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上京(situation)6 ( ˘ω˘ ) _旦~~

見渡す限り広がる草原とぽつりぽつりと岩や木があるフィールド。時折風も吹き、気持ちがいい。遠くには城壁に囲まれた街が見える。

草原もその群生はまばら。土も見えればある程度固まって腰の高さまで伸びてきてるものもある。まぁでもそんな程度。

視界を阻むものはおよそなく、丘陵でうねっているが軽い上り下りの坂道みたいなもの。地面の凹凸は進むのにそれほどストレスはない。特に大きな石や変なえぐれた場所もないので不意に足をくじく心配もない。歩いてよし、走ってよし。そんな草原で僕らは童心に帰ってランニング。どこまでもいけそう。


「走れ走れ走れ!!」

「ひぃっ……ひぃっ……ひぃっ……!」

「いたぞ、そのまま突撃!!」「おー♪」

「ちょ…ま………ふーーーーーーっ…」


Bボールを投げる。

「ふんっ!!」


バシッ!


「ギィッ!?」

よし。なんとか……

「よし、次!!急げ急げ急げ!!」「~~~う、~ェ、~ャク~~KJで~」

「ぐ……」


…………………。

訂正、無心に走る。いた。

「(タタタタタ…)」「(スィーーン…)」

カハヤとフロンがあれで……残ってるの…あれだね。

「ふーーーーーー……よっ!」


スカッ……

「(あ、やべ…もっかい……)うぃっ!」…………ベシッ!


「ギュッ!」

うん。カハヤらにフォーカス【注目】されてたからうまくリカバリー【やり直し】でk「次!あっちだ!」「おー♪」「~~~~、~チ~kJ」

「あの……ちょ…………」


訂正。

全力疾走です。

もうね、シャトルラン。

敵見つけて止まって投球して、また走っての繰り返し。

コア回収もどうせラットからなんていいものは出ないからとスルーして倒すことのみに集中。

拾えたら少しは休めるのに……。


ピピピピピピピピピピピピピ

「シェ、大丈夫ですか?」

「う、うん…」


Bボールの回転もなんだか心もとない感じだったりさっきから安定しない。カハヤはこっちの事なんも考えてない感じ。なんだろうね…。あ、いや、違うわ、さっき「走りながら回転溜めろよ」とか言われたわ。

そんで、結局、でも、当てさえしちゃえば、ぁんか、倒せるので、とりあえず、そんな感じで、カハヤ達の残りを当てに行くことに、集中して、


ピピピピピピピピピピピピピピピピピピ

「シェ、体調が異常です。断続してレッドに入ってます」


でも、カハヤ達は、僕より、たくさん倒してて、


ピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピ

「カハヤ、止まってください」

「よし、あれだな、いくぞ!」「おうよ~♪」

「………(;+_+)……」

「………………っ!」

助走つけたまま、なるべく、勢いがのるように、投げて、みるっ!

スカッ

あ、外した。

しかもボール、戻ってこない。その場で、こちら側に、ちょっと、転がって、それだけ。

拾いにいかないと。

いや面倒だ。そのまま拾って、ラットは、蹴っ飛ばす!!


ドカッ!!!

「ギィッ!!?」

よしっ!


「うわぁ…スマートじゃねぇなぁ…ま、いいや、次!」「わふ~♪」

結局、僕は一匹。残ってるのをカハヤ達が、そんで、残ってるのを、僕が……あれ?

「ってか……」


ピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピ


「ストーーーーーーーーーーップ!!!!!!!」

「カハヤ、エマージェンシー!!エマージェンシー!!緊急事態!!緊急事態!!Notfall!!Notfall!!Kecemasan!!Kecemasan!!…」

「……なんだよシェ、(バテるの)早ぇよ」

「そっちが早いんだよ!!!」


ピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピ


「あと、うるしゃーーーーーー!!!!!!」

おもわずヘッドディスプレイを外す。情報を出す画面は顔の上半分を覆う形で呼吸する分に問題ないけど、気分として息が詰まる! そのまま地面に叩きつけてやろうかと思うも踏みとどめる声がそこからする。

「申し訳ございませんシェ…」

「ああ!?ごめんごめん、スピのことじゃないから!?!」

「何やってんだよ~…………………w」


被り物にへこへこするのがそんな面白いか、カハヤぁ~……(#●ω●)

ヘッドディスプレイにさっきからもうずーーーっとアラート【警告音】が出ていた。

装備品各パーツから取っているサーバーに送られるバイタルの情報で、ある程度の健常から異常へのラインを越えるとアラートが鳴って休むのを促すようになってる。さっきからもう心臓がバックバクで息もまともに吸うのが辛い。アラートが鳴り止まないのも無理ないことだと思う。

本来、パーティリーダー…というかパーティ内でメンバーのバイタル・ステータス情報は共有されてるので当然カハヤにもこの警告音がいってるはずなんだけど。


「警告音、もう、ずっと、鳴ってるよね…?!」

「あー、まぁそうなー…」

「鳴ってるの?! 鳴ってるでしょ!? 無視すんなよ!!?」

「あー………切ってた」

「は?」

「いや、だからエディット【設定】で音は切ってたわ」

「ふざけんなーーーー!?」


っていうか切れるの、それ!??

僕が、キレちゃいそう!!!


「まぁ、気づいてはいたけどさ、まだ10グループ倒した位だぜ?始めて15分も経ってねぇ。しかも最弱のラットとか延々と……ここのエリアあんまり肩慣らし位にしかやっぱならねぇよ…」

「こっちは5週間ぶりくらいなの!手加減してよ!!」

「前回のダンジョンログインから38日です」正確な数字求めてない!

「怒る元気がまだあるじゃねぇか……」


もうみんな、もう!! もう泣いちゃうぞ?! 汗なのかわからないものが目尻に溜まるんだけど!!?

「口の中が鉄っぽい味するよ!! どっか内臓割けたりでもしてんじゃないの?!!」

肺が痛いです!!! 呼吸苦しい!!


「心配ありませんシェ。主に身体中の脆弱な体組織が強い筋肉になる為に一度崩壊し再生、その過程で体組織に含まれていたヘモグロビンを放出してるだけです。強い身体に今変わっている証拠です」

「そ。壊れるとかあってもせいぜい足裏回りの毛細血管のあたりの血液組織がつぶれてる位だ。走って酸素が足りないからその分血流が活発になって体内中の液体が入れ代わり立ち代わりしてる。その余剰で唾液にまでヘモグロビンの鉄分が含まれてきてるだけ。いったい何を勉強してたんだ?ってかどんだけ机にかじりついてたんだよ……まずシェは体力の底上げしないとな。とりあえずついてくるだけでいいわ。ワンモアセッ!」


酷い! 鬼畜! 鬼! カハヤ!!

思わず座り込む。

「カハヤ、少しの休憩を願います。シェの現在のカロリー消費量の内訳が戦闘行動より移動中の方が上回っております。SPも通常の活動領域より低下中、長く活動できません。短期的な運動より長期的な運動の方が消費カロリー・筋肉増加も見込めます」

うんうん、味方はスピ、君だけだよ……。

「カハヤ~、つまんなーい!」フロン、黙って。

「カロリーの問題じゃねぇ、根性の問題だ。続けるにはまずやり通すだけのメンタル……あ、おい地べた座んな、せめてそこの岩に座れ」

うっさいなぁ……ちょっと動くのも億劫なのに……。仕方なく少し移動して腰程度の高さの岩に腰掛ける。


「おーい、坊主~」


するといつの間にか壮年の冒険者っぽい人が目の前に歩いてきていた。ずんぐりした身体、防具や本人自身にところどころに傷…あ、違う、これ本人の方はフェイスペイントだ。腰に剣、背中に盾、ベルトやポーチの皮が使い込まれたような色合いで少し剥げもある。っていうか、よく顔を見たらさっきレディルームで見たベンチ一つ占領してたおじさんだった。

「うあ……」カハヤが苦虫を噛み潰したような顔をしてる。

おじさんは僕のところまで来たら飴を差し出してきた。

「無理してるみたいだな、ほらよ」

どうやら、アラートを受けたダンジョン(運営)側が判断して様子見の救援を出したようだ。NPCが飴や水を渡しに来てくれるパターンがあったが、こうしてダンジョン側でスタッフ【人員】を用意もしている。

スタッフもダンジョン内の中世ヨーロッパな雰囲気を大事にし、格好もこうして(この人の場合冒険者風な)ロールプレイで活動していた。

街と街を繋ぐ道とかがモンスターの来ないセーフティエリアなのでそこでバテてればNPCが来てくれるが、今いるのはモンスターがとりあえずいないとはいえ戦闘フィールドのど真ん中だもんな。

飴を受け取りすぐに口に放り込む。やっぱり塩飴だった。じんわりしょっぱい。

「水は飲めそうだな、あっちにあるからあとで飲んどけ。リーダーさん、パーティメンバーが悲鳴あげてんのに明らかな無視、いったいおめーら何やってたんだ?」

ああ、そういうことか…。対人トラブルの可能性有りと運営側が判断したんだ。

……………………。

……別にいじめられてないよ?


「一か月ぶりの運動で早く元の体力に戻してやろうと思ってさ、こいつもうすぐ地元戻んだよ」

「(コクコク)」言葉にする余裕はまだなかった。

「あー…エコノミー(症候群)か……。だが度が過ぎたな。焦ってもどうにもならんことはよくある。少なくとも俺の昼寝の邪魔しないでほしいもんだ……」

「……。ああそうかい……」

「疲れてんの?ww」フロン、君すごいね。

「ああ?……昨日も朝からトラブル解決してたらあれよあれよとこのフィールドの端から端まで行って帰ってよ。もうやってらんねぇわ。明日がやっと休み……ふぁ~……」

「………」「………」「……」「………」

「「「「お疲れ様です」」」」


このフィールドの広さは端から端で約20キロはある。一日に40キロ移動とか……トラブルも直線移動じゃないだろうしそれ以上だよね……。マラソンの大会で42.195km走るとかあったっけ……一般人が仕事として専門で一日がけの歩きとは言えそんなことしてたらきついと思う。ちなみにここの移動は中世の世界観を大事にしてるので重篤患者でも出ない限り自動車は出ない(それを防ぐ上でも今こんな風に早期の対応で未然防止を徹底してる)。基本荷馬車で牧歌的にのんびりと街と街をつなぐ道を進むだけ。トラブルが起こる戦闘フィールドには運営側からすれば自力で移動するしかない。

「じゃ、まぁ……がんばれよ。何かあったら助けを呼べ」

「はい、ありがとうございます」

おじさんは去っていった。スタッフさんには頭が上がらない。


「しょうがねぇなぁ…とりあえず再設定しろよ。設定画面出して健常バイタルのライン幅もう少し広げられるから」

「話聞いてた!?!?」

それ余計辛くなるじゃん!!! バテバテになってもうるさくならないだけじゃん!!!!

「デフォルト設定がお前みたいなひきこもりっつう最底辺以下の生活水準スタートに充てて作られてるから甘々過ぎんの。ここ来て1年になるんだろうが。もっかい言うけど地元帰った時に「遊んで~」とか言ってやってくる小学生にバカにされるぞ。帰ってきて遊んだ程度で足手まといとかここに来ててバカにされるのはこっちが耐えらんねぇよ。あの村で今んとこお前さん一人しかここには来てねぇだろ?」

「…………………」


ぐぅの音も出ない。

そうだよなぁ……あの村に誘いが来た時、結局出稼ぎから帰ってきたタイミングもあったけど乗ったのは僕一人。村長とカハヤ達の誘ってきた人らがある程度話して、あまり村長はいい顔してなかったような気がする。来てみれば色々面白いとこなんだけど……。

そっか……帰ったらここのことを伝えるのが僕の役目か……。


「新しい人間を誘えってわけじゃないけどさ、悪いとこは減らしとかねぇと。お前んとこの村、言っちゃ悪いけどいい感じじゃなかったな……そういうとこのお決まりってのはあら探しすんのがたいていだ。そんで見つけて難癖つけて拒否。お前さんがここに戻ることは最悪なくなる」

「……………………」 そこまで行っちゃうか……。

「一応生活水準が上がる長期的な投資になるんだが……貧困は思考を奪う。余計なお世話かもしれねぇけどよ……」

「……………………」「シェ……」

それもここ来て思った。学ばないと学ぶことの大切さはわからない…。それが何物にも代えられないものだということも。初頭の教育程度では理解できてなかった……知る由も。あの村で今一年学んだ僕以上の教育を受けた人間なんて村長位か、もしくは……。

「気合入んねぇな……わり」

「いや、いい……」

僕はここに来て、よかったと思っている。

いい友達もできた。

ここに来なければ得られなかったものだ。


「………………終わったらよ、じゃあアイスでも買わねぇ?いや、あれだな、こっちは50体、お前は20体先に倒した方がおごり、どうよ?」

「言ったな?」

「ああ余裕だ。いつまでも下手に長話させて休ませるこずるい奴には負けねぇ」

…………………………………#。

再設定…あった。全体的な上げ幅上限いっぱいまで。アラートも音声はオフ、これでせいぜい視界の端のいくつかのステータスバーが明滅するだけ。よし。

立つ。いける。

「シェ?」

「絶対、まけねぇええええええええええええええええええええ!!!!!!!」

口から血の代わりに唾がまき散ったと思う。どうでもいい。

「おっ、今ので周囲の敵が少し離れた。まだ少しでも休みたいのか?ww」

「上等だ、カハヤ、絶対勝ってやる!! アイス三つ頼むからな!?」

「俺は5個食うし」

「10個食うし!!!」

「アハハハハハハハハ」「シェ、論点がずれてます」

付き合いがいのある友人を持てたよ、まったく!!

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