきていたらしく、男の車はダートコースに鼻先をつっんで停車。
車体の後ろ半分がエンジンオイルで汚れてる以外、外観はきれいだ。
(これだけオイルが飛んでるってことは、ピストンリング割れか、ガスケットがとんだか……どっちにせよエンジンは)
エアーバッグが作動し男は無事……頭を打ったのかフラフラと、スタート前とはうってかわり弱気になっている。
(タダで引き取るといったけど……さすがにかわいそう)
男の意見も聞かず早合点する零……すでに手に入れる気、満々だ
「残念だけど、この車はもう駄目ね……あたしも鬼じゃないから、サービスして十万で買い取ってあげようか⁈」
わざとらしいまでの優しい口調と表情に……男はため息をもらしながら小声で
「……お願いします」とうなづくいた……。
それを携帯で録画した零は、ニヤリと笑い、すぐさま自宅へ電話。
「パパ十万で、そこそこ状態の良い『スーパーカー』の廃車が手に入ったから、タクシーで空港前に来てイベントが終わるまで待ってて」
『は⁈ 十万』驚きを隠せない男の声が携帯からもれる
ボディーコーティングと、洗車セットを購入
読んでいただき、ありがとうございます。
『車に興味ない僕が、カーオーディオ、はじめました。』
第十一部『アップグレード・九月』
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by.メガネ君(作者)