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私だけのモノ  作者: 綾小路隼人
イタリア編

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自主

イタリアで逃亡生活を続けている中、沙樹は子供を腹に宿した。

妊娠による頭痛に苦しんでいる彼女を見て、京子はこれからの狩りに頭を抱えている。無理もなかった。

普段は丈夫で、体調を崩しているところを見た事がない沙樹がこんなにも顔を青くして、冷や汗を流して。

彼女の唇からは呻き声と共に胃液が時折漏れ、水を飲むのもやっとの状態だ。

これほど絶不調になった事は沙樹の人生の中では初めてだっただろう。


そして、狩りを頑張ってみると簡単に言ったものの、条件を守った上での狩りは京子には大変なものである。

今までは沙樹の協力があったから、効率よく狩りが出来てた上に条件をきちんと守れていた。

だが沙樹の体調が優れない以上、今は自力で狩るしかないのだ。

『杖に(すが)るとも人に(すが)るな』

この(ことわざ)が京子の脳裏を過った。


胎児の父親である男性は既に解体され、首から下のほとんどが塩漬けにされている。

これまで殺した男達の肉も少し残っているが、京子にはそれだけでは足りない。

不敵な笑みでナイフを手に取ると、軽い足取りで山を降りていった。



$ $ $ $ $



山を降りた京子は出来るだけ足音をたてずに、()()を慎重に探した。

目当ての食料は中肉中背の若い男性や子供の肉。

痩せ過ぎた人間は筋張ってて食べにくく、かといって太った人間だと脂が多くて胃もたれするからだ。


15分ほど探索を続けて川まで行くと、兄妹らしき2人の子供を見つけた。

近くに親がいるのではないかと思い、物陰に隠れて様子を見たがどうやら子供だけで来ているようだ。

見た感じでは小学校低学年ぐらいだろうか。

程よい肉付きに、隙のある雰囲気。

京子には格好のターゲットだった。


もう彼女には、子供達が『人間』ではなく『大きな肉の塊』に見えているだろう。

一度に肉が2つも手に入ると思うと喜びが京子の全身を通り抜け、狩りへのやる気がますます湧き上がった。

子供達が絶望の海へ突き落とされるのは、それから1分後の事である。

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