新たな犠牲者
時刻は9時17分。
起床するには少し遅い時間に、京子は目を覚ました。
ダイニングルームに行くと、ガチャッとドアが開く音がして、ちょうど良いタイミングで沙樹がやってきた。
彼女と同い年ぐらいの少年の死体を背負っているから、京子が寝ている間に狩りに行ったのだろう。
「…………え?」
京子は、その死体が誰なのかすぐに分かった。
彼は、
「か、河本君………?」
京子に恋心を抱いていたクラスメートの河本武だ。
「岩下さん、なんで河本君を……」
「なんでって、邪魔だったからよ。京子の相手はこの私なのに、軽々しく近付いたりするから…それだけよ」
流しに武の死体を乱雑に置く。
首にはロープがきつめに結び付けられており、顔は地獄の亡者の如く苦悶の表情を浮かべていた。
「ねえ、そんなに震えてどうしたの? 寒いの?」
夏なのにガタガタ震えて目を丸くしている京子の肩に沙樹の右手が置かれる。
彼女のバラ色の唇から溜め息が漏れ、ものの数秒後には厳しい口調でこう言った。
「そんなに驚く事じゃないって何回言えばいいのかしら。まさか、武君の事を考えてるんじゃないでしょうね」
「そ、そんな事ないわ……」
「本当ね?」
沙樹は仁王のような目で京子を睨んだ。
「兎も角、前に言った3つの条件をお忘れなく」
彼女は京子に背を向けると、武の首をナイフで切断し、死体を捌き始めたのだった。




