よん
アガゼウス…戦士の一族。
オレンジ色の髪、無造作に長髪を束ねている。カラダむきむき筋肉。身長190センチとデカイ。筋肉を鍛え体術に優れている。
騒ぎが落ち着き、アリス姫は王妃様に連行され、ゼロも半強制的に自室の部屋に帰らされた。
そして、部屋に何故かレケが残っている。
「あ、あのう」
恐る恐る声を掛けると、レケは不機嫌とばかりに前髪をかき上げ私を睨んでいる。
「なにやってるんですかマコ。」
「いや、さっきも説明したけど私は巻き込まれただけだし」
「何故ゼロがシャワー浴びているのですか?」
「さぁ…アリス姫から逃げるため?」
「そんなこと誰が信じると思います?こんな夜更けに女の寝室に男がいてシャワー浴びていたら男女の関係があったと思う方が普通と思いませんか?」
「はぁ?そんな訳ないじゃない」
「そう思われてもおかしくないと言っているのです。注意力がなさすぎるマコは」
「注意力って、安全な相手に対して注意する必要ないでしょ?」
「ゼロが安全な相手って誰か決めたのですか?」
「え?」
世界を救った勇者だよゼロは。
そんな彼を安全ではない相手と言いたいのだろうか?
魔王を倒してからレケはちょっと変だ。
両親と故郷の皆を殺されたレケと私は旅を始めて少しづつお互いを理解し、一番助け合ってきた。
私にとってレケは相棒だ。
今では18歳になりすっかり大人ぶっているが、時々見せる幼い部分は私だけが知っている特権。
そんな彼は最近まったく笑顔を見せない。
いつも不機嫌で色々忙しいのか疲労感があり、どことなく苛立っている。
一緒に旅をしていた時は厳しくもあり、ユーモアがあるレケだったのに…
「レケは私やゼロを信用してないってこと?」
「そんなこと言ってません」
「言ってる。最近変だよレケ…そんな仲間を疑うなんて…」
「…疑ってません。心配しているのです」
「…」
嫌な空気の中、少しの間沈黙が続いた。
私はこのままではいけないと思い何か話題がないかと考えて、一番に思い立った事は元の世界に帰る方法が見つかったかという事だった。
「そういえば、元の世界の戻れる方法、何かわかった?」
「…はい」
「本当!?」
私がパぁっと表情を明るくなるとレケは反対に更に不機嫌そうな表情になる。
「レケ?」
そんなレケを心配するとレケは近くにあった壁を思いっきり右手で殴った。
これまで苛立ってそんな暴力的な行動をとるレケを見たことがなかったので私は少し怯えてしまい萎縮してしまうとレケはハッと我に返り、私を見る瞳はとても悲しそうだった。
「っ…」
そのあとレケは黙って私の部屋を出て行った。
元の世界に帰れる。
その事はとても嬉しいと思ったが、最後に見せたレケの表情が忘れられず私は夜あまり眠れなかった。
それから数日後、私はレケの部屋に呼び出された。
レケの部屋はゼロとシャルナとアガゼウスも呼ばれており、沢山の書物と書類に埋め尽くされ、散らかっていた。
レケはずっと何かをひとりで調べていたのだと、すぐに理解した。
「レケ、話って?」
ゼロが部屋の床に落ちていた本の一冊を拾い上げパラパラとめくりながら聞くとレケは古い伝書を手に持ち私たちに見せた。
それは私が召喚された時持ち出したレケの家に代々伝わる伝書だ。
「マコを元の世界に帰す方法がわかった」
「やったじゃない!マコ」
シャルナは喜び私の手を握ってくれた。
私も喜ばしいと微笑んだ。
「これから…それを実行しようと思う」
「本気なのか?」
レケの言葉にアガゼウスは眉間に皺をよせ疑うようだった。
「ああ、わたしには責任がある。マコを帰す責任を果たさないといけない」
「…」
私とシャルナ以外はなぜかみんな神妙な面持ちでどことなく気分が沈んでいるようだった。
レケは場所を替える必要があると城の裏側にある林に場所を移した。
そこは王家の先代の墓石がある、よく手入れされた広場だ。
その場所に大きく魔法陣を描きレケはポケットから黒い手のひらサイズの玉を取り出した。
それは魔王を討伐した際に現れた品物だとみんなすぐにわかった。
「これが扉の代わりになる。ゼロ・シャルナ手伝って」
そう言われゼロとシャルナはレケの近くに歩み寄ると何か指示を受けて頷き両手を魔法陣に置いた。
その後、レケは呪文のようなものをブツブツと唱えだす。すると黒い玉はぼんやりと輝き魔法陣の中心に浮かび魔法陣も光を放つと空間が歪み出した。
「出来た…」
ゼロが小さく呟くとレケは俯いた。
「マコ、ここを通れるのはマコだけだ。ここを通ると元の世界に戻れる。そして…二度とこっちへは来れない」
「二度と…」
「この空間は当分閉じる事はない。ここを通る時は…よく考えて通って欲しい」
俯き小さな声でそう告げたレケはそのまま城へ帰って行った。
シャルナは私の元に駆け寄りギュッと私を抱きしめた。
「よかったね…マコ。本当によかったね」
「ぅん。ありがとう、シャルナ」
帰る手段が出来た事で私は安堵しシャルナと喜びを分かち合っていた。
すると、アガゼウスが私の肩に手を乗せる。
「もう少し、こっちにいるんだろう?」
「あ、うん。最後に挨拶したい人達がいるし」
「そうか、俺も見せたいものがあるんだ」
まさか筋肉なんて言わないだろうか…
私が心配しているとアガゼウスが私の頬を抓る。
「痛い痛い!」
「あとで俺の部屋に来い、いいな」
そう言うとアガゼウスも城に戻って行った。
ゼロは魔法陣と黒い玉をジッと眺めて立ち尽くしている。
少し心配になって私が声をかけるとピクリとゼロが反応した。
「ゼロ、大丈夫?」
魔法陣を起動させるのに魔力を相当使ったのだろうか?
「あ、ああ。よかったねマコ」
私に向けた笑顔はどことなく悲し気で作り笑いのように思えた。
ゼロは私が元の世界に戻る事を喜んでいないのだろうか…
「ゼロ、そんな顔したらマコが可哀想よ。気持ちよく帰してあげましょう。私たちの英雄を」
「そうだね…そうなんだけど…ゴメン、マコ…俺。マコに帰って欲しくないんだ」
片手で顔を隠して俯くゼロに私は胸を締め付けられる思いがした。
シャルナも顔を歪ませて涙を堪えて私の手をギュッと握り締めている。
私は二人の思いが伝わり目が熱くなり涙が溢れてきた。
「ありがとう…本当にありがとう。」
こんなに思ってくれる必要としてくれる仲間がいる。
私はなんて幸せなんだと思った。
最後まで読んで頂きありがとうございます。




