分解
少し短めです。
時刻は7時25分。
京子達は昨夜煮込んだ青年の肉と、彼の眼球を浮かべたミルクティーを口にしていた。
腹が少しずつ満たされていく中、沙樹の気持ちは複雑だった。
何しろ、夢の中で自分を殺した男なのだから。
それが記憶の中で再生されて心臓を鷲掴みされる感覚を覚えたが、京子の笑顔と、優しい味のミルクティーがそれを癒してくれた。
「岩下さん、どうかしたの?」
「別に。それよりこの肉、アルコールがよく抜けてるでしょう」
「ええ。眠いのにここまで加工できたなんて凄いわ」
確かに今彼女達が食している肉は、アルコールが抜けて食べやすくなっている。
元々酔いつぶれていた男の体だったとは思えない程だ。
まともに歩けなくなり、わずかな助けに縋ろうと沙樹に話しかけ、安心した瞬間に絞殺された時の彼はどんなに絶望した事だろうか。
その上内臓と骨と頭部を捨てられ、血を抜かれ、見るに堪えない姿に変わり果てている。
何とも悲惨な話だが、人肉を目当てにしている2人にはどうでも良かった。
「そういえば、塩漬けの方は進んだ?」
「明日か明後日には完成すると思うわ。それまではまた1人狩る事になりそうね」
「そっか……その時はあたしにやらせてくれる? しばらくやってなかったからワクワクするなぁ♪」
「いいけど、あたしが前に言った条件を踏まえた上でやって頂戴」
「分かった♪」
京子は嬉しそうに微笑んでミルクティーを啜った。
楽しみの一つが予定されたから、肉とミルクティーがますます美味に感じただろう。
それと同時に眼球が彼女の口内に入り、やがてそれは潰れて胃の中へ流れていった。




