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私だけのモノ  作者: 綾小路隼人
イタリア編

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48/53

優雅な昼食

時刻は11時5分。

深く掘られた穴の中には数人分の内臓と骨と頭部が捨てられていて、数え切れないほどの蛆虫がウネウネと(うごめ)いている。

そんなおぞましい穴から青年の頭部を拾った京子は彼の脳を取り出し、食べやすい大きさに切っていた。

取り出すのが大変だからと普段は食べないのだが、わざわざ脳天を割って抜き取ったのだから、余程暇を持て余していたのだろう。


若さも相まって腹が空き始めた彼女は、脳に勢いよく齧り付き、その欠片を胃に流し込んだ。

豆腐やプリンのような食感に、甘美な血の香りが京子の食欲を刺激する。

初めて食した脳を続けて食べようとした矢先。


「え、それ食べるつもりなの!?」


唐突に聞こえた恐慌の声と共に、沙樹に腕を掴まれた。

持っていた脳が草の上に落ち、穴の中へ転がっていく。


「岩下さん?」

「知らないの? 同じ人間の体でも脳は食べない方がいいわよ。別に脅す訳じゃないけど、昔それで天国行きになった人がいるの」

「ふぇっ!?」

「だから首から上は食べずに捨ててるのよ」


沙樹は呆れたような表情を露骨に浮かべ、バラ色の唇から溜め息を漏らした。


「昨日狩った男の子の肉がまだあるから、それを焼くといいわ」


切断された少年の足を手に取ると、骨を抜き取って京子に渡した。

餅のように程良く潤った、白くて清楚な肉。

京子はそれを受け取ると、オリーブオイルを使って喜んで炒め始めた。

青々しい果実の香りと(ほの)かな血の香りが交差し、2人の肺の中を満たしていく。


肉の表面は油で輝いていて、口内へ運ぶと人肉特有の酸味がパッと広がった。

肉の酸味とオリーブオイルのマイルドさが彼女達の食を進め、空っぽだった京子の腹は徐々に満足していく。

たった一品の昼食を終えた2人は同時にふわっとあくびをし、やがて猫のように優雅に眠りについたのだった。

なぜ脳を食べるのが危険なのかは、自分で調べてください(微笑)

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