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「悪魔殺しの花嫁」

学院を卒業後、“着ぐるみーズが人間化したのであの悪魔さんがどうなっているのか確かめよう!”

という名目の本当のところは求婚ラッシュでビッチの汚名を着せられそうな現状から逃げるため、


「なんでわたしまで!!アンタ一人ですればいいでしょう?!」


ルルと一緒に悪魔召喚の儀式を再びやってみた。


「待っていたぞ我が花嫁」


「ルルの婚約者って悪魔さんだったの?!」


そしたら儀式が終わる前に大分食い気味で悪魔さんが現れた。


「違うわよ!視線がバッチリあんたを見てるじゃない!むしろあんただけをガン見してるじゃないの!」


「ようやく我が想いに応えてくれるのだな。さあ、手をとるがいい。共に逝こうぞ、魔の国へ」


「なんかマズイの呼んじゃった気がする?!こういうのなんていうんだっけ?!勘助?!」


勝手に両想いってことにされてる気がするよルル!!

外見はちゃんと悪魔さんも普通の人間イケメン…悪魔だから人間じゃなくて普通のイケメン悪魔?それともイケメン人間風悪魔?になってるけど。


「そんな用語知らないわよ!着ぐるみが脱げてるのはわかったからさっさとクーリングオフしなさい!」


はいルルお母さん!


「すみませんクーリングオ」


「クーリングオフは一度しか適用されぬ。」


「どうしようルル!!悪魔さんがクーリングオフの制度を学んじゃってる!!」


「キャンセル料払ってドタキャンよ!」


「どうした、我が花嫁。そなたの望み何でも叶えてやろう。」


「じゃあ帰ってください!今すぐ!!」


「それは聞けぬ。」


「何にも叶えてくれない!!」


悪魔さんはイケメンだけど、確かに人間っぽいイケメンだけど!色気も半端なくてキース先生の上をいくほどの色気駄々漏れイケメンだけど!!黒い羽と尻尾ととんがった耳と八重歯が悪魔なイケメンだけどーっ!顔が人間なだけにコスプレして本気で自分を悪魔だと思い込んでる痛い人みたいでいたたまれないというか!


「ごめんなさい!わたし交際0日婚は無理なんです!」


しかもわたしなかなか面倒くさい女でプロポーズはやっぱりロマンチックに記念になるような素敵な場所とセリフでしてほしい派なんです!いきなり「我が花嫁」とか言われたら小説ではよくてもリアルでは痛すぎてちょっと無理ですごめんなさい!あと自分のこと「我」とか言う人も痛すぎてドン引きなんです!


「……………振り方がエグい……」


「え?」


呟くような小さなルルの声に、後ろに立っていたルルを振り向くと

何故だかルルは恐ろしいものでも見たかのような顔でわたしを凝視していた。


「いや……それ………灰になってる…」


「灰?…ってきゃぁぁぁぁぁぁあああああああ!!!」


大変!

悪魔さんが!

悪魔さんの身体がどんどん灰になって崩れ落ちていってる!!


「どどどどどどうしようルル?!」


わたし悪魔さんを殺しちゃった?!なんで?!わたし殺してないのに!冤罪!!


「いやまぁ…別にいいんじゃないの?悪魔だし……」


「でもわたし“悪魔殺しのユーリア”とか呼ばれるの嫌だよ!」


焦るわたしとは対照的に、ルルは疲れた様子ながらも冷静に突っ込んでくる。


「誰が呼ぶのよそんな中2病な異名を」


そうか!わたしが悪魔さんを殺しちゃった現場に居合わせたのはルル一人。ルルさえ黙っててくれればわたしの罪は永遠に闇の中!やったね時効まで逃げ切れる!時効とかあるのかどうかわからないけど!


「悪魔のくせにメンタル激弱…」


「プロポーズを断っただけなのに…」


ルルとの掛け合いを楽しんでいる間にも悪魔さんの身体はどんどんとさらさら崩れさっていく。

あとはイケメンなお顔を残すばかりだ。罪悪感?いや、こういうのを見ると人間じゃない実感のがすごくて、罪悪感を感じる云々の前に呆然としちゃうというかなんというか。見ちゃう。じっくり見ちゃう。


「心をこれ以上ないってくらいえぐった上で振ってたけどね」


「悪魔さんにも心が……」


ルルと2人、現実感のないどこかふわふわした気分で目の前の灰…じゃなくて悪魔さんを見つめていると

悪魔さんの全てが灰になるぎりぎりのところで


「ごめんね、お嬢さん方。相方が迷惑かけて。回収していくから忘れてねー。てか安易に悪魔を呼び出しちゃ駄目だよー。次から気をつけてねー。」


と。

やけに明るい、軽い感じの口調で悪魔さんの相方を名乗る平凡顔の悪魔さんが現れ


全ての灰(イタイ悪魔さん)を回収して消えていった。


「……………死んだのかな?」


「悪魔は死なないでしょ。」


きっと魔界で再生させるんじゃない?知らないけど。

と、興味なさげなルルの投げやりな推測にわたしも頷いた。

なんか、あの悪魔さんって立ち直り早そうな予感がする。危なさそうだから召喚するのはもうやめておこう。自衛大事。






その後、ルルがわたしの後方を見ながら


「ストーカーってさ、ちょっとはそれに気づいてもらえないとむなしいだけよね」


時々そんなことを言うようになったこととは



多分また別の話。

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