血風呂
時刻は夜8時22分。
浴槽には真っ赤な血が混ざった湯が張ってある。
沙樹は髪を洗い終わると、京子の腹に手を伸ばした。
里恵の肉を食べてからまだ間もないからか、腹はタヌキのように丸く膨らんでいる。
「ふふふ、可愛いお腹ね。でも太らないで頂戴。せっかくスタイル良いんだから」
京子はコクリと頷いただけで何も言わずに、穏やかな表情で風呂に浸かっている。よほど気持ちいいのだろう。
「それは置いといて、今日は恭弥の血をたっぷり入れた血風呂にしたのよ。素敵でしょう?」
「ええ」
甲乙つけがたいほどの美少女2人が、少々生臭くドロッとした血風呂に浸かっている。
常人からすれば何だか異様な光景だが、2人にとっては素晴らしいものだった。
京子は沙樹の家に来てから最初のうちは彼女の事をひどく怖がっていたのに、今では沙樹にすっかり懐いており、カニバリズムに対する恐怖や抵抗は1ミリも無くなっている。
人間、一度慣れてしまうと躊躇しなくなるものである。
「はぁぁ……岩下さんとずっとここで暮らせて幸せだわ」
「そう? うふふ……何十年経っても、あの世に行っても、一緒にいましょうね」
そうは言ったが、2人の行いを見るに、彼女達は死んだら地獄に行く事間違いない。
だが今の2人には、離れないでずっと一緒にいられる事の方が嬉しいようだ。




