腹痛
狩った男性の肉をある程度食べ終え、腕に付いた血を落としたいからと2人は服を脱いで湖に入った。
ベットリした血が洗い流されていき、彼女達の髪は冷たい水に濡れてキラキラ輝いている。
マリンブルーの湖でしなやかに泳ぐ姿は、まるで人魚のようだ。
もちろん最初は2人とも楽しそうに泳いでいたのだが……。
6分経って沙樹が何気なく振り向くと、そこには冷や汗をかいて苦しそうな表情を浮かべている京子が見えた。
「京子、どうしたの?」
「っ……お腹が、痛い……」
「え!? とりあえず、上がるわよ」
食べ過ぎか、それとも冷えたからか腹痛を訴える京子を抱いて上がらせ、フリルのパジャマを着せて草の上にそっと寝かせる。
彼女は両手で腹を押さえており、息遣いも荒くなっていた。
「っはぁ、はぁ、うぅ……」
「空腹だからって食べ過ぎたからじゃない? あなたはあたしと比べて小さいんだから、ほどほどにしておけば良かったのに」
「っ…………」
沙樹の言葉に返事をするように、京子の目から静かに涙が流れる。
喋る事すら不可能のようだ。
「と言っても、遅すぎたわね……大きめのタオルがあるから、それにくるまってて頂戴。少しは楽になると思うわ」
沙樹は厚手のバスタオルを京子の首から下に被せると、気休め程度に彼女の腹を掌で摩った。
「狩りが出来るあなたが体調を崩したらあたしも困るの。もし調子が良くならないなら、薬を飲ませてあげるから」
一糸まとわぬ姿のまま、京子の傍に寄り添って語りかける沙樹。
腹具合が回復するよう、彼女も京子自身も心から祈るのであった。




