感覚の逆転
大変お待たせいたしました(汗)
音をたてないようにそっと近付いた京子は、少年の首を目掛けてナイフを一気に振り下ろした。
刃先は肉と血管を貫通し、骨を掠るのが感触として伝わってくる。
白目を剥いて絶命する少年を見た少女は当然逃げるが、幼い子供の足ではとてもじゃないが回避は不可能だ。
少女が石につまずいて転んだのを見て、京子は般若のような表情で少女に近寄り、首と背中を無慈悲に刺していく。
更には眼球を刺して穴を開け、少女の視界を奪う。
失明した少女は逃げようともがいているうちに出血多量で事切れ、京子は2人の死体を抱いて山へと戻った。
山へ戻ると、沙樹はパジャマのままでぐったりと横たわっていた。
立ったり座ったりの繰り返しがつらいのだろう。
京子の足音が聞こえても、こちらに尻を向けたまま動かない。
「岩下さん、狩ってきたわ」
「きょう、こ……ウウッ」
沙樹は上体を起こすと同時に口元を手で押さえ、呻き声と共に熱い液体を戻した。
粘膜が傷付いたのか、溢れ出る胃液の中には血が混じっている。
妊娠の影響で嗅覚が敏感になっているのだろう。
以前なら大好きだった血の香りも、今の彼女には一瞬でも嗅ぎたくない悪臭となっており、それが嘔吐の引き金となっていた。
「岩下さん、良かったらこれを使うといいわ。
それと、今は妊娠中でしょ。つらかったら無理しなくていいけど、せめてこれだけでも飲んだ方がいいと思うの」
京子は沙樹にゼリー飲料と厚手のタオルを手渡した。
それから15メートルほど離れた場所へ移動し、2体の死体を解体していく。
手慣れた作業をしている中、京子は頭を悩ませていた。
沙樹は妊娠中である以上、胎児のためにも栄養が必要となる。
しかし今の彼女の体はそう簡単に物を受け付けてくれそうにない。一体どうすればいいものか……。
本気で頭を回転させる事10分、京子の脳にあるアイデアが浮かんだ。




