塩漬け
人肉を日持ちさせる方法を思い付いた沙樹は、殺したばかりの青年の服を全て剥ぎ取り、両腕と両足を切断して血を抜いた。
ピンク色の切り口からはドバドバと赤い液体が溢れ出し、魚が腐ったような異臭が辺りに広がる。
やがて血がほとんど出なくなると、次は買っておいた塩を深さ20センチの容器に敷き詰めた。
「これってもしかして……漬けるの?」
「その通りよ。こうした方が、少しでも保存がきくの」
切断した腕の肉を食べやすい大きさに切り刻み、容器に入れて塩を全体的に擦り込んでいく。
数十分漬けておく間に沙樹は青年の身体から骨と内臓を取り出し、予め深く掘っておいた穴に捨てた。
頭部と両腕両足が切り離され、身体の中身も取り除かれた彼はもう元の面影が無く、ただの肉の塊となっている。
桃ジュースを飲みながらその工程を見ていた京子は、目をキラキラさせて期待の表情を浮かべた。
「完成したら食べてみたいなぁ♪」
「もう少し元気になったらね」
確かに、まだ小康状態の京子には少し早いだろう。
下ごしらえが一段落した沙樹は、腐りかけた男性の腕を切断して生のまま齧りついた。
それは腹を満たすというより、どちらかというと必要の無い物を片付けている感じだ。
「岩下さん、よくそんなに沢山食べられるわね」
「腐る前に片付けておきたいのよ。あれは京子に食べさせるために作っているから、あたしはこの生肉だけで十分よ」
「本当? 嬉しいわ」
これでまた、人肉の加工法が少しずつ増えていく。
猛獣の如く肉を貪り食う沙樹を手前に、自身の体調の回復を待ち望む京子であった。




