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楔荘 序~七罪と戦争~  作者: 智額 護/作者 字
16/34

第十四話 ニート

 もう少しで期末テストだ。だがさっぱりわからん。

 だから俺は、怨さん達の部屋に来た。

――コンコン

 ドアをノックする。

「……ん」

 ドアの奥から幽かに護さんの返事が聞こえた。そっとドアを開ける。 部屋の中は暗く、パソコンの画面の明かりが眩しい。部屋の明かりをつけると、

「にゃあ゛ぁぁぁぁぁ!!」

 護さんがイスと共に後ろに倒れた。

「いっつ……」

 後頭部を撫でながら起き上る。

「急に電気つけんな……」

 護さんは怪訝そうな顔でこちらを見た。

「あ……すいません、癖で」

「なんの用?」

「あの、勉強教えてほしいのですが……」

「え~ナニソレ寝ちゃいそう……」

「寝ないで!」

 横になろうとする護さんを起き上がらせる。

「や~あ~」

「お願いします! 何でもしますから! このテストで赤点取ったらマジで~!!」

 護さんが急に起き上がった。

「うおっ!?」

「今……なんでもって……言った……?」

「え? えぇ」

「なんでも……なんでもって……ふふふ」

「なな何考えてんですか!?」

「さあ、何でしょう?」

「怖い!」

 ぼちぼち勉強を開始する。

「ここはこの公式を……」

「なるほど!」

「漢字で大体わかるだろ……」

「えーそれは無理」

 一通り教えてもらい、ひと段落する。

「お疲れ」

「ふぅ~、これでテストもバッチしっスね!」

「そだねー。あ、アイス食べる?」

「ありがとうございます!」

 バニラのアイスキャンディーを渡される。

「いただきます!」

「ん……」

 アイスを食べながら雑談をする。

「――それでこの前、そいつが」

「へぇ~。……あ、アイス垂れそうだよ」

「えっ……」

 護さんの顔が近づいて、俺のアイスを舐めた。

「ちょ……!」

「ん?」

「人のアイス勝手に舐めないでくださいよ」

「男同士だろ。何もそんなに……あ」

「えっなに?」

「今のシチュエーション、今度の小説に使える……」

「こ、今度の小説って?」

「うん。BL」

「嫌だぁ~~!」

「おいこら逃げんな……」

 逃げようとする俺の服を護さんが引っ張った。

「どわっ!」

「わ……」

――ドタッ

「は……床ドン……なるほど、床ドンはこんな感じに起こるのか」

「へ? えっ??」

 何が起きたのかわからなかったが、護さんが俺の上に四つん這いになっているのはわかった。

「この次……なにしたい? チューする? それとも……」

――スパコーン!

 何かが護さんの頭を叩いた。

 よく見ると、護さんの向こう側にスリッパを握りしめている怨さんが見えた。

「護……!」

「あはは……ちょっと小説の取材を……」

――プツン

「あ~~~! ゲームセーブしてないのに! 何で電源切るの!」

「お前が稔にやましい事をするからだ!」

「だからってゲームは関係ないじゃん!」

「そうでもしないとお前は言うことを聞かないだろうが!」

「ゲームは関係ないじゃん!!」

「第一お前はろくに働きもせずゲームやら小説ばかりクドクド……!!」

「うるさい耳にタコができる。はっ……そのタコが怨を襲えば……!」

「聞いてるのかっ!?」

 護さんは正座させられ、説教が始まる。

「なになに、面白い事でもあるの?」

 嫌好が俺の肩に顎を乗せてきた。

「何も面白くないよ」

「……本当だ、面白くない」

 嫌好は不満げにため息をついた。

「幸せが逃げるよ」

 癖で注意してしまった。すると嫌好はいつもの涼しげな顔を向け、

「逃げないよ。ため息が出るような下らない呆れる毎日も楽しいから幸せ」

「どうしてそう思えるの?」

「何でだろうね。そう思えるようになった、ここに来てから」

 俺には理解できないや。

「遊んでるんじゃない、一応仕事だってしてる!」

 護さんが必死に言い訳をする。

「会計報告か? それじゃあ足りん」

 怨さんは護さんにタブレットを見せる。

「お前はやらなければならない仕事のたったこれしかやっていない」

「ブラックなんだよ……」

「これでも適切な仕事量だ! 組織内の平均値と同じ! わかるか!?」

「う~る~さ~い~! それ絶対平均値がブラックだよ! 俺は12時間寝ないと死ぬの~」

「寝過ぎだ!!」

 嫌好がそそくさとその場を離れようとする。

「どうしたの?」

「墓穴を掘りそうだから、今のうちに避難」

 あー、お前もか。

 怨さんのお説教は夕飯後も続いていた。

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