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私だけのモノ  作者: 綾小路隼人
イタリア編

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32/53

新しい住処

気付いたら話がこんなに長くなりました。

イタリアに着いた2人は刃物店でナイフを買い、涼しい山の中へ向かった。

辺りには美しい緑が広がっており、更には湖もある。

沢山の木々に囲まれて気付かれにくい上に、湖で身体を洗えるから2人には好都合な場所なのだが、冬になるとこの場所で暮らすのは厳しいだろう。


「住む場所はしばらくここでいいわね。冬になったら、どこか空き家を探しましょう」

「ええ」


京子は山の中が気に入ったのか、草の上でゴロゴロと寝転がって気持ち良さそうに笑っている。

小鳥の鳴き声も聞こえ、実に快適そうだ。


「そうだわ。新しいナイフを買った事だし、人を1人狩ってみようかしら」


沙樹は買ったばかりの折り畳みナイフを京子に手渡し、不敵な笑みを浮かべてスクッと立ち上がった。

どうやら(ふもと)まで下りて、その近くを通りかかった人を襲う寸法のようだ。

しかし、誰でもいいという訳ではない。

2人が食べたいのは若い男性や子供の肉であり、ターゲットが決まるまではしばらく隠れる事になる。

そしてターゲットが決まった時、沙樹は美貌や話術を活かして油断させ、その隙をついて京子がナイフで刺殺する。

イタリアの平和な土地で、邪悪な計画が一歩進もうとしていた……。



€ € € € €



麓まで下りると、沙樹は木の幹の後ろに立ち、京子は木の上に登って隠れた。

ターゲットが決まるまで待つ事15分。

それまで無言でいた2人だが、沙樹は京子にしか聞こえない大きさの声で「やっと来たわよ」と声をかけた。彼女の手にはメモ帳とボールペンが握られている。

そう、遂に決まった(・・・・)のだ。

そのターゲットは地味な服装をしていて髪は短い金髪で、おとなしそうな雰囲気の男性だった。

そして身長は沙樹と同じぐらいで、ナイフで刺し殺すには狙いやすそうだ。


「これで、食料が1つ手に入るわ」

「そうね。でも、メモ帳とボールペンを持っているのには何か意味があるの?」

「今に分かるわよ。よくタイミングを意識して彼を上手く刺して頂戴。出来るわね?」


京子は嬉しそうな表情でコクリと頷いた。



沙樹は男性に声をかけて近付くと、道を聞いた。

耳で聞いて記憶するのが苦手だからと理由をつけて紙とボールペンを渡し、地図を書かせる。

更には、イタリアのお勧めスポットはどこか、などナチュラルな感じで雑談を始めた。

男性の方は沙樹を観光客だと思っているのか、笑顔で親切に説明している。

間もなくこの世にいられなくなる事に気付かずに……。


「もうそろそろかな?」


一方、京子はしばらく様子を伺った後、ゆっくりと木を降りていった。

そして、気付かれない程度に男性の後ろに少しずつ近付いてタイミングを待つ。

話に夢中になっている彼と至近距離になると、待ってましたとばかりにナイフを持った手を彼の首に向けて真っ直ぐに突き出した。

ズブリと音がして、厚い肉と脈が切れる感触がする。

突然の事で身動きがとれない男性は呻き声をあげる事しか出来ず、やがて首から大量の血を流して地面に倒れていった。


「……出来た?」

「そうみたい」


男性は白目を剥いており、服も血ですっかり赤くなってしまっている。

2人は彼を山の中へ引きずり込むと、しばらく草の上で寝転がってのんびりと時間を過ごしたのだった。

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