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第13話「緑の着ぐるみに異議あり!」

「先生方、僕のことを忘れていませんか?僕は現場を見てました。エイレーン様がルルを突き落とすところを、はっきり見ました。ルルは嘘をついていません。」


緑の着ぐるみらしきボーイソプラノは堂々と嘘をついている。そのことを断言できるのはわたししかいない。


「あの…っ!発言をよろしいでしょうか?」


衝立の外の視線が一気に集まってくるのを感じて途端に緊張するけれど

それよりも興奮の方が大きかった。

着ぐるみの姿が見えないことによって取り払われた恐怖が、わたしの心も態度も大きくさせていたのだ。

気分は悪者を切って捨ててやる!「成・敗・!」である。

ちなみに発言の際、鼻をつまむのを忘れない。少しでも声を変えたい一心だ。いざやってみると変わっていない気もするけど気持ちの問題だ!


「わたくしもその現場を見ておりました。エイレーン様のおっしゃる通りです。サンチェ子爵令嬢が自分で飛び降りていました!」


ついでに緑の着ぐるみはいなかったと思うんだけどな!

見たっていうのはルル嬢を庇う嘘なんじゃないかな?


「………はあ!?あなた誰よ!大体なんでそんなところにいるのよ!」


「匿名希望です!!」


「こちらの方は、匿名希望のわたくしの冤罪を証明してくださる方ですわ。このように正体を隠しているのは、証言にしたことによって起こり得る不利益を避けるためです。」


ただ怖かっただけですけど!

これ以上着ぐるみーズと関わりたくないのでちょうどよかったです!わたしは善意の匿名希望ということでよろしくお願いします!


「先生方。このように名乗りもしない正体不明の人物の証言が信用に値すると思いますか?」


静かにわたしを否定してくれたミラ様。

さすがヤンデレ。言ってくれるじゃないか!だがその手には乗らん!わたしはここから出る気は一切ない!!


「リガール公爵令嬢の言う通り、証言人の安全を守るための措置なんだよ。それに、教師のわたし達は彼女を知っているから心配はいらない。充分、信頼に値する人物だよ。」


この声はカミュ先生!

素敵!お嫁さんにしてください!


「しかし」


「ミラくん、ここは裁きの場ではない。職員会議の場だ。」


そうだそうだ!

多少怪しくたっていいじゃないか!裁判でもあるまいし!


「では彼女の証言も聞いてみましょうか」


職員室が静かになる。


「まず、あなたは何故2人を見ていたのですか?」


「…好奇心です。サンチェ子爵令嬢がとても怖い顔をしてエイレーン様を探していると聞いて……お2人を探していたのです。」


「悪趣味だね。とても善意の証言者とは思えないけど。」


「そうよ!怖い顔って失礼だわ!」


「静かに。続けて。」


「はい。」


悪趣味なことは認めるし怖い顔してたのは紛れもない事実じゃないか!それに残念、前世庶民のわたしにはその程度の嫌味痛くも痒くもないわ!着ぐるみさえ見えなければ怖くもないもーん!


「わたくしがお2人を見つけられたのは口論している声が聞こえたからです。内容は、サンチェ子爵令嬢がエイレーン様に『あなたが2人に何か言ったんでしょう』と言ってエイレーン様がそれを否定していました。」


「嘘つかないでよ!あなたの姿なんて見なかったわ!」


「あなたはそれをどこから見ていたのですか?」


「階段の3階からです。お2人は2階にいました。わたくしは上から覗いていたのです。だからお2人が気づかなくても当然だと思います。」


「それで?その後どうなりましたか?」


「突然サンチェ子爵令嬢が両手を広げて1階に向かって大ジャンプしたんです。驚きました。」


「嘘よ!!エイレーン様に突き落とされたのよ!」


「飛び降りたサンチェ子爵令嬢は、上半身を起こすと髪に隠れた顔をあげて…ニヤリと笑っていました。エイレーン様はとても驚いて狼狽しているように見えました。」


あれは怖かった!

怖かったよおおおお!ホラーだったよ!


「はああああ???!!!あんた何言ってるの??!!」


ルル嬢、言葉が乱れてますよ。嘘がばれて動揺してるな?


「それから、サンチェ子爵令嬢がエイレーン様にどうして突き落としたのかと言って、エイレーン様が勝手に飛び降りたんじゃないかと言い返していました。」


「その通りですわ。わたくしは手も足も出していません。」


「足?」


「…何でもありませんわ。」


あ!エイレーン様!あのこと根に持ってます??


「その後、サンチェ子爵令嬢が自分がエイレーン様に突き落とされたと言えば殿下たちは自分を信じてくれると言って笑っていました。」


「そして2人は殿下にこのことを訴え、こうして会議にかけることになったわけですね。」


「はい。」


「……先生。さっきからおかしくないですか?彼女の言い分だけを信じているように聞こえますが。」


ヤンデレの反撃だ!


「そう聞こえたのなら申し訳ありません。ではミラくん。君にも聞きましょう。君は何故その場にいて、どこで見ていたのですか?」


「っ僕は……ルルに会いたくて探していたのです。場所は…2人がいた2階です。」


「上にいたわたくしからミラ様のお姿は見えませんでした!あの位置から、ミラ様のような目立つ方がいらっしゃったのを見落とすとは思えません!」


着ぐるみをわたしが見落とすとでも?!否!有り得ぬ!!


「わたくしもミラ様をお見かけしていませんわ。それに、あの場にいたというのなら何故止めなかったのです?落ちていったルル様を助けにもいきませんでしたよね?最後まであなたは姿を現しませんでしたわ。」


「それは…っっ」


やーいやーい、嘘ついたってすぐばれるんだからね!

正直に言いなさいよ!

嘘はついちゃいけないって幼稚園で習ったでしょう?裁判で嘘の証言をしたらね、偽証罪なんだからね!


誰かの足音がして


「ミラ」


「レイ…?」


その声で、赤着ぐるみが緑着ぐるみに近寄っていったのだとわかった。


「匿名希望のあなた、あなたはその後、どうしましたか?」


そう聞いてきたのは先生の誰か。

声から想像するに、この先生もわたしにとってのイケメンそう!


「わたくしは保健室に行きました。友人に気分が悪いと言って抜け出したので……」


「ええ。彼女は確かにあの日、保健室に来ています。記録にも残っていますのでそのことは教師としてわたしが保障しますよ。」


カミュ先生、生徒との恋愛についてどうお考えですか?

その前に独身ですか?!


「反対に、サンチェ子爵令嬢は来ませんでしたが怪我はなかったようですね。」


「そ、それは…っ」


「ミラ、もうやめるんだ。」


「そうだ、ミラ。お前が庇う価値のない女だ」


「レイ!!レイまでどうして……っ」


「ミラ…本当にサンチェ子爵令嬢のことを想うなら、素直に罪を認めさせるべきです。彼女の、今後の人生のために。」


「シルヴィ……」


「ミラ。わたし達はライバルじゃない、幼馴染の仲間だ。わたし達がお前を本気で案じていることを、どうかわかってくれないか?」


「アレク…殿、下……」


「戻って来い、ミラ。」


「わたし達はサンチェ子爵令嬢ではなくミラ、あなたが大事なのです。」


「まあ、あれだ。ルルへの気持ちと今回のことは関係ないだろう?ルルへの気持ちは置いといても、エイレーン嬢に罪を被せることはやめないか。ミラ、お前は本当に見たのか?」


どうやら気ぐるみーズが団結している模様です!

男着ぐるみ同士による友情の確認をしているようです!美しい友情にお涙ちょうだいの寸劇です!

これで緑着ぐるみの目も覚めるか?!


「みんな……僕は…僕、は………」


これは綺麗な幕引きの予感!


「ミラくん、ここは裁きの場ではない。例え君が恋心故に想い人を庇っていたとしても、罪に問われることはないし誰も君を責めないよ。」


「ミラ!!ミラだけはわたしの味方って言ってくれたわよね?!」


ルル嬢最後の足掻き!

緑着ぐるみどうする?!


「ルル……………ごめん………僕…僕は……………」


「ミラ!!!」


はい、チャックメイト(チェックメイト)!


「リガール公爵令嬢はサンチェ子爵令嬢を突き落としていない。そういうことでよろしいですか?」


「……………はい」


「ミラ!!」


勝訴!

勝訴です!

被告人の逆転無罪です!!!

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