食事
2017.2.17 文章を少し修正しました。
京子は誰もいない地下室で意識を取り戻した。
地下室は四畳半ほどの広さで、そこにあるのはベッドだけである。
それからしばらくするとドアが開き、沙樹がやってきて京子の手を引いた。
「やっと起きたのね。来なさい、食事の時間よ」
ダイニングルームに行くと、京子はテーブルの上を見て怖じ気づいた。
テーブルの上には…………血に塗れた目玉や肉片、そして子供のものであろう小さな腕が皿に盛られていた。
「い、岩下さん………これは何なの?」
「ああ、肉よ。まあ、肉は肉でも人間のだけど」
「冗談でしょ?」
「本当よ。証拠を見せるわ」
沙樹は冷蔵庫の扉を開けて、その中を京子に見せた。
扉を開けると同時に漂う冷気。
中には、幼い少女と20代くらいの男性の死体。
しかも、腕や足や内臓などがきちんと分けてある。
悪びれた様子のない沙樹の態度が、怖さを一層際立たせた。
「……なんでこんなものが冷蔵庫に? 岩下さん、まさか……」
「あら、意外と勘がいいのね。………ふふふ、そうよ。私が殺したの」
沙樹はニヤニヤと悪意たっぷりの笑みを浮かべた。
歪んだ唇、暗く影を宿した瞳、薄気味悪い笑い声。
その姿は、悪魔と言っていいぐらいだろう。
「さあ、食べなさい」
京子は震える手でフォークを手に取り、プルプルした肉片を一つ口に運んでゆっくりと咀嚼した。
1回、2回、3回…………。
すると、京子は唐突に口元に手をあてがって短く呻いたかと思うと、膝を折って床に思い切り嘔吐した。
「う………げえぇぇぇぇ!!!」
「もう、礼儀知らずね。人が出した食事をまともに食べてくれないなんて」
「……!?」
グチャリと、何やら生々しい音が聞こえる。
なんと、沙樹は何の躊躇もなく京子の嘔吐物を右手で掬って差し出してきた。
指の間から零れ落ちるクリーム色のソレは、どう考えても体内に戻すべきものではない。
「やめて……無理よ…」
「だぁめ」
「ぐぅうっ!!?」
沙樹は嘔吐物を京子の口の中に無理矢理突っ込んだ。
吐き出さないように喉の奥に手を入れられて咳き込むが、イヤイヤと情けなく拒んでは強制的に口を開けられて続けざまに飲まされる。
兎に角気持ち悪くて、生理的な涙が頬を伝って床に滴り落ちた。
嘔吐物が無くなるまでそれは延々続き、床が綺麗になった事を確認した沙樹はクールな表情を浮かべて嬉しそうに笑った。
「いい子ね。やればできるじゃない」
涙と唾液で濡れた京子の顔を撫で、沙樹はギュッと抱き締めながら囁く。
「吐いちゃダメよ。キツいお仕置きが嫌ならね…」
不快感がまだ残っている中、吐いたらこんな苦しい事をされる事に畏怖し、京子はそっと頷いた。