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エリック王子…22歳、王家の長男で第一王子、シャルナを王子妃にしたい。

アリス姫…19歳、王家の長女でエリック王子の妹、勇者ゼロと結婚したい。

それから私はとても忙しかった。

直接会える人には直接会って感謝を伝えたいし、遠方でお世話になった人には急いで手紙を書いた。

夕方になり、王家の人々との食事にも誘われ参加をし、アガゼウスの部屋に行くのはその後になってしまった。


「アガゼウス~遅くなってごめん」


部屋の扉をノックして話しかけると一時してアガゼウスが部屋から顔を出した。


「まー挨拶周りに忙しかったんだろう。仕方ないさ、入れ」


今日は上半身裸でなかっただけ、よかったと思い私は部屋の中に入った。

相変わらずの筋トレマシーンがあるが、テーブルの上に小さな箱が置いてあることに気が付いた。


「そこ、ソファに座って」


箱が置いてあるテーブルのソファに腰を掛けるとアガゼウスはテーブル越しに私の正面に立って何か言いたそうにしている。


「俺とマコが出会った時の事覚えているか」

「あー魔王軍が責めて来た時のこと?」


アガゼウスは戦士一族の長の息子だ。

アガゼウスが暮らす村に魔王軍が押し寄せるという情報を手に入れた私とレケはそれを知らせに行った時アガゼウスと出会った。

その時のアガゼウスはなんというか、お山の大将というか、部族で一番強く周りの意見に耳を貸すような奴ではなかった。


「あの時、マコが言った言葉を今でも覚えている。”相手に勝つ強さより、守る強さがあるのか”と誰よりも強い、勝てると傲慢になっていた俺にマコが気づかせてくれたんだ」


確かにそんな事を言ったような…気がする。

レケが提案した作戦に耳を貸そうとしなかったアガゼウスに私は腹を立てた時だろう。

だって、アガゼウスは真正面から魔王軍とやり合うって言うのだから皆そりゃ止めるでしょ。

レケの作戦も鬼畜な作戦で、魔王軍をだまして崖からダイブさせるという血も涙もない作戦だったが、おかげで誰一人として被害を受ける事はなかったから良しだろう。

アガゼウスは真剣な眼差して私を見つめていた。


「マコ、俺は強いか?」

「そりゃ強いでしょ」


その筋肉があるのなら、ただしシャルナとどちらが強いかと聞かれると答えが難しい。


「俺は守れているのか?」

「ぷっ。今までさんざん皆を守って来たじゃない」


あまりに当たり前のことを聞かれて思わず吹き出してしまった。


「そうか…最後に頼みがあるんだ」


アガゼウスはテーブルに置いてあった箱を開けると中には赤いお守りの様な札が入っている。

私が首を傾げているとアガゼウスが説明してくれた。


「願い札だ」

「願い札?」

「これを体に押し付け願いをすると印が体に刻まれる。そして、願いが叶えば印が消えるというモノだ」


なんだか呪いに近いものを感じて恐ろしい…元の世界ではミサンガみたいものだろうか?


「これを俺の体に刻んで欲しい」

「はぃ?」

「俺はマコのことを忘れない。忘れないが共に戦った仲間として繋がりが欲しい」


重い…重いぞアガゼウス。

そんなに想って頂けるのは嬉しいがいわゆるタトゥーだよねこれ。

痛くないのかな…願いがかなわないと消えないんだよね…

私が難色を示しているとアガゼウスは別の提案をしてきた。


「マコの体にでもいいぞ」

「有難く願いをさせていただきます」


私の体にはやりたくない。

アガゼウスは箱を私に渡して服を脱ぎだした。

やっぱり脱ぐのね…さりげなく筋肉を主張するのね。

上半身を脱ぎ、更に下半身を脱ぎだすアガゼウスに私は止めた。


「ちょ!下脱ぐ必要あるの!?」

「どこでもマコの好きな所でいいぞ。普段見えない所やピー―――な所でも俺は構わない」

「バカ?うん筋肉バカは知ってたけど本気でバカなのね」

「心外な。俺は至ってまじめだ。」


どうやら本当に真剣に発言をしているらしいアガゼウスに私は目を細める。


「俺のお勧めはお尻だ」

「…私は何が悲しくてアガゼウスのお尻に願いをしなければいけないの?」

「願いは刻む体の持ち主が関わる願いだ。すぐに叶うものはダメだからな」

「とは言ってもね…」


私がアガゼウスに願うこと。

未来永劫、幸せであってほしい。

私はお守りを手に持ち、アガゼウスの右二の腕に手を当て瞳を閉じて祈った。


『アガゼウスの子供に逢ってみたい』


お守りを押し当てていた手が光り、アガゼウスに吸い込まれるとアガゼウスの二の腕に祈の印が刻まれていた。


「何を願ったんだ?」

「内緒。アガゼウス、今までありがとう。バカだけど最高の盾だったよ」

「ああ、マコお前は役立たずだが、俺の…俺たちの運命の人だ」


アガゼウスはそっと私を抱き寄せた。

ゴツゴツの筋肉と熱が暑苦しい…だが、今だけは我慢してやろう。

私も感謝の気持ちを込めて抱き付き返して部屋を出て行った。


部屋に戻り、残りの手紙をせっせと書いているといつの間にか空がうっすらと明るくになってきた。

眠気もあるが、朝もやの中の庭園を散歩してみたいと思い、厚手の上着をきて外を歩く。

この世界の空気を吸うのもあとどのくらいだろう。

風を感じ、音を聞いて、世界を見ることが貴重に思えて心が熱くなった。

もし、元の世界の戻って私の居場所がなかったらどうしよう。

3年も消えていたのだ可能性はなくはない。

でも、よく考えたらこの異世界に来た時もゼロからのスタートだった。

元の世界でのゼロスタートはこっちに比べればなんてことない。

なんとかなる、私は前向きに考える事にした。

以前の自分に自信のなかった私とは違い、今では少しの自信とそれに加えて違う何かが身についたのだと私は感じた。


「はぁ、なんだかんだで楽しかったなぁ」


吐く息が少し白くなり、徐々に日が昇り、空が明るくなっていく。

朝もやが晴れてキラキラと輝きだしたこの異世界を眺めて私は充実感でいっぱいになった。

最後まで読んで頂きありがとうございます!

あと2話で一区切りです(*^_^*)

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