アップグレード・八月(海水浴花火と来ればオカルトチューン)(作成中)
「先月は、ブーツとかを交換して足回りを良くしたから」
僕へ笑みを向ける零に(オーディオ向上か?)期待しながら微笑み返すと……
「今月である程度、足、仕上げるわよ」
ガクッと肩を落とし、期待が外れた事に声を上げてしまう
「これ以上一万円以外で何が出来るの? 安い物でも新品だったら四本交換して約四万円だよ……どうすんの⁈」
「落ち着いて、今回は二円でタイヤに窒素入れてあげる……窒素タイヤって聞いた事ない?」
「でた、オカルトチューンだ……確かにカーパーツショップのタイヤコーナーでこれでもかって宣伝してるけど……ほんと効果あるの?」
と鼻で笑いコバカにする僕に、零がむきになる。
「やっても無いのに窒素をバカにしないで」
「ごめん」
相変わらずの迫力に、反射的にあやまってしまう。
「いや。『たかがタイヤの空気』って気持ちは分かるんだけどね……信用できないならウチ(津出自動車)でも窒素入れられるから。ものは試し……入れてあげる……効果が感じられなかったら。おだいはけっこうタダで良いわ」
「そんなの『効果が無かった』って嘘つけば」
「ははっ、思ってることが顔に出る(チキンな)あなたじゃ無理ね」
「う」(図星)
笑う零に、先月車の変化に興奮しながら彼女に言い寄る、自身の姿を思い出し……黙り込む。
「決まりね。じゃあ車を裏に回して……リフトまで誘導するから」
そして、胸の高さにタイヤがくるようにリフトアップされる車
「簡単な作業だから勉強と思って、前輪はあたしがするから、それを見て、後輪はあなたがすること」
「うん」
「まずはエアーぬきを穴に押し込んで……ん……空気が抜けたら、窒素をある程度入れて再び抜いて……今度は窒素を空気圧高めに入れる」
「うん」
「単純作業だけど空気出し入れするのって(風が顔に当たって)気持ちいいわよね……なにへんな顔してこっち見てんの⁈」
「いや~、女の子の口から、出し入れ、とか、気持ちいいとかって、何だかエッチな感じがして」
「へんたい」
さげすむような目で睨む彼女の目に反射的に謝る
「ごめん」
「あ~あ、どうして男って下半身でしか物事を考えられないのかな?」
そして、ものの二十分ほどで作業は完了した。
しょうじき、ひょうしぬけである(ほんとにこれで変わるのか?)
「それじゃ、途中まででいいから、ここまで来た道戻ってみて」
「うん……タダにするって約束おぼえてるよね」
「男のくせにしつこい! ちゃんとおぼえてるし、あたしの勝ちに決まってるんだから、行った行った」
「うん」
僕はいつもどおり、アクセルを踏む。
(あれ? あ整備場はまっ平らだから……ほら砂利の所はいつもどおり音がするし揺れる、二千円はいただきだ……出口の段差をこえて道路……うそ静かだ)
変化に慌てて車を路肩に止め、降り、タイヤを見る。
(パンクはしてないし……タイヤを変えたわけでもない、よな……ウソだろ⁈)
『津出自動車』の周りを一周する間……そのお値段以上の効果に……僕は笑いが止まらなかった。
(まるで別物、零にひみつでディーラーで試乗した普通車みたいな静かさ)
戻ってくるなり零は僕の顔を見ては、勝ち誇った顔で胸を張る
「予想どおり、あたしの勝ちね」
「いやまいったよ……オカルトチューンもあなどれないな」
「そうでしょ……はい二千円……と言いたいところだけど、プラス三千円ある?」
「いや、約束がちがう」
「よろこんでくれたお返しにサービス、プラス三千円で中古のアルミホイール付けてあげる」
「サービスって言いながらお金取るの?」
「当然でしょ」胸を張る彼女。
(さすがは商人の娘……だけど中古とはいえ一本、七百五十円でアルミホイールがつく)
「そうそう、始めの充填は二千円だけど、補充はただでしてあげる」
「ありがとう」
そして一時間後……五千円という破格で乗り心地と外観が向上した愛車を、うっとりとした表情で見ていると。
「良いんじゃない?」
「うん、ありがとう」
「あ……そういえば近々、花火大会が有るわよね」
「うん天神市民ならお一人様でも、無意識に行ってしまう『白砂ビーチ花火大会』もちろん僕も、裸男といく予定」
「そうなんだ……だったら、そのかっこ良くなった車で女の子を誘って、『白砂ビーチ』へ海水浴にでも行って……夜は花火を見上げるなんてロマンチックじゃない?」
「誘えってこと?」
「そう聞こえた? あたしこんな性格でしょ。だからパパ以外の男のひとから誘われた事が無いの」
(なるほど……でも以前……あ、あれは誘おうとしたことを、そのまま逆に、お願いされたか)
「じゃあ気をとり直して」と一拍手
「うんと……暑い日が続くよね。良ければ来週、この前の四人で、海水浴に行かない? その後、いったん帰って浴衣とかに着かえたら迎えに行くから、花火大会に行こうよ」
「いやよ!」
「え⁈ いやって話しがちがう」
「そうじゃなくて、いったん帰るのがいやなの。めんどくさいじゃない、ロングパレオ腰に巻くから、あたしは水着のままでもいっこうにかまわない」
「いや。零さんは良くても、僕や裸男は私服で良いとして、花子さんが浴衣を着たいなんて言ったら」
「そんなの車に積んで持っていったらいいでしょ……知らないと思うけど『白砂ビーチ(あそこ)』の女子更衣室凄いんだから」
「あんな木造のほったて小屋が?(水道直結のシャワーが一本)」
「それは男子更衣室……女子更衣室は鉄筋コンクリートで、百円出せば温水シャワーが使えるんだから」
(なに、この格差)
「へえ、そうなんだ……じゃあ問題無いね……何時ごろここに来たらいい?」
「そうね、十時ごろお願い」
「うん分かった」
「そうだ……ガソリン代がわりに、もう少しいじってあげる」
ヒューズなどの電気系接点を磨き、防さびざいを塗り、ケーブル同士が近づきすぎないよう、二時間かけてあちこち配線し直す
(ノイズが減る)(気のせいかCDの読み込みが少し早い?)
以前の四人で海水浴に行く
零はビキニ、相変わらず立派な胸
花子はワンピースだが、その控えめな胸のおかげで、水抵抗の少ない競泳水着のよう……とあまりにも胸の話題を出す裸男に声を上げる
裸男はビキニパンツと思ってた
わいのナニはでかいからな、あんな小さいパンツはいたら大変な事になるで
見てみるか……。当然「へんたい」と花子にビンタされる
ははは、あたしは見てもいいよ、あたしのパパ家じゃ裸族だから
元はトランクスタイプ……まるで下着だと言われる
花火は火薬というある意味人工的な物が起こす天然の重低音
音圧の壁に押されたり、体中を等しく真綿で締め付けられてるようだ
読んでいただき、ありがとうございます。
『車に興味ない僕が、カーオーディオ、はじめました。』
第十部『アップグレード・八月』
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by.メガネ君(作者)