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じゅうよん

ドラゴン族の村にたどり着いたのは5日後だった。

予想はしていたが村は荒れ果て建物は無惨に壊されて誰一人としていなかった。

村の所々血痕がついており、私とオランは顔を歪める。


「なんてことを…」

「…一旦街に戻ろう。もしかしたら、生き残りがいるかもしれない」


オランの言葉に私は頷き一つ前の街に戻り情報をあつめることにした。

一つ前の街はドルガナという街で、鉱石など資源が豊富な土地で大きく栄えていた。

今は魔王のせいで物流が滞り路頭に迷う人々が多く、少し活気はないが今の世界ではまともな方だった。


「さすが、ライデン家が統括している地区なだけありますね」

「そうだね」


以前旅でドラゴンの力を借りようと訪ねた時は、ライデン家は非協力的だった。

ドラゴン族とライデン家は折り合いが悪く不仲だったから仕方ない。

街で情報収集の場所として一番効率が良いのは酒場だ。

私とオランはフード付きのマントを被り、酒場で聞いてみる事にした。

お酒の席では饒舌になり、聞き方次第で色々な事を教えてくれるとレケから学んでいたので、私は教えてくれそうな人を探しているといつの間にかオランがひとりの酔っぱらいに絡まれていた。


「よー小さい兄ちゃん、席でも探しているのか?ここどうよ!」

「あ、はぁ…」


肩を掴まれグイッと空いてる席に座らされたオランは少し戸惑いながら状況を伺っている。


「何飲むか?ジャイガかノルーウか?」


両方とも中々アルコール度が高いお酒だが、オランはまだ成人になっていないのでお酒を飲ませるわけにはいかなかった。

私は慌ててオランの元に戻り、近くにあった椅子を引っ張りオランの隣に座る。


「お、俺がジャイガを飲む。弟は病気でお酒を禁止されているんだ」


少し低めの声を意識して私が話すと酔っぱらった男は眉を上げて連れが居たのかと少し残念そうな顔をしてジャイガとティと言うお茶を注文してくれた。


「なんだ?二人ともそんなむさ苦しい格好して、どこから来たんだ?」

「北の方から逃げて来たんだ、その…死ぬ前に一度でいいから弟がドラゴンに逢いたいというから」


レケからお酒の席で同情してもらえるエピソードを添えて聞きたい情報を聞くと大抵の人は教えてくれると言っていた。

オランは私をちらっとみて「元気ですよ俺」という顔をしたが酔っぱらいの男は瞳をウルウルさせて私の肩をバシバシと叩いた。


「そうか…そんなにひどい病気を…弟の為に…ドラゴンか…先日魔族にドラゴン村が襲われてしまってなーお前たちも運が悪い。生き残りは皆ライデン家が保護しているから、そう簡単には逢えないぞ」

「ライデン家が?」

「ああ、魔族が襲って来た時もライデン家が兵を送り出して魔族たちを討伐したって話だ」


あの不仲なライデン家が…私がいない10年間に仲直りでもしたのだろうか?

そうこうしていると私の目の前にジャイガがジョッキでドンっと置かれオランの前にティが置かれた。


「まー飲め。これは俺の奢りだ」

「…おぅ…ありがとう…」


これは絶対飲まないといけないという雰囲気の中、私は我慢してグビグビっとジャイガを飲んだ。

さすがに空腹にお酒を入れると胃がシクシクとなり、アルコールが苦手な私はまるで苦い薬を無理やり飲んでいるように苦しかった。

ジョッキ一杯を飲み終えると頭がフワフワして思考力が低下した。

酔っぱらいの男は私の次の飲み物を注文しようとしているのを察して、オランはわざとらしく咳を出した。


「ゴホゴホ、兄さん…宿に戻ろう」

「おー大丈夫か?ほれ、弟が苦しそうだ、宿に行って休んでやれ」


私はオランに連れられて酒場を出るとフラフラしながら歩いて噴水の淵に腰を掛けた。


「ロイ、大丈夫?」

「あーーーーーぅん。ジャイガきつっ…」

「飲めないんだったら飲まなくていいのに…」


うん、まーそうなんだけど、これは私の経験上いっしょにお酒を飲まない相手にはあまり心を開いてくれないような気がして…情報教えてくれるのだから、お酒の一杯や二杯付き合うのは礼儀だと思う。

ただ、酔っぱらった私のお荷物率はかなり上がるので今日はもう宿で休むことにになった。


次の日、前日のジャイガのせいか頭が重たい。

昨日の情報からとりあえずライデン家を訪ねる事にした。

正面から行ってドラゴン族に逢わせてもらえるとは限らないし、協力してもらえるとも思えないが、もしからしたら知り合いのドラゴンがいるかもしれないと期待をこめていた。

しかし、思った以上の厳重な警戒状態らしく案の定、門前払いをくらった。


「…困りましたね」

「うむー」


ライデン家の門の前でどうしたものかと悩んでいると一枚の張り紙に目が止まる。

『家庭教師募集ーライデン家ー』

おや、選考日は今日の午後と選考会場ライデン屋敷と書いてある。

この家庭教師に応募してライデン家に入れるのではと思った。

午後になりオランには宿で待ってもらい、私は家庭教師の選考のため屋敷の中に入る事に成功した。

待合室に入ると30人ぐらいの応募者が集まっており、男女比3:7といった感じだ。

私も身なりをそれっぽくキチンとして、いかにも家庭教師です!とアピールするためにだてメガネまでかけ変装して家庭教師に成りきっていた。

ちょっと潜入捜査スパイみたいでテンションがあがった。

さて、ドラゴン族はどこで保護されているのかと窓から外を見回しても数人の警備兵が見えて、ドラゴン族っぽい人はいない。

まさか一緒に屋敷で暮らしている?

そもそもこの家庭教師は誰のための家庭教師だろうか?

ふと疑問に思っていると年配の執事の様なおじいさんが部屋に入って来た。


「この度は家庭教師の選考にお集まり下さいまして、誠にありがとうございます。執事のシンバルと申します。まずは個人面談にてお話をさせて頂きたいと思いますので、呼ばれた方から順にこちらの部屋にお進みくださいませ」


そう言うと朱色の扉の中に入って行った。

それから一人ずつ呼ばれて中に入り、その扉から誰も出てこなかった。

もう一つ出口の扉があるのかな?

終盤になり私が呼ばれると私は少し緊張して部屋に入る。

すると、執事のシンバルさんが立っており、シンプルな部屋の真ん中に椅子がぽつんと置いてある。

私が戸惑っていると執事のおじいさんから椅子に座るように言われた。

これって…なにかありますよね?たぶん。


私が席に座ると目の前にあった大きな扉が開き、そこには緑色のドラゴンがこちらを睨んでいる。

その首に鉄の様な首輪と足かせが付けられ鎖で繋がれており、所々傷を負っている痛々しいドラゴンに私はギュッと唇を噛んだ。

いったいライデン家は何をしているのだ…


「…合格です。ロイさま、次は党首との面談があります、こちらの部屋にどうぞ」


私は怒りを抑えるのに必死になり無表情になって無意識だが執事のシンバルさんを睨んでいた。

しかし執事のシンバルさんは動じることなく次の部屋を案内するとそこには3人しかいなかった。


「では、党首との面談の前に簡単にお仕事内容をお知らせいたします。先ほどドラゴンをご覧になって頂きましたが、今回家庭教師をお願いしたいお方はドラゴンの姫様でございます。さっきの者とは違いますのであしからず。とてもデリケートで時にはドラゴンになって襲ってくるかもしれません。その辺りを考慮しましての給与とさせて頂きます」


ドラゴンの姫様?そんなのは10年前にはいなかったと思うけど…

それからまた一人づつ部屋に入り、今度は3人だったのですぐに出番が回って来た。

さっきのシンプルな部屋とは違い、高価そうな装飾品に飾られしっかりとした部屋に応接のソファなどが置いてあった。

その奥にデスクが置いてあり、濃い茶色の髪に赤い瞳の男が深く腰を掛けてこちらを見下ろす様に座っている。

鍛えているのだろうか、体が大きいが顔が小さくとても威圧感があるその男が間違いなくライデン家の主君だとわかった。


「レッド・ライデンだ。名は?」

「ロイです」

「…」

「…」


お互い目を見たまま変な沈黙が続く。


「何か質問はないのか」

「…いえ…」


さっき見たドラゴンはなぜあんなに傷だらけなのか、ほかのドラゴンはどこにいるのか、聞きたい事は山ほどある。

しかし、いま私が喋れは間違いなく喧嘩ごしになってしまう。

私は心を抑えていた。

ドラゴンがここにいる事が確認できただけでも収穫だ。


最後まで読んで頂きありがとうございます!

実は…ここで半分ぐらいです凹おかしいなー最初10話ぐらいで終わる予定だったのに(^^;27話プラスおまけまであります…なが!

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