マリのかんさつにっき
4月23日(土) とってもいいてんき
きょう、はるちゃんはひまわりのタネをうえました。
さいしょにはちの中のちゃいろい土に、ぷすりとゆびをさしました。上はほんのりあたたかいのに土の中はひんやりしててくすぐったくて、ハルちゃんはけらけらとわらっいました。
それからしましまもようのおおきいごはんつぶみたいなタネを、いきをとめてそぉっとあなの中におとしました。ちゃんと中に入っているかをたしかめて、すこしだけ土をかけました。
さいごにきいろのぞうさんじょうろにいれた水をかけて、ゆうびんうけの下におきました。それからたくさんなやんで、ひまわりに「マリ」となまえをつけました。
はるちゃんは「はやくめをだしてね」といいました。
4月24日(日)
はるちゃんはママにいわれたとおり、あさは「おはよう」ゆうがたは「おやすみ」をいいながら水やりをしました。
「まいにち、ちゃんとおせわするからね」とマリにいいました。
4月25日(月)
きょうはざぁざぁぶりの雨ですこしさむかったです。だからはるちゃんはマリをげんかんの中にいれてくれました。
4月27日(水)
なかなかめがでないから、はるちゃんはママに「マリ、どこかにいなくなっちゃったんじゃないのかな?」とききました。ママは「まださむいからねてるだけよ。もうすこしまってあげてね」といいました。
はるちゃんはしょんぼりしていました。でも、おやすみの水やりにきたとき、いっしょに「ちゃんとまってるからね」といいました。
4月29日(金)
とても天気のいい、あたたかいあさでした。
マリはようやくめをだしました。さかさまにしたUみたいなかたちの、ほそくてしろい糸みたいなめでした。
ハルちゃんはぴょんぴょんとと3かいとびはねて、ママのところにはしっていきました。
「マリのめが出たよ」
というと、ママも
「ほんとねぇ」
と目を細くして笑いました。
5月1日(日)
マリはあさ、くたっとした糸みたいだったのに、ゆうがたにはばんざいするみたいに2まいのはっぱをひろげていました。
「げんきいっぱい、もっともっとおおきくなってね」
と、にこにこしたはるちゃんはいいました。
1週間、2週間……とたつうちに、指先くらいだったふたごのはっぱは、ぐんと大きくなりました。それから新しい葉もふえていきます。色も白っぽい緑からこい緑になっていきます。
5月が終わるころには、ひょろりとした糸みたいだった茎はにょききょきと伸びて、おはしみたいなしっかりした太さになりました。
はるちゃんはちゃんと毎朝かならず「おはよう」をいいながら水やりをして、夕方には毎日「おやすみ」をいいながら水やりをしました。
水やりをしながら「きょうはおひさまいっぱいだったね」とか「がんばれ がんばれ」とか、「おおきくなあれ」「きれいなお花をいっぱい咲かせてね」とか、そうそう学校であったこともたくさんおはなししました。
雨が降って寒い日には「だいじょうぶ?」と玄関に入れてくれて、天気が良すぎて暑い日にはじょうろで小さな雨をたっぷり降らせてくれました。
手のひらくらいの葉っぱをいっぱい広げて、ハルちゃんのお世話と応援と太陽の光をたくさん浴びたマリはいっぱい葉をつけて、茎は太くなって、ついにハルちゃんの身長と同じくらいまで大きくなりました。
7月20日(水)
今日は久しぶりのいいお天気でした。
はるちゃんはマリの茎のてっぺんに、つぼみがあるのを見つけました。まだ固い、緑色のつぼみです。だけどはるちゃんはぴょんぴょんと飛び跳ねて、ママに報告に行きました。
7月23日(土)
とても天気のいい、汗をかきそうなくらい暑い日でした。
はなびらはすっかりしっかり黄色に色づき、まわりから少しずつほどけるように大きく大きく開きました。
「わぁ……!」
はるちゃんは花開いたマリを見てもそれだけしか言いませんでした。でも、キラキラした目でじっと見つめ、少ししっとりとした花びらを優しくつまんで、けらけらと楽しそうに笑いました。
たくさん笑ってから何度も「きれい」と褒めました。
マリはとても誇らしげな気持ちで風に揺られました。
『ありがとう』
はるちゃんの耳には花の言葉は聞こえないはずですが、マリのその声が聞こえたように頷いたように思えました。