寝起き
ある秋の日。
雪のように白い曇り空の下で、京子と沙樹は大柄な男達に連行されていた。
15分ぐらい歩き続けて、着いた場所は不気味なぐらい静かな死刑場だった。
「お前達は大変な罪を犯し続けてきたな。その上反省の色が全く見えないから、その報いとしてギロチンで首を切ってやる」
「イヤよ、放して!!」
2人は男に羽交い締めにされ、暴れて抵抗しようにも細身の彼女達には到底不可能だ。
とりわけ京子は小学生のように小柄で、男達との体格差を見れば勝てる訳がない。
先に首を切られるのは京子だった。
彼女は首を固定され、情けない声で必死に許しを乞うた。
やがてそれを無視するように刃が落とされ、切断される寸前に見えたのは、哀れむような沙樹の泣き顔だった…………。
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「っは!」
唐突に視界が反転し、目を擦ればそこは見慣れた地下室だった。
額にはジットリと寝汗が滲み、枕やパジャマも濡れてしまっている。
自身の嘔吐物(と言ってもごく少量だが)の付いたタオルで汗を拭くと、頬に沙樹の手が置かれた。
「京子、随分うなされてたわね」
「ええ。とても恐ろしい夢を見たのよ」
「どんな夢なの?」
「何人もの男に死刑場へ連れられて、ギロチンで首を切られたの……」
京子はコアラのぬいぐるみを抱き締めて瞳を潤わせた。
「そう……怖かったわね」
タオルを手に取った沙樹は、一気に溢れ出た京子の涙を拭い、首から下に肌掛け布団を被せた。
「でも、夢は夢、現実は現実よ。もう忘れなさい」
「ん……」
「あなたはまだ寝てていいわよ」
そう言うと、沙樹はスポーティーなTシャツとショートパンツに着替えて地下室を出ていった。




