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じゅういち

寒い(;・∀・)

体が宙に浮く感覚はあまり好きではない。

自分の自由がきかず、重力に任せるだけって…なすすべ無しって感じだ。

この体感は6回目ぐらいだろうか。

バフン!

エアークッションのような所に落とされ、私とオランはもふもふに包まれていた。

辺りは上の大人な店とは違い明るく天井の高くて甘い良い香りがする大きな部屋だ。


「な…なんなのですかこれは…」


突然のドッキリに呆然としているオランに私は初めてこれにひっかかった遠い日を思い出す。

こんなドッキリを仕掛ける知り合いは一人しかいない。


「いつも思うんだけど、普通に招待してくれればいいのに」

「ふふ、これでも気を利かせてあげたのよ。感謝しなさい」


さっきのナイスバディの女性が両手を腰に当ててふんぞり返り威張っている。

私はもそもそとクッションから抜け出し、彼女の前に立った。


「リース、男漁りは止めるって言ってなかったっけ?」

「別にしてないわよ。ただ、異世界のくさーい臭いがしたから、まさかと思って来てみれば…」


ナイスバディの女性はみるみると子供の様な姿になり、尖った耳が特徴の全体的に淡いグリーン色で背中に葉っぱの羽根が生えている姿になった。

目を少しウルウルさせている彼女はフラワーの妖精一族だ。

以前、魔王討伐のための旅をしていた時、村中の男が失踪する事件が起こった。

その犯人はリースで、男たちを誘惑して奴隷にし、魔族に渡していた。

まぁその時は魔族にフラワー姫を人質に取られていたので仕方なくといった感じだった。

結局、私を含む勇者一行にフラワー姫が救出されて私たちの協力者となったのだけど。


「元の世界に帰ったはずじゃなかったの!」

「色々あってねー。リースがいるって事はフラワー姫も?」

「当たり前でしょう。ゼロの命を繋いでいるのは姫様だもの」

「やっぱり…ありがとう」

「な!!マコが私にお礼だなんて…世界が終わってしまうわ!」

「いや、普通にお礼言うし。」


やっとの事でもふもふクッションから抜け出したオランが私の元にたどり着くと、リースを見て目を輝かせた。


「まさか!妖精族ですか!」


この世界で妖精族は物凄く珍しい、例えるなら白いカエルぐらい。

出会えたら幸せになれるという迷信まであるぐらいだ。

私は過去何度も出会っているが未だに本当と幸せを手に入れてない気がするのでガセ情報だな。


「可愛いですね」

「な!ふ、ふん!!」


リースはオランに褒められ普通に照れて顔を赤くした。

そして、羽ばたかして、空に飛びあがる。

部屋には太陽の光が入るようになっており、沢山の木々と緑が植えられていた。


「貴方たち、尾行されたままゼロの所に案内出来ないから、わざわざここに連れて来たのよ」

「え、尾行?」


つけられていたなんて気が付かなかった。

魔物がいればすぐにわかると思うのに…まさか…


「人間に?」

「…バカな人間だっているわ。魔族側にいれば助かると思っている愚かな…」

「…」


同じ人間なのに…私は気分が沈み落ち込むとリースは空から花のシャワーを降らせてくれた。


「でも、あんたみたいに自分の世界じゃないのに救おうとする奴もいるからね。」

「ふふ、褒めても何もお菓子持ってないよ」

「ち!」


リースはフラワー姫とゼロのもとに案内をしてくれた。

部屋から洞窟に繋がり、普通では辿り着けないよう細工がされており、どんどんと深部に進む。


青白い空間に湧き水の溜め池ができ、その中央に植物が映えている陸地がある。

花が咲き、蝶が舞い、生命を感じる空間にベッドがあり、その横に白いドレスを纏った美しい妖精が椅子に座っていた。

彼女とベッドは仄かに光り、温かさを感じる。


「フラワー姫」


私の声に気がつきフラワー姫はゆっくり立ち上がると右手を軽く振る。

すると、水の中から大きな水草が現れ梯子を作ったので、私達はそれを渡って池の中の陸地にたどり着いた。

フラワー姫は私の方に駆け出しぎゅっと抱きついてきた。


「おかええりなさい。マコ…」

「フラワー姫…ただいま。そして、ゼロの事ありがとう」


フラワー姫はリースよりは背が少し高いがやはり少女といった感じで、ピンクのストレートな長い髪とグリーンの瞳がとても美しい。

こんな小さい身体でよくゼロを守り抜いてくれたと、私は感謝で一杯だった。


「でも…でも、ゼロは目を覚まさないの。どれだけ、生命のエネルギーを与えても、祈りを捧げても。もう、9年眠り続けているわ」


私はフラワー姫の肩に手を置いて体を少し離して、ゼロの眠るベットに向かった。

眠っているゼロは、まるで蝋人形のように美しい顔で眠っている。

呼吸はしているようで胸を小さく上下しているが、ただそれだけだ。


「ゼロ…起きて。私、戻ってきたよ」


私が話しかけても勿論反応はない。

もし、わたしがあの時元の世界に帰らなかったら、ゼロはこんなことにならなかったのだろうか?

過ぎた事を後悔しても、仕方がない事はわかっている。

ただ、動かず眠っている戦友に自分は何ができるのか…


「勇者様ですね」


オランの言葉に我に返る。


「うん。私が会ったら、もしかしたら目が覚めるかもって、ちょっとだけ期待したんだけど…」

「魔王との戦闘で瀕死の重症をおっていたわ。なんとか勇者を逃がす為にアガゼウスが魔王の元に囚われたらしいの」

「…アガゼウスは…生きているの?」


フラワー姫は悲しい表情を浮かべて


「わからないわ。魔王がレケの体に入ってからは、以前の魔王とは違う感じがするの」

「どういうこと?」

「…戦略的というか、計画的というか。恐らくレケの知識を吸収したのではないかと」

「そんな…では、前の魔王よりも強くなっているということですか?」


オランが眉間にシワを寄せてフラワー姫に問いかけると、フラワー姫はこくりと頷いた。


「それに、もうひとつ気になる事があるわ」


空を飛んでいるリースがわたしの前に着地して、真剣な顔をして顎に手をあて考えこむ。


「…異世界の匂いがもうひとつするの。極たまにだけど」

「え?じゃ、異世界のから来た人がまだいるってこと?」

「はっきりとはわからないわ。でも、その可能性はあると思う。ただ、現れたり、消えたりするの…」


わからない事だらけだ。

とりあえず、私とオランは一晩ここに居て今後どうするかを考える事になった。





最後まで読んで頂きありがとうございます(*^^*)

過去の一回目の魔王討伐の旅での出来事をオマケとかで書けたらなーと思います(^^;

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