上京(situation)7 (´゜д゜`)
「とりあえずパーティ行動は継続、獲物は倒せるだけの早い者勝ち」
「ああ!」
「気合あるのはいいが隠密忘れるな?」
「…、……………」黙ってうなづく。
「スピ、討伐個体数の記録、頼むな?w今からだから」
「はい」
探索再開。
「ふーーーーーーーーーーーーーーーーーーー……」
一度気分を落ち着ける。僕はガキじゃない。心のままに行動してもいいことはない事くらい、街に出稼ぎに行ってる頃から知ってる。ここでまた更に学んだ。
基本的にこちら側から接敵して戦闘に入るのでそのアドバンテージは大きい。
なるべく大きな音は立てず、敵に気づかれないように移動する。
気づかれなければ向こうも大きな動きはなくBボールを当てやすい。
敵はラットしかまず出てこないエリアだ。一撃でいける。
「よし、あれだな」「うん」
すぐにまた見つける。
ィィィィィイイイイイイイイ…………
距離は20m。今度は4匹のラット。一度カハヤとうなづくとカハヤは静かに走り出す。走るのは何かしらコツがあるのだろうか…。まぁ投球するだけだし関係ない。
僕はまたその場で少し右に移動して振りかぶって、4匹の中で一番右のラットに狙いをつける。見立てとしては低めに縦横比が逆で横に広がるストライクゾーン、どこでもストライクだ。距離だけ意識すればいい。
「ぃ~~ーーー……ょっと!」
休む前の最後の投球に比べたら十分なコンセントレーション。
あ、ちょっと思ったより力んだな。イメージよりボールは左に逸れていく。さっきまでの感じが残っちゃってるな…まぁどうせすぐバテバテでいい感じにバランス取れるだろう。
いい放物線だし。ストライクゾーンからは外れない。
ビシィッ!!
「ギギィ!?」
見事にBボールはラットを捉えた。
「よっし(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾!」
さ、早く戻ってこい。回転も今度は十分だ。カハヤとフロンが相手してる分から余りが一匹出る、そいつも仕留めて僕がリードs
ブワッ!
「うっぷ!?……………ていっ!」
ザシッ!
「ギィ!」
「カハヤ!?」
あ。
Bボールが地面に着いて戻る際、そこが砂地で乾いた砂が多かったのか、けっこうな量の砂を巻き上げて、それがカハヤに降りかかった……。
カハヤは砂を顔を振って払いつつ、最初の動作のままラットを一体渾身の一撃で倒す。
「ごめん!(パシ)…………あ、」
「ぺっ…ぺっ………………?」
フロンはまだ交戦中。自分の戦闘に集中してる。
カハヤは砂が口に入ったか、それともその周りについた砂を改めて手で落とそうとしてる。けどそこに残った一体のラットが向かってる!
僕は声をかけるより先に次の投球モーションに入っていた。
「……っくッ!!」
回転はなくていい。とにかく、間に合えッ!!
ベシィッ!!!
「グェッ!?」
Bボールは見事カハヤとラットが接触する前に命中。
「………………………」
「ってぇぇぇぇ…………シェ、てめぇ……」
ただしカハヤに。
「………………」
「………………」
「……………………………………よっし(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾!」
「『よっし!』じゃねぇよ!?」
Bボールがカハヤに当たったことでラットの体当たり攻撃は逸れた。目的は達成、そういうことにしよう、うん。…………。
「エイッ」「ギィ!」「わーい、やったよカハヤ~♪……………どしたの?」
残ったラットはフロンが無事仕留めた。
「………………………」「……………………」
「ごめん、わざとじゃない」
「…………………」
「カハヤ、ラットが貴方を狙ってました。シェはラットを攻撃することで貴方を守ろうとしました」
「…………結果は?」
「……………。Bボールがカハヤの背側、右腰部に命中。カハヤの容態は軽度の打撲、最悪1週間はあざになるかと……」
「シェすごーい、ラットの攻撃に比べて大ダメージ!」
「すんませんしたぁぁぁぁぁあああああああああ!!!!!!!!」
わざとじゃないいいいいいいいいいいい!!!!!!
「アハハハハハwお尻だったらよかったね♪」
「おいフロン、ダメージの軽減の話じゃねぇ、行動選択にこの場合誤りがあったんだ!」
「へぇ~。……とりあえずタオルくれたら水につけてくるよ?」
「ああ、頼む。……今あいつうまく逃げたんじゃねぇか?!」
意気揚々とこの場を離れてくタオル…。ミニドラゴンの体でどうやってタオル絞るんだろう……どうでもいいか…。
「………………」
「さて、今の戦闘は反省しとかないとな」
「すいません、気を付けます」
「まぁ、こんなんで泣き喚いてたらキリがねぇ。わざとじゃないのもわかって……る」
すっげ~~こらえながら言ってるのがなぁ……。
「砂の舞い上げは事故みてぇなもんだ、仕方ない。けどBボール投げるってのはミスだろう」
「じゃ、他にどうすりゃよかった?」
「そりゃあ……とりあえずそこじゃなくて、Bボールの回転がないままお前投げてたろ?」
「そっち?いや、回転つけてたらそれこそもっと大ダメージじゃない?」
「やっぱ俺狙ってねぇか?!俺に当たるの前提で投げてんなよ!?………まぁコントロール甘いししょうがねぇ…か…?」
「いや、聞かれても…………」
「……………( -_-)」
「……………( ・´-・`)」
…………………………。
………………………………?
何この沈黙。
「カハヤ~もって来たよ~」フロンがタオル持って戻ってきた。ビシャビシャだった。
「おう、サンキュ。…フンッ!」あ、自分で絞るんだ…。
口周りの砂を改めてふきふき、最後に腰に当てながら一心地。
「あ~……………スピ、今の戦闘の問題点って挙げれるか?…改善しやすいの優先で」
文句だけは言いたかった感じだなぁ…。カハヤもあんまりわかってない?まぁこちらが悪いのは変わらない。
………偉そうとか思わない。素直に聞こう。
「はい。問題点は、最重要点が、
・行動選択において声・呼びかけを行わなかったこと
次点のサポート行動の選択においては
・Bボールのパワー充填を怠ったこと
・コントロールの甘さ
の2点が挙げられます。詳細を説明しますか?」
「たのむ」「おねがい」
「・行動選択において声・呼びかけを行わなかったこと
今回のシェのミスはここだと判断します。あの状況においてシェ自身がラットとカハヤの間に入ることはステータス・記録の成績上まず不可能でした。代替行動の選択としてBボールでの攻撃は有用性・咄嗟の判断として(通常フリーズするプレイヤーも統計で多いですので)評価できますが、それ以前にできることがありました」
「それが、『呼びかけ』…」
「はい。パーティで連携を行う以上、常に互いの意思疎通は重要です。呼びかけの内容と具体的使用例は、
「敵ラットの接近・攻撃態勢の知らせ『来てる!』『右!』『後ろ!』『目標〇時接近!』etc.」
「警戒態勢に入るべきパーティメンバーへの呼びかけ『カハヤ!』『前衛気を付けて!』etc.」
次に、
「シェ側でのサポート選択の内容『ボールいくよ!』『任せて!』etc.」
「メンバーが取るべき行動指示およびこちら側の行動に伴う動きの指示『伏せろ!』『避けて!』『飛べ!』etc.」 です。
練度の習熟の為に今後のパーティ行動においても密な声かけ・呼びかけを推奨します」
ああ、声かけねぇ……動いた方が~とか思っちゃうんだよね……。咄嗟に動くか声かけるか…声かけても向こうが反応できるか・どう動くか読めないってのもあるし…悩むんだよなぁ…。
「次にシェが行ったサポート行動に対してですが、
・Bボールのパワー充填を怠ったこと
Bボールは自身の回転を纏うことで初めて武器として機能を有します。
パーティ登録による安全装置は機能していました。回転が伴っている場合でもカハヤにBボール本来の攻撃が与えられることはありません。回転がない場合、Bボール自身での使用者へのリターンバックは難しく、外した場合での更なるサポート行動の選択肢が制限されます。改善点としてBボールの使用にはまず回転をかけることを推奨します」
「それでも腰いてぇんだけどなぁ……」
「樹脂やプラの類だけど野球ボールと(質量)変わらないもんね……ほんとごめん」
確かにBボールの回転かけなかったのはミスかも……。戻ってこないのは問題だよね。今回は当たったからいいけどさ…(カハヤに)。
でも、回転溜める時間なんて今、あった?無理でしょう。
「・コントロールの甘さ
今回十分なモーションに入る余裕もなくBボールは投球されました。シェは疲労が蓄積されるに従い手首のスナップを中心としたモーションのみの投球を行う傾向があります。今回も手首周りのみの投球でした。普段の一般的な投球モーションとシェ特有の手首周りのモーションが互いに影響し、コントロールに安定が見られません。長く続くと悪いモーションが定着し悪い癖となり、シェ自身の肘・肩を中心としたケガへもつながります。時間がかかりますがモーションの早期改善を推奨します。以上です」
「「「お~……」」」パチパチパチ
なんか拍手してしまった。
こういう時Fiペットってとってもいいよね。メモリーにお金使って普段からよく考えさせたり分析させてるだけあるある。
「いやフロン、感心してるがお前もこれ位解説とかできるだろ?」なぬ?
「ん?ん~~~~…………???」おや。
「召喚でスペック使ってるとここまで落ちるのか……ま、いいや。最後が一番やべぇな。手首だけって……それでも痛かったんだが…いや、そっちじゃねぇ。シェ、ちゃんと振りかぶって投げろ。バテる前、見てたぞ。女投げなんかしてんじゃねぇよ…」
女投げ……。力のない女の子が無理して投げる典型的なフォーム……当然、ダサい。
「…………………はい…」
ついやっちゃうんだよねぇ……。ってか女投げでここまで痛がるカハヤ……。ふっ。
「お前今笑わなかった?」「(ふるふる)(( ˘ω˘ ))」
「……………。まぁ、次からはとりあえず危険が迫ってるやつに名前呼ぶなりで知らせてくれ。俺らは近距離。お前は中距離でやり合うことが多いから必然サポート役にもなる。常に広く視野を持っとく必要がある……まぁスピがついてもいるだろうけど…」
あ、それなら……。
「じゃあスピがそういうのやってくれない?」
「いや、お前やれよ。スピはあくまでサポートと記録係だろ?」
「サポートの領分じゃない?…スピ、そういうのできない?」
「できます」
「じゃあ、おねがい!」
「わかりました。敵を認識していない状態で敵側の攻撃があった場合の緊急アラートの設定を対象・パートナーからパーティメンバーに変更しました。緊急時に私がプレイヤーの名前を呼びかけます」
「わーい♪」
「シェ、ただしこれはビギナーサービスのオプションシステムです。レベルが30以上で解除されます」
「はーい♪」
「レベル30以降はお前自身がやる役目ってことだからな?武器の感じから広い視野は持っといた方がいいと思うけどなぁ……」
「ま、いいじゃん。初心者初心者♪」
「早くベテランになりてぇの!」