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第4話「青着ぐるみとピンク着ぐるみのキャットファイト」

シルヴィ様の恋愛相談にのってから、3日。


シルヴィ様は翌日にでもマーシャル様に紹介してくれるって言っていたけれど音沙汰なしだ。

翌日は姿を見かけたけど授業には出席していなかったし昨日からは姿も見ていない。殿下達との話し合いに忙しいのだろうか?


「今日は殿下とシルヴィ様があの子爵令嬢に侍っている姿を見かけませんわね。」


「そういえば…」


最近は毎日のようにルル嬢に求愛するショーを見せつけられてたのに。

とはいえ今日もルル嬢の周りは赤と緑色で賑やかだ。


「そういう日もあるのでしょう」


もしや話し合った結果ルル嬢と距離を置こうということになったのかな?とちらりと思うけど

単に話し合いの真っ最中なのかもしれない。

一日や二日で終わる話でもなさそうだ。

レイチェル様は頬に手を当てて首をかしげ、「そうかしら?」と納得いかない様子だけど。わたしがシルヴィ様に相談を受けて話し合え、と言ったことは内緒だ。シルヴィ様にくれぐれも黙っているようにと釘をさされている。


「子爵令嬢はエイレーン様を探しているようでしたわ」


「いつもエイレーン様を怖がってましたよね?」


それなのに自分からエイレーン様を探すの?

勇気あるわぁ。


「ええ…殿方の前とは別人のような怖いお顔をされて……」


シルヴィ様達がいないことにエイレーン様が関わっていると思ったのだろうか?


「何事もないといいのですが……」


ええ~

そんなこと言われたら気になるじゃない!少なくともシルヴィ様がいない原因はエイレーン様じゃないし、わたしだし。ということはわたしにも0.01パーセントくらいは責任があるかもしれないし。

ルル嬢とエイレーン様が喧嘩になったら…

どうなるんだろう。


「…レイチェル様、実はわたくし、今朝から少し体調が思わしくないんですの。」


「まあ!大丈夫ですの?」


「ええ。少し眠ればすぐによくなると思いますわ。」


「保健室までご一緒しますわ」


「ありがとうございます、でも大丈夫ですわ。一人で行けますからレイチェル様は授業を受けてください。」


「そうですか…?」


レイチェル様、ごめんなさい。

本当は体調は悪くないんだけど…どうしても気になるの!


「無理はしないでくださいね」


「ありがとうございます」


レイチェル様にお礼を言って

体調がよくないふりをしながら

教室を出た。











エイレーン様の教室をそっと覗いてみたけれど、姿はなかった。

ルル嬢も教室にいない。

ということは、ルル嬢はエイレーン様を見つけて会っているのだろうか。


「空き教室か中庭…にはいなかった。」


空き教室を一つ一つ探すのは大変すぎる。


「ううーん、何でか気になるのよねえ」


今までルル嬢とエイレーン様が二人で話すってなかった展開だし。下手にショーの裏側を見ちゃったせいかな。見つけたところで覗き見するだけだし何もする気はないんだけど。


やっぱりやめようかな。野次馬根性出すより授業の方が大事だし、と

引き返そうとした時だった。


「話し声がする…」


それも女性の。しかもアニメ声。

非常にわかりやすくて助かります。

どうやら見つけたみたい。


忍び足で声のする方に近づく。校舎端の階段の下から声は聞こえてきた。


「ですから!わたくしは知らないと言っているでしょう?!」


「嘘よ!あなた以外に誰がいるって言うのよ!」


「知りませんわよ!ようやく殿下も目を覚まされたのではありませんか?」


「だからっ!あなたが2人に何か言ったんでしょう!」


「わたくしはいつも申し上げてることと同じことしか言っておりません!」


「ほらやっぱり言ってるんじゃない!!」


喧嘩してる?!

どうもルル嬢がエイレーン様に怒ってて、エイレーン様も言い返してる。まさしく女の戦い。わお…。

修羅場だ!

わたしは二人に気づかれないように階段の上の階からこっそり覗き込んだ。


どうする?!どうする!?

誰か呼んできたほうがいいのかな?それともこのまま見守ってる?ちなみにわたしが割って入るのはなしだ!


「あなたはみんなに愛されてるわたしが羨ましいんでしょう?!だからいつも意地悪ばっかり!」


「そのようなこと思っておりません!わたくしがいつも注意しているのはあなたが…」


「婚約者とはいっても勝手に決められた政略じゃない!皇子様でも好きな相手を選ぶ自由くらいあってもいいはずだわ!」


「っっあなたが!!あなたが殿下お一人に決めていればわたくしも何も申しませんわ!」


「みんながわたしを好きだからって僻んでるだけでしょ!」


「なんですって?!」


だんだんわたしも大胆になってきてすっかり身体を乗り出して見てるんだけど興奮してる二人は気づかない。


ヒートアップしてるよ!怖すぎる!!

どっちも女の子だけど着ぐるみだし身体大きいしその二体の喧嘩って思った以上の迫力だよ!絶対絶対割って入るなんて無理!……あ?!


「え…?」


ええええええーーーーー???


怒鳴りあってた二体の着ぐるみ…ルル嬢とエイレーン様のうち、

何故か急に、本当に急に見えたんだけど


「ルル様?!」


ルル嬢が階段下に向かって両手を広げて大ジャンプした。


………なんで??


え?なんで?

突然「わたしは空が飛べるはず!」とか思っちゃった?!


飛べてないよ?!飛べてないからね?!

あっそうか!着ぐるみ着てるから多少の衝撃も大丈夫なの?着ぐるみに守られて怪我しないってこと?


立ち尽くすエイレーン様。階下に落ちたルル嬢はゆらりと上半身を起こして顔をあげた。ピンクの毛糸が顔の大半を隠して大きすぎる眼だけがぎょろりと上目使いのその様はもはやホラーです!

エイレーン様の表情は階段上にいるわたしからは見えない。けど、ルル嬢のその顔はわたしにもはっきりと見えた。


「ひどい…ひどいですわ、エイレーン様……どうしてこんなことを…っっ」


台詞とは裏腹にばっちり顔は笑ってます。

本当に怖い。


「どうしてって…あなた…何をおっしゃってますの?」


「いくらなんでもあんまりですっ!こんな…階段から突き落とすなんて!」


………なんですと?!


「下手をしたら死んでもおかしくないのに…!」


…ピンピンして見えるよ?

でも見た目にはわからないだけで手首とかひねってるかもしれないからとにかく今すぐ保健室行ったらどうかな。

怖いから黙ってるけど。ここにわたしがいるって絶対絶対今知られたくない!消されそうな予感!


「あなたが勝手に落ちたんじゃないですのっっ」


ごもっとも。


「……ふふ、わたしがあなたに突き落とされたって言えば殿下たちはわたしを信じてくれるわ。」


罠だったのか!!


「あなた………なんておそろしいことを……」


手に汗握る展開っ

やっぱりこれもショーの練習だったのかな。

きっとそうだよね。リアルでこんなことする人なんているわけないし。こんなベッタベタな展開……


あれ??


なんかデジャブ。

記憶にひっかかるものがあるような…


そうよ、そもそも最初からこの着ぐるみ達のあれこれに見たことある話だって思ってたじゃない。

この階段落ちもあるあるのテンプレ…ってことは前世の記憶にあるんだわ。


………そうだ!!

思い出した!


これはあれよ!あれ!

いわゆる女性向け恋愛シミュレーションゲームのシナリオってやつ!

ということはルル嬢はヒロインでエイレーン様が悪役令嬢?

わお。

ぴったり!

しかもエイレーン様を罠に嵌めようとしてるということはルル嬢はエイレーン様にざまあされる系のヒロインね。なるほどなるほど。そっちかあ!そっちもテンプレだよね!

ルル嬢は皇子達にエイレーン様に突き落とされたと訴えて、怒った殿下達が卒業パーティで婚約破棄と断罪をして、エイレーン様が冤罪の証明とざまあをするのね。


わ。


見たい!


わくわくしてきた!


やっぱりこれはショーの練習てことでいいのかな?


「あれ?」


いつの間には2人ともいなくなってる。

練習終わったのかな。


…まあいいか。

本気の喧嘩じゃなかったみたいだし。


一応保健室に寄ってから教室に戻ろうかな。

本当に保健室に行きましたよってことで。


それにしてもルル嬢の飛び降りの演技はもっと練習した方がいいと思う。

わざとらしすぎたもの。もっと自然に、押されたように飛び込まなきゃ。ああ、でも舞台でやるんだからオーバーにわざとってわかる風にってことなのかな。なるほどねぇ。さすがキャラクターショー。熟知してらっしゃる。


本番はいつだろう。






この日はそれ以降、ルル嬢の姿もエイレーン様の姿も見ることはなく、


学院は普通の人間だけの平穏な一日を


いつもと変わらず過ごしたのだった。

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