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楔荘 序~七罪と戦争~  作者: 智額 護/作者 字
25/34

第二十三話 どうしたの、お菓子食べる? それともお酒?

 夏休みになりました、七穂です。皆さん、いかがお過ごしでしょうか。

 楔荘の住人が減りましたが、減った分二倍になってやってきました。

「ちゃおちゃおちゃおちゃおちゃお~~~!!」

「アランうっざ……」

 フラン君は座布団でアランさんを叩いた。

「Hello! Summerだねぇ! 今日はホラー映画のDVDを持ってきたよ!」

 オースティンさんがDVDを机に広げた。

「夏言うたら海や海! いや、肝試し……」

 アーサーさんが懐中電灯で顔を下から照らす。

「うるせえ! おめぇらうるせえ!」

 杏仁さんが湯のみを持ったまま怒鳴る。

 ……この通りです。各支部の皆さんが遊びに来てくれました。

――数時間後。

「ね~ひまだよぉ。……あ、ねぇねぇフラン、アルプスイチマンジャクやろ!」

「え~、アランとぉ?」

「ね~ぇ~やろぉよぉ~。ねぇ~!」

「うるさいなぁ! ……わかったよ……」

「わ~い! いっくよー。セッセーノ、ヨイヨイヨイ……」

―― 1時間後。

「近所のおばさんから野菜もらったんだけど、どう調理しよっ……えぇ!? まだアルプスやってたの!?」

 稔が驚きの余り手に持っていた袋を足の上に落とし、足を抱えて床にうずくまる。

「ゼー、ゼー、これ、意外と体力使……ウップ……」

「ぁ……ぁぁぁ……」

 アランさんとフラン君が苦しそうに横たわっている。

「いやもう止めよ!?」

「てか、アンタらいつまでウチにいる気? さっさと帰って」

 琉子ちゃんはなんだかご機嫌斜めです。

「えぇ~」

 アランさんは悔しそうに声を上げた。

「マジ迷惑」

「Oh……」

 オースティンさんは悲しそうに肩を落とす。

「ほら! 帰った帰った!」

「ほな、俺帰るな~」

 アーサーさんは嬉しそうに立ち上がる。

「マカロニコンビもよ!」

「琉子怖い……」

 フラン君は座布団を頭にかぶせて小さくなる。

 アランさんがヘラヘラ笑いながら、

「あんまり怒ってばかりだと、小じわ増え――」


「――あれ、アラン大佐、どうしたんですかその傷?」

「え? あぁ部下Aくんか。うん、ちょっとね……」

 アランは頬の大きな絆創膏をそっと撫でながら、死んだ目でウサギ小屋にエサを撒いていた。

「フラン大佐、どうかしましたか?」

「もぉやだ……お嬢怖すぎ……」

 組織で強いヤツ順

・怨たち七名とか

・琉子

・マーリンとかマカロニコンビ以外の各支部長。>>>>>>>>>>マカロニコンビ

 つまり、マカロニコンビはマカロニのようにもろく、弱いということ。

「うわぁぁぁん! たんこぶいたいよぉぉぉ!!」

「はいはい大人しくしろ。動いたら薬が塗れないだろうが」

 大泣きするアランにマーリンはため息をついた。


――――――。


――ピンポーン

 インターホンの音が楔荘に響く。

「はーい」

 玄関を開けると、もの凄い形相の外人さんの男の人がこちらを睨んで立っていた。

「あ、あぁぁ……あのぉ……」

 私は身を縮めて顔を見上げた。

「……おんまえはJapaneseか。なんら、ここは日本か」

「え……?」

「ボスはどこだ!?」

「ひぃぃぃぃ!!」

 急に怒鳴られた。

「んも~、うっさいでー。なんやねん……」

 私の後ろからアーサーさんが出てくる。

「お」

「あ」

 外人さんとアーサーさんの目が合う。

 すると、アーサーさんと外人さんは地面にうつぶせになり、いきなり腕相撲を始めた。

「久しぶりやないかアフリカ支部長エジプト担ジョー!」

「こっちこそ! 久しぶりにおんまえに会えてえがったけ! 文化研究委員会委員さんよぉ!」

 な、何なのこの人……。

 外人さんがアーサーさんの腕を一気に地面に叩きつける。

「かぁぁ!」

「わしの勝やぁ!」

「おっさん、あんま若ぁないんやから無理せんといてやぁ」

「こんなもん、序の口じゃけぇ」

 外人さんが歯をむき出して笑う。その歯は全部キンキラ金だった。

「……あ、七穂ちゃん。こんおっさんはアフリカ支部長のジョーや」

「お嬢ちゃん、さっきは驚かせちまったけぇ。ゆるしてぇや」

 ジョーさんは二カッと笑う。

「お、そうじゃけぇ。ボスに頼まれてぇ、エジプトのお菓子持てこい言われっとげ」

 ジョーさんがクシャクシャになった紙袋を差し出した。

「あ……ありがとうございます……」

「んじゃ、けぇるかぁ」

「え、もう!?」

「わしゃまだ仕事残っでんげぇ。てて棒になっけくんだいねびねび、夜更けまでめめこすっでパソコンにらめっこしぢゃ、あっだまふみづげっどぐれぇいだぐっで、もう、ねぶうのなんのごっだい、ふあぁぁ……んだ、口あぎすぎて、顎はずれっがおぼうげっちょ……」

「ジョー、なに言ってっかわからんわ。なまり過ぎやで~」

 えぇと……。

「つまり、仕事が終わらなくて残業ばっかで眠くてしょうがない、ってことけ?」

「んだ」

 一体どこの言葉を話してたんだろう……日本語のはず……。

 しばらくして、ジョーさんは帰って行った。

 紙袋の中を覗くと、

「お、バスブーサやん。これあっま甘いで」

 アーサーさんが紙袋の中を覗きながら言った。

「そうなんですか?」

「エジプトの伝統お菓子らしい。あんまようわからんが」

「ふ~ん」

「俺、チュロスしか知らんし」

 アーサーさんが緩く笑う。

 各支部の皆さんのおかげで、たくさんの世界のお菓子や料理やお酒を知ることができた。

「なんだか世界旅行にでも行った気分です」

「旅行?」

「皆さんのおかげですね。美味しいお菓子に、珍しいお酒。不思議な料理もたくさん食べました。なんかもう、今更留学とか海外旅行とか行く気になりませんね」

「そうか? 世界には案外知らないことだらけだったりするぞ」

 アーサーさんは元気に笑った。

「七穂、お前はもっと世界を見ろ! お前にはもっと見てもらいたいんだ。もっと知っててほしいんだ。だから、その……ガンバレ!」

 不器用ながらも、アーサーさんの言いたいことがなんとなくわかった気がした。

「そうですね。こんなところで終わった気になってちゃダメですね!」

「おう!」

 二人でグータッチをすると、思わず笑い合ってしまった。

 ところで、ジョーさんの日本語が大変なまってたけど、どこの方言なのかな……。

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