さん
ゼロ…勇者。24歳。身長172センチゴールドの髪色をしており少し短髪だが、不揃いに伸びている。
決断力があり、間違ったことが嫌いでヒーロー気質。
努力をして強くなった勇者で、毎日の鍛練も欠かさない。アガゼウスより武術は弱いが魔法を使え聖剣を持っていたが魔王戦で魔王と共に消滅した。
トントン
王城に準備された私の部屋でくつろいでいるとドアをノックする音が聞こえた。
誰か訪ねて来たと思い部屋の扉を開けるが誰もいない。
空耳か?と首を傾げていると、今度はトントントンと少し焦った様子の音が聞こえる。
聞こえた方向はベランダの窓で、そこには薄い寝巻き姿の勇者ゼロがガタガタ震えながら立っていた。
私は顔をひきつらせてベランダの扉の鍵を開けると、ゼロが急いで部屋に入ってくる。
「し、死ぬかと思った…」
それもそうだ、夜だし外は冷たい風が吹いている。
しかもここは3階、地上20メートルぐらいの所にある部屋。
ベランダは隣の部屋と横つなぎのベランダではないので、どうやって?そして、なぜゼロがあそこに居たのか…
「逃げてきたな」
「正解…」
暖炉の前に座り込み身体を温めているゼロに私は暖かそうな上着をかけてあげた。
確か私の部屋の斜め上にゼロの部屋が用意されており、恐らくそこから飛び降り私の部屋のベランダに来たのだろう。
「何か暖かい飲み物が欲しいなー」
「はいはい。ホットミルクでいい?」
「ホットワインがいい」
少し甘えるように笑顔を向けてくるゼロはお願い上手だ。
ゼロは私よりも年が4つ下の24歳。
自分が勇者であり世界の希望というプレッシャーと戦ってきた彼を私は尊敬し弟の様に思っている。
私は仕方ないとホットワインを作り出した。
「で、誰から逃げてきたの?」
「アリス姫」
「ほう」
ここの関係は上手くいっていると思っていたのに。
しかし、アリス姫も夜這いだなんて、なんと大胆な…
私のイメージは可憐でおしとやかな印象だったけど。
「は!もしかして、手を握って添い寝してくださいと頼まれ、ゼロが我慢出来ずに襲ってしまいそうになったから逃げてきたとか!」
「…なんだよそれ」
「あ、違うの?」
「俺は愛する人としか結婚しないと言ったんだ。だってそうだろ?民衆が期待しているとか王家の血とか、そんなものに縛られるなんて俺はごめんだ。」
「アリス姫嫌いなの?」
「嫌いじゃない。」
「じゃあ、これから愛を育めばいいんじゃない?」
「他に…好きな人がいる」
「え!!」
し、知らなかった…
一緒に旅をして3年、苦楽を共にしてきた仲間だけど、そんな好きな人がいる素振りなんて見たことがない。
いったい誰だろう?
一番有力なのがシャルナだ。
同性でも惚れる可愛さを持っているし、鬼の様に強い。
いや、待てよ、途中で出会った妖精王の娘フラワー姫かもしれない。
あそこで二人かなりいい雰囲気だったし、はたまた幼なじみのレベッカかも…
よくよく考えてみるとゼロってモテるんだよねー勇者気質でみんなを助ける事を一番に考えるし、リーダーシップもあって、ルックスもそこそこいい。
私が黙々と考えているとワインがグツグツと煮えたぎっていた。
「…マコ、沸騰ワインになってる」
「おっと!」
私は慌てて温めるのをやめて、カップにホットワインを移した。
もくもくと立ち昇る湯気が熱さを物語る。
「どうぞ」
「これ飲んだら確実に口の中やけどするけど!」
「はは、少し冷ましてから飲んでね」
近くのテーブルにカップを二つ置いて私はソファに腰をかけた。
「じゃあ、ゼロはお姫様と結婚せずにその人の元に行くの?」
「あーうん、でも片思いだから上手くいかないかな」
「片思い!え、だれだれ?もう気になって眠れない!」
寝るけどね。
「マコだけには絶対言わない。」
「えー、一緒に旅をした仲間じゃない~」
「一緒に旅をした仲間だから。家族みたいなものだろ?俺達」
少し照れているゼロの言葉に私は言葉を返すことが出来なかった。
そう、私たちは生死を託し合った家族みたいなものだ。
お互いを助け合い、お互いの幸せを願い、同じ目標に向かって突き進んだ仲間だ。
「ゼロ…きっとその人と上手くいくよ!うん、ゼロがいい奴だって私が保証する」
「マコに保証もらってもなぁーせめてレケの保証が欲しいよ」
苦笑いを浮かべるゼロに私は口を尖らせた。
ドンドン
そんな私達の会話を遮るように扉をノックする音が聞こえた。
私は扉を見て今度は誰かなと考えていると、ゼロは嫌な予感がするのか顔色を曇らせる。
私も本当は出たくないが、無視をするわけにはいかず、仕方がないと扉に向かいすこーし扉を開けて覗き込むと予想通り、そこには頬を赤くしたアリス姫が立っていた。
「ご、ごきげんよう、アリス姫」
「ごきげんよう、マコさま。夜分遅くに失礼致します。ゼロさまがお越しになっておりますでしょうか?」
物静かだが強い意思を感じる瞳で私をまっすぐ見つめるアリス姫に私は気迫負けして顔を引き攣らせる。
ど、どうしよう…ここは正直にいると言うべきか…
それともいませんと嘘をつくべきか…
薄く透き通るネグリジェにガウンを羽織ってゼロを探し回っているのだろう。
寒くて頬が赤くなり、きっと手足も冷たくなっている。
そんな健気で一生懸命な彼女を目の前にして、私は嘘をつくことが出来なかった。
「寒いでしょう?さ、中に入って。丁度ホットワインを入れた所なの。中にゼロもいるから」
熱湯から少し冷めて丁度飲めるぐらいになっているであろう。
私の言葉にアリス姫は一瞬泣きそうな顔をした。
しかし、そこはグッと我慢して部屋の中に入ると何故かゼロの姿が見当たらない。
まさか、また逃げたのか?
ベランダを見るが鍵がかかっている状態なので、外には出ていないようだ。
「あの、ゼロさまは…」
「うーん、どこに隠れたのか…」
私の部屋は扉から入ってすぐに応接兼リビングがあり、隣に無駄に大きな寝室とシャワーやサニタリールームがある。
リビング横に小さな炊事場も付いていてこの部屋で普通に生活できるゲストルームだ。
隠れる場所は寝室かクローゼット位か。
「ゼロさま、そこまでわたくしをお嫌いなのでしょうか」
「いやー嫌ってはなかったけど…」
「…思い人がいらっしゃる事は聞いております。でも、わたしく、どうしてもゼロさまを振り向かせたくて」
目に涙を溜めて胸に手を当て小さく震えだすアリス姫に私は可哀想だと同情した。
健気だ…健気すぎる。
ゼロも逃げずに真正面から気持ちに応えてあげればいいのにと思い私はゼロを探しに行った。
寝室に入ると私の布団にゼロの寝間着らしい服が脱ぎ捨てられ、何故かゼロはシャワー室に入ってシャワーを浴びている。
やられた…
シャワー浴びている間はゼロを呼び出せないじゃないか。
そこまでして、アリス姫から逃げたいのか…ゼロよ。
私は口をぽかんとあけて呆れていると、アリス姫がズカズカとシャワー室に向かい扉を勢いよく開けた。
「ゼロさま!逃げないで下さい」
なんと潔く男らしい…しかし、アリス姫よ、その選択は間違っている。
シャワーを浴びていたゼロは驚き全裸で固まった。
まさか開けて来るとは思ってなかったのだろう。
乙女が見てはいけない部分もしっかり見えているぞ…
私は視線を天井に向け、この先どうしたものかと考えているとアリス姫の悲鳴が城中に響いた。
その後はちょっとした騒ぎになり、護衛兵が私の部屋に押し寄せ、大臣や王妃様、シャルナとレケまでやってきて事情をそれはもうゆっくりと説明させて頂き、アリス姫とゼロとなぜか私まで頭を皆様に下げる事になった。
騒ぎが落ち着き、アリス姫は王妃様に連行され、ゼロも半強制的に自室の部屋に帰らされた。
そして、部屋に何故かレケが残っている。
「あ、あのう」
レケは不機嫌とばかりに前髪をかき上げ私を睨んでいる。
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