連携
友達のノートパソコンを借りて書きました。
時刻は9時41分。
京子は血が目立たないように赤いTシャツと黒いミニスカートに着替え、ナイフを手に持った。
彼女にとって、隼人を殺したのは練習にすぎない。
本番はこれから。そう思っている。
空腹も相まって、京子は狩りをする事にワクワクしている状態だった。
「準備は出来たかしら?」
「バッチリよ」
「それじゃあ、行きましょう。素早く、且つ慎重にね」
2人は顔を見合わせてコクリと頷いた。
※ ※ ※ ※ ※
10分ほど歩いて河川敷に差し掛かり、沙樹の背中だけを見てしばらく後を付いて行くと、沙樹が急に立ち止まってその背中に鼻をぶつける。
沙樹の嬉しそうな表情を見るに、どうやらターゲットを見つけたようだった。
「痛ぁ……良いターゲットが見つかったの?」
「ええ。食べ応えがありそうな男よ」
そのターゲットは、クラスメートの大倉拓矢である。
彼はバスケ部のエースであり、成績も良く、その上沙樹に一目惚れしていた。
誰が見ても沙樹は正しい人間ではないのだが、恋にウブな拓矢は大して気に留めていなかったのだ。
彼女が食人鬼だという事を知らずに………。
「ふふふ、今なら誰も見ていないから堂々と狩りができるわ」
「そうね」
「いい? 刃物で身体を刺す事は出来るでしょう? あたしが囮になるから京子はタイミングを見計らって殺して頂戴」
「分かったわ」
それだけ返事すると、京子は拓矢から見えない位置に隠れてしゃがみ込んだ。
そして沙樹は拓矢の方に駆け寄り、笑顔で話しかけた。
「拓矢君、久しぶりね」
「岩下さん!? 最近見かけないからどうしたんだろうと思ったけど、元気そうで良かったよ」
「そう?」
拓矢は心無しか嬉しそうだ。自分の想い人に会うとは思わなかったから、当然といえば当然だろう。
「そういえば、京子ちゃんは学校をずっと休んでるみたいだけど、どうしたのかなぁ?」
「何でも、体調不良らしいわ」
「そうなんだ……」
「でもそのうち元気になるわよ。気を落とさないで。あたしも、元気になるよう祈ってるから」
沙樹は彼の手の甲に自身の手を重ね、優しい言葉をかけていく。
すっかり話し込んでいる2人を見て、京子は立ち上がったと同時にナイフを構えた。
それから音を立てないようにゆっくりと近付き、今がチャンスとばかりに遂に彼の首を刺した。
「うぅっ!!」
鮮やかな血が首から流れ、短く呻く拓矢。
京子はニヤニヤと唇を歪めると、顔を見られないように目を手早く潰した。
眼球は見事にグチャグチャになり、割れた風船のように萎んでいった。
そして止めに心臓の辺りを深々と刺すと、拓矢は完全に動かなくなった。
「天国に行ってらっしゃい、拓矢君」
目を潰されて事切れた彼を見て、沙樹はほくそ笑んだ。
狩りが成功して、2人はどんなに嬉しかっただろうか。
京子は拓矢の死体を抱き起こすと、天使のような笑顔を浮かべたのであった。




