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私だけのモノ  作者: 綾小路隼人
日本編

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19/53

1人きりの日 〜後編〜

時刻は午後1時22分。


昼食の武の肉入りグラタンを食べ終えた京子はリビングのソファーに座って、2階にあった恋愛小説を読んでいた。食休みといったところだろうか。

窓の外からはセミの鳴き声が聞こえ、射し込んでくる日光が部屋を明るく照らしている。


「暇ねぇ……」


誰に言うわけでもない、短い独り言。

沙樹がいないと、こんなに静かになるものだろうか。

今聞こえる音といったらセミの鳴き声と、小説のページを捲る音と、壁掛け時計の針の音ぐらいだ。

京子は1回あくびすると、いつしかスヤスヤと眠ってしまった。



※ ※ ※ ※ ※



「っは!」


目を覚まし、時計を見ると5時半になっていた。

沙樹が帰ってくるまでは時間がまだ少しある。


とりあえず2階廊下の埃が前から気になっていたからと、京子は掃除機がけをやる事にした。

無機質な運転音が廊下に響き、床が徐々に綺麗になっていく。

それと反比例するように京子の額には汗が流れており、埃が吸い込まれていく様を見て、彼女は何だか清々しい気分になった。心なしか、廊下が輝いて見える。


「綺麗になった事だし、休憩しようかしら」


掃除機がけは意外と体力を消耗するのだ。

京子はリビングに戻ると、再び小説を読み始めた。

それでも時間は光の如く過ぎていくもので、それから数十分経つと玄関の方からドアが開く音がした。

京子の体感だと15分ぐらいだろう。


「ただいま」

「おかえり、岩下さん」


メール通り、沙樹は2体の死体を抱えていた。

京子と同じく美術部に所属している黒田恭弥くろだ きょうやと、その双子の姉の里恵だ。

服と首を見るに、里恵は果物ナイフで背中と首を深く刺され、恭弥はロープで首を絞められたのだろう。白目を剥いており、苦痛のあまりに整った顔が歪んでいる。

もちろん京子はその死体が誰なのかすぐに気付いたが、彼女の目は2人を人間として見ていないようだった。


「うふふ、男の子と女の子かぁ……」

「女の子の肉は柔らかくて食べやすいし、男とは違う美味しさがあるの。だけど、恭弥を殺す時は危なかったわ。暴れて逃げ出そうとしたのよ」


よく見ると、沙樹の腕には引っ掻かれたような切り傷が残っている。

ロープで首を絞めた際に、途中で恭弥が抵抗したからである。

そして普段以上に体力を使ったため、沙樹の手は小刻みに震えていた。


「そんなに震えてたら調理しづらいと思うわ。今夜はあたしがやってみる!」

「そう? 助かるわ。丁寧にやって頂戴ね」


京子は人肉の調理にすっかり慣れて、自信満々だ。

いつか狩りにも挑戦してみたいと思う彼女であった。

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