早すぎた睡眠時間
沙樹の家に住むようになってから数週間。
最初と比べて、京子は沙樹との生活に慣れてきていた。
もう彼女には、それが普通の日常になっていた。
それまで、どれほど散々な思いをしただろうか。
他の人を見てはいけない事、他の人に話しかけてはいけない事。他の人の事を考えてはいけない事。(死体は可)
食事は人肉がメインになっている事。
もし吐いた場合は、嘔吐物を口内に無理矢理流し込まれる事。
そして、つい最近出来た新しい条件として、京子と関わりのある人物も殺されて食べられる事。
その条件があって、クラスメートの武はロープで首を絞められた後唐揚げにされ、彼氏の和義は舌と右腕と目を切られ、その右腕は沙樹に生のままで食べられていた。
時刻は午後1時8分。
エアコンの効いた部屋が日光に照らされて心地良くなっているのか、京子は夢の世界へ旅立ちかけていた。
「京子。まだ昼間なのに、もう眠くなったのかしら?」
それに気付いた沙樹は、京子をお姫様抱っこして地下室へ連れて行った。
ベッドの上に寝転がった京子は蕩けたような甘い顔になっている。
ミントブルーのシンプルなワンピースに、サラサラした短い茶髪。
彼女の姿はまるで愛くるしい着せ替え人形のように見え、沙樹は京子の髪を撫でながら英語で歌を歌った。
その歌声は清く柔らかく、聞いていると子供なら必ず寝てしまうほど聴き心地が良いものであった。
そして1分後、京子は誘われるようにそのまま寝入った。
仏様を思わせる穏やかな寝顔を見て、沙樹は上品に微笑む。
「まるで天使のようね…………さて、今夜の夕飯をどうするか考えておかないと」
彼女は静かにリビングへ向かっていった。




