じゅうに
リース…妖精族。身長130センチぐらい。羽があり自由に飛び回れる。変身変化を得意としており幼児体型の一族なので、ナイスバティのお姉さんに憧れている。魔法は主に回復と強化魔法が使える。
洞窟の中なのに、一部分天井に穴が空いており、そこから遠くに空が見える。
その穴から光が差し込み、辺りは芝生や植物が育ち幻想的な場所となっていた。
私とオランは一旦ゼロから離れて、そこで休憩をすることにした。
私は芝生に腰を下ろしてゴロンと仰向けに寝転がると、その横にオランが膝をたてて座り込む。
「…ロイ、はっきりさせておきたいのですが…」
「?」
「貴方は…あの、伝説の英雄さま…ですよね?」
そういえば、これまでオランにちゃんと説明をしていなかった。
「まあね」
「アガゼウスから聞いたことがあります。その…男なのか?女なのか?」
え、今さら?
ここに来るまで一緒に旅をしてきたのに、そこ気がつかないの?
私は顔を引きつらせてポリポリと頭をかいた。
「女だよ…因みにだけど、ロイは偽名でマコが本名」
「っ…そうか」
オランは頬を赤くして他にも聞きたい事があるらしいが聞きにくそうにしている。
「で、では、あのアガゼウスと恋人だったという話は本当ですか?」
「それは、ナイ!」
私は即座に否定した。
「え?し、しかし、腕の祈印は…父は絆の証だと」
「ん?父?!」
「え、あ…」
オランはしまったと口に手を当てた。
「ちょ、ちょっと待って、まさか、オラン、アガゼウスの子供なの?」
確かに髪色はアガゼウスと同じオレンジ系だが、身体はアガゼウス筋肉バカに比べて、オランは細身で比べられないし、目の雰囲気もだいぶ違う。
それに、どう見ても15、6歳ぐらいなので、私とアガゼウスが一緒に旅をしている時には生まれていたということ?
「その、母は俺が出来たことを隠していたんだ。だから、俺が父と話したことは数回しかない。」
少し悲しげな顔をしているオランだったが、私はアガゼウスの子供が目の前にいるということが、とても嬉しいと思った。
「そっか、通りで強い訳だ…」
「え?」
「いや、こっちの話。」
アガゼウスが魔王に捕まってさぞ、辛いだろう。
「父は英雄様と過ごした日々を楽しそうに話していた。心から信頼出来る仲間と出会えた事に感謝していると。自分を誇れると」
「…」
「だから…父の身に何があろうと、父は後悔はしていないと思います」
私は胸がぐっと熱くなった。
「英雄さまと深い絆で結ばれている証と言って腕のタトゥーを自慢していたので、てっきり…」
「あーうん、絆はあるよ、うん。でも、決して恋人とかではない!」
「そっか…」
オランはどことなくホッとしたような顔をした。
「しっかし…どうしようかなー、これから。ゼロを目覚めさせる方法もない、アガゼウスを助ける方法もない、魔王を倒す方法もない」
そして、もうひとりの異世界人も気になる…
私は遠くに見える空をジッと眺め、レケならどうするだろうと考えた。
『英雄さまは〃道しるべ〃です』
私がレケに「私って必要なくない?」と聞いたことがある。
戦えないし、足手まといになるし、勇者パーティーの中で完全にお荷物だった。
一緒に旅をする必要はないと思った時期もある。
そんな時、レケが私に言ったのだ。
『どこに向かって進めばいいか、わからなくなった時、マコの言葉でマコの行動で導かれる。マコの存在そのものが〃道しるべ〃なのです。英雄さま(マコ)が信じて進む道が希望に変わる。だから、必要ない訳がない』
その時の私は、全然意味わからんって思ってた。
だって、私の道しるべはレケだったから。
「信じて進む道か…」
私は静かに目を閉じ少し仮眠をとることにした。
※※
ガヤガヤと賑わう港町の市場に私は立っていた。
人々は活気にあふれ、色々な国の商人や商売しに集まっている市場、老若男女問わず沢山の人でにぎわっている。
「マコ、はぐれないで下さいよ」
レケが私の手を掴み、人を掻き分けドンドン進んで行く。
「この街に勇者が居るという情報が本当なら、絶対ここで合流しとかないとシャルナとアガゼウスが時間を稼いているのも限界ですよ」
先日訊ねた国の王に勇者を連れてくれば船を手配すると約束してもらったのだ。
ただし、期限は一月。
この先、船は必ず必要になるので、私とレケが勇者を急いで探している所だ。
「どこにいるんだろうね?」
辺りをキョロキョロ見回すと、ひと際賑わっている人だかりを見つける。
私はレケの手をグイッと引いてその人だかりに近づくと、若い男と鎧を付けた戦士とローブを被ったいかにも魔法使いといった三人がちょっと高い台に立って演説をしている。
「我は勇者だ!世界を救うために旅をしている!ともに戦おう!!」
勇者っぽい若者の声に、周りの人々は「おーーー!!」と雄たけびを上げていた。
その勇者一行の傍で箱を持ち、群衆に話しかけているメガネをかけた男が私にも話しかけてきた。
「私は勇者さまと共に戦う英雄です。勇者様の旅に必要な食事や物資を買うための支援をお願いできませんか?」
「ほう…」
「…」
勇者さまの英雄はこんな奴なのか…ってオイ、それって…
私が何か言おうとするとレケに止められた。
「勇者様と直接お話がしたいのですが」
「おやおや、それでは5万銭をご準備して頂ければ少しでしたらお話が出来ますよ」
5万銭!?宿に30回泊まれるじゃないか!!
レケは財布からお金を取り出しその男に差し出す。
「今は2万銭しか手持ちがなくて…お話しできるときに残りをお支払いします」
「仕方がないですねーわかりました。」
その男はお金を受け取り紙にスラスラと何かを書いている。
その紙をレケに渡すと内容は住所だった。
「今日の22時ぐらいにこちらにお越しください。では」
その男はまた別の群衆に話しかけ始めた。
「…レケ、怪しいよ」
「ですね。まず偽物でしょう」
「そんなぁーーー」
私が肩を落とすとレケは苦笑いをする。
「ですが、このままほっとくわけにはいかないでしょう。ちょっと懲らしめてあげましょう」
「ほう、レケ悪人の顔になってますよ」
「冗談を、わたしは善人です」
夜になり、指定された場所に向かうとまるでゴロツキのたまり場の様な所だった。
ガラの悪い人が数名入り口に座り込みこちらを睨んでいる。
レケはさっき貰った紙をペラっと見せるとゴロツキたちは入り口に進む道を開けた。
私とレケはその家の中に入ると偽物勇者一行が女性をはべらせ、そして偽物英雄の男がいた。
こいつらが本物だったら世界終わってるな…
「おっと話をする前に、お金が先ですよ」
「…失礼ですが、本当に勇者さまか確認をさせて下さい」
レケは私を前に突き出した。
ん?レケよ何を…
「この人どう思いますか?」
「なんだ青年、その女を差し出すというのか?んー残念ながら年増は興味がない。魔王を倒すには若い女からエネルギーをもらわなければいけないのだよ」
そう言い酒を飲みながら横にいた可愛い女性の髪を撫でだすが女性は動かずしかめっ面をしている。
年増は興味がないと言われ、べつにてめえに好かれようと微塵も思ってないので腹は立たないが、こいつは勇者じゃないと英雄の直感が確信した。
「そうですか…残念ですね」
「あ?」
ドゴーンっと大きな爆発音が鳴り響き私たちの居た部屋が大きく揺れる。
そういえば、ここに来るちょっと前にレケはひとりで出かけていたような…
続いて2発目の爆発音とともに部屋の壁が崩れた。
私は天井が落ちるのではと怯えていると、偽物勇者一行も同じことを思ったようで部屋から慌てて脱出をする。
すると外には群衆が集まっており、その先頭に金色の髪の青年が木刀を持って険しい表情で立っていた。
私はその青年から感じる何かに視線を外すことが出来なかった。
「レベッカを返してもらおう…」
「てめーいつかの…」
数人の群衆が勇者さま大丈夫ですかと話し掛けてきたので、偽物勇者一行はまだ勇者気取りで応対している。
そして三発目の爆発の時、私たちがいた部屋の奥の壁が吹き飛び、大量の貴金属や宝石などが巻き散らかされた。
「おやおや、勇者さまは金持ちのようだ」
わざとらしいレケの声に英雄と言っていた男は顔色が真っ青になり、散らかった貴金属や宝石を回収するために走り回る。
この状態に群衆も状況がおかしいことに何となく気が付いて、ざわめき出しさっき勇者の隣にいた女性が勇者を指さして言った。
「こいつは偽物勇者よ!!私達ひどい目にあわされたわ」
「な、なにを言っているんだ、証拠だってあるぞ、ほら」
そういうと偽勇者は一本の剣を掲げた。
派手な装飾で立派な剣はまるで聖剣風の剣だ。
「見よ!我は勇者の証、聖剣を持っているぞ」
群衆はおおっと声を上げるが私はその剣に何も感じない。
それよりも、金色の髪の青年が腰から掛けている小さな剣が気になって仕方がない。
私は吸い込まれるようにその青年に近づくと、その青年も私から目を離さなかった。
「…あなたは?」
「どうして、戦おうとしないの?」
「…」
私の言葉に青年は腰から下げている短剣を左手で掴み真剣に考えた。
最後まで読んで頂きありがとうございます(*^_^*)
湯船に浸かりながら小説書いてると急激に眠気が襲ってきてスマホ落としかけました…まじで危ないっす!!(;・∀・)