生サイコロステーキ
時刻は午後5時22分。
沙樹は男性の服を脱がせて裸にすると、心臓の辺りにナイフを刺して肉を切り裂いていった。
トマトジュースのような血がドバドバと溢れ出し、骨や内臓が露わになる。
それから4分ほどかけて腕と腹の肉を切り取ると、京子は今にも食らいつきそうな目でソレを見ていた。
「食べる前に、まずは食べやすい大きさに切らないとね」
京子の気持ちを察して彼女の肩に手を置くと、食べやすいように先程切り取った肉をブロック状に切っていく。
イタリアに逃げてからまだ日が浅く、これといって今出来る調理法はまだ無い。
何なら出来るかといったら、買っておいた塩と胡椒で味付けする事ぐらいだ。
「あいにく生のままだけど、いいの?」
「いいのよ。お腹空いてたところだったから」
切った肉に塩をふりかけると、京子は嬉しそうに口に運んだ。
よほど空腹なのか獣のようにガツガツと貪り食っており、流石の沙樹も目を丸くしている。
プヨプヨした生肉を次から次へと胃の中へ収めていき、彼女の腹はみるみるうちに膨れ上がっていった。
「京子、よく食べるわね」
「イタリア人の肉って初めてだもん。今まで食べたきたのとは違うものを感じるわ」
「そうね……」
沙樹は嬉しそうに、だけど少し呆れたように口角を上げて溜め息をついた。
イタリアに着いてから第1回目の狩りとカニバリズム。
2人はこの平和な土地でどれくらい狩りを成功させる事だろうか。
様々な経験を積んだ分、沙樹の誘い寄せも上達するだろう。




