熱き接吻
京子の身だしなみがだらしなくなっているのに対し、沙樹は随分と綺麗な身なりをしていた。
長く艶やかな黒髪、ピンク色のシンプルなピアス、シミひとつ無い純白のワンピース。
その美しさは、高校生には見えないほどの眩いものだった。
「ところで京子。あなたは私だけのモノだから、私だけを愛すると約束してくれる?」
「ふぇ?」
「他の人の事は見ない。他の人の事は考えない。他の人に話しかけない。
この3つの条件を絶対に守って頂戴。絶対にね」
沙樹は骨が付いたままの子供の腕にかぶりつきながら、自分だけを愛するよう京子に強要した。
腕の断面から流れる血が、沙樹の腕を伝ってフローリングの床に滴り落ちる。
その様は、まるで動物の死骸を貪り食うライオンのようだった。
差し詰め、京子はライオンに追いつめられたウサギといったところだろうか。
「私は、裏切られる事が誰よりも嫌いなの。もし裏切ったら……どうなるか分かってるわよね?」
沙樹は口周辺に付いた血をハンカチで拭うと、まだ少し血がこびり付いている手で京子の頬を撫でた。
そして…………。
___チュッ
唇から伝わってくる、柔らかい感触。
京子は自分が置かれている状況を必死に整理しようとしたが、それより先に沙樹は京子の唇に舌を入れた。
(こ、これはまさか!? い、岩下さんに……キスされてるの!?)
「んっ…ぁ…っふ、ぅ……」
「…はぁ……っ……ん……」
沙樹から唐突に仕掛けられた、京子への熱いキス。
やがてそれは段々と深くネットリとしたものへと変化し、今や2人は互いの唇を吸い合っていた。
それから数分して、沙樹は唇を離した。
「…は…ぁ……うぅ……」
「うふふ、良かったわ。あなたのその表情…」
彼女は舌なめずりをしながら小さく笑うと、愛おしげな声で囁いたのだった。