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いきなりの変貌

本編スタートです。

日本で暮らす青年の平凡な毎日だったのですが・・・

ピチョン・・・ピチョン・・・ぴちょん・・・

ザザザザザザッ!





シン「・・・はぁ。」


成人を過ぎた青年・・・山吹シンは神社への階段を登りつつ、溜め息を吐いた。

物心つく前に両親が他界し、色んな所をたらい回し(まぁ本人は覚えていないのだが)。

その後に住んでいたのは教会だったが、中学卒業を機会に独り立ちして五・六年は経過。

派遣バイトに登録し、仕事内容は選り好みなどせず生活している。

・・・色んな仕事を学ぶために手広くやっていると言えば聞こえは良いが、無節操と言えばそれまでである。

桜が散った階段を踏みしめると、自身の結わえられた長い黒髪が動く。

それを鬱陶しくも感じながら、神社の開けた場所にたどり着いた。


シン「さてと、ちゃっちゃと済ませるか。」


そう呟くと、彼は後から来た人の邪魔にならぬよう、背負ってたリュックを広場の角に置いた。

本日の仕事はこの神社・・・と言っても廃社なのだけれど・・・の清掃。

広場の落ち葉や花弁をかき集め、ごみ袋に入れ終えたら階段下に持っていきトラックに詰め込むと言った単純作業。

地域ボランティアのようなもので、数人でやればそんなに時間はかからないのだが。


シン「しっかし・・・ここが廃社なぁ・・・」


正直何を祀ってたのか良く解らなかったしなぁ。

神社を見上げそんなことを呟く。

子供の頃に社がご開張した事があり、中を見学させてもらった事がある。

その際、神水が湧き出る泉だと神主が言っていたのだが。


シン「どう考えても“プール”だったんだよなぁ・・・」


思い出したのか冷や汗を流しつつ呟く。

通路に松明が灯され水面は鏡のようになっていたものの、形は正方形で、縁はコンクリート。

小学生になりたての子供は全員、学校のプールを小さくした物を想像した。


シン「しかも浅かったし。」


腕を動かし、その場を掃きながらも記憶を手繰り寄せる。

何故知ってるかと言えば、原因は当時のクラスメイトだ。

イタズラ半分でボールを投げ入れ、神主さんが叱った後ボールを取りに行った。

その際膝までの部分しか濡れていなかったのを見ていたのだ。

見た目は学校のプールだが、深さは市民プールの幼児用プールだと思ったのも無理はない。


シン「ま、もう関係ないか。」


そう思いつつ落ち葉を集める。

こうやって地域ボランティアで掃除はしているが、参拝にやって来る人などいないのだ。

神主をやっていた人物ももういないし、子供の遊び場になるのも時間の問題だろう。

子供が泉に落ちぬよう、社はしっかりと鍵がかかっているのだが。


しばらくして・・・同じく清掃していた人達が階段下で挨拶する。


男「お疲れ!」

シン「お疲れ様です。」

男「シンくん、今日は仕事ないんだろう?家まで送ろうか?」

シン「あ、いえお気遣いなく。リュックを広場に置きっぱなしですし。」


置き忘れていたのでやんわりと断り、ボランティアのお礼を受け取るとお疲れ様でしたと挨拶して階段をかけ上がった。

まさかあんなことがが起こるなど、思いもしないで・・・


シン「・・・・・・ん?」


ーーーひっく、ひっく。


リュックにお礼を入れて背負い、さあ帰ろうとした際に泣き声に気付く。

辺りを見回せば、大きな木の下でしゃがみこむ少女がいた。


シン『子供?そういや清掃中に遊んでる子供がいたなぁ・・・』


そんなことを思いつつ近寄って声をかける。


シン「お嬢ちゃん、どうしたんだ?」


泣いている少女に問いかけると、目の前の大きな木を指差した。

不思議に思いつつ見上げれば、枝に引っ掛かっている帽子が見えた。


シン「あー・・・風にでも飛ばされたのか?」


しかし参ったな・・・少女がこくりと頷いたのを確認し、そう思いながら頭をかく。

注連縄が巻かれていることから明らかに御神木、しかもこの木はシンが子供の頃から若葉を見たことがない枯れ木なのだ。

彼は勿論、子供が登るのも待ったがかかる。


シン「あ・・・」


隣に建っている社に駆け寄り、パンパンと柏手を打つ。


シン「すみません、社に登らせて下さい。御神木にある物を取ったらすぐ降りますので。」


そう拝むと立て掛けっぱなしの木造梯子を使い屋根に上がる。


シン「よっと。」


藁葺き屋根を伝い、足元に気をつけつつ神木に手を伸ばす。


シン「取れた!落とすぞ。」


帽子を手に取り下に落とせば、泣いていた少女が顔を輝かせてありがとうと言いながら舞って落ちる帽子にかけていった。

それを見て良かったなと思いつつ梯子の方へ向かおうとした。

・・・ここで想像して欲しい、ここは“随分前に廃社になった神社”だ。

藁葺き屋根の手入れなど誰もしないし、ましてや最後の手入れがいつだったのか解るはずもない。

どこかの屋根が腐っていても、仕方ない事なのだ。


シン「なっ!?」


バキッ!

嫌な音をたて社の中に引きずり込まれる。

腐った藁と屋根を踏み抜いた事は即座に理解出来た。

思わず足元を見れば、穴から入り込んだ光で輝く水面、神水の泉が見えた・・・が。

どぼぉんっ!!


シン「!がぼっ!!」


勢いよくそこに落ち、口に流れ込んできた液体に驚く。


シン『ふっ・・・深い!?』


両足にダメージを負うだけだと考えていたのが、その足は底に届かずに空を切った。

何とか水から顔を出そうとするが、服やリュックが水を吸い重石になりかけており、落ちて波打った水面が遠退いてく。


シン『つっ・・・冷たい!体が悴んで・・・』


子供の頃、神の泉はある洞窟から湧き出ていると聞いた記憶がある。

氷のような水のせいで、体が上手く動かずただ沈んでいく。

落ちた瞬間、神の水がまるで捕らえて離さぬと言うように動いて見えたのは気のせいではないだろう。


シン「ゴボッ・・・」


彼の口からごぼりと気泡が出ていき、水が体内に流れ込む。

その泡が光に照らされ、穴から見える御神木の花弁に見えたのが、その世界で意識が遠退きかけたシンが見た最後の光景だった・・・



パッ!!ガサササササッ!!


シン「!?ゲホゴホッ!!」


急に新鮮な空気が入り込み、木々の枝を掻き分け地面に落下する。

濡れた服や顔などに花弁が纏わり着いているが、彼には呼吸を整えるのが先だった。

はぁはぁと息を整え、側に落ちた眼鏡をかけ直すと、酸欠でふらついた体を起こす。

眼鏡を拾った際に感じた芝生の感触と、自身についた花弁で変だとは思ったが、信じたくはなかった。

遠くに見える建物は中世のヨーロッパ風、電柱や電線など見当たらない上に、体には七色に変わる花弁。

空には怪鳥に混じって列車や羽の生えた人、箒にまたがる者まで飛んでいた。

酸欠、落下による身体的疲労、状況把握による混乱。

トリプルコンボでキャパオーバーし、意識が遠退いてその場にぶっ倒れるのも無理は無かった・・・


善意からファンタジーな場所に飛ばされてしまった主人公。

一体今後どうなってしまうのか、楽しんで頂けると光栄です。



初めての作品ゆえ、誤字などがあればご指摘を。

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