上京(situation)2 (#^.^#)
【ダンジョン】。
これを聞いてどんな印象をみんなは思い浮かべるかな。
TVゲーム(僕はここに来て初めてやった。面白かった)の中のRPGというのを思い浮かべるのかな?
中世欧州の世界でありながら剣と魔法がモノを言う世界。そこで洞窟や塔とかあるいはまがまがしいお城とか、そこにはたくさんのモンスターがひしめいて来る者を待ち構えている。モンスターを倒すと経験値とお金、たまにアイテムが手に入ったりする、そんな場所だろうか。
もし、そうならこのスポーツ施設であるダンジョンはみんなの認識とは少しずれている。
ダンジョンの語源は、君主を意味するラテン語の "dominus" に由来する古フランス語であるらしい。 中世では、城の最重要部である天守 【keep】 を意味してて、ダンジョンは外壁が占領された後、守備兵達が立てこもる最後の砦であり、城の塔の中でもっとも堅固な部分であったとか。壁の強度を保つため、塔の下部には窓がなく、それゆえ君主のための豪華な城が建てられるようになってからは、主として囚人を閉じこめておくための場所として使われるようになったんだって(電脳百科事典引用)。
それが移り変わっていって、地下牢のことを指す言葉になったみたい。未だにダンジョンと言うとみんなゲームのあんな感じを思い浮かべるだろうけど、この言葉の一番の意味はまず、【地下牢】と出てくる。最近、ここを体験してから調べたから間違いない。
それで、このスポーツ施設『ダンジョン』はその一番目の意味に沿ってちゃんと街の地下にある。
住居や公共施設や店が立ち並ぶ地下に、広大に広がっているんだ。
総合スポーツ施設・ダンジョン。
ゲームセンターよりもずっとエンターテイメントとして充実し、アクティヴィティが多岐にわたる施設だ。この街がお金を出して作り、運営している。
利用の仕方を順に説明するよ。
やり方は公共施設を利用するのと変わらない。『ダンジョン』の文字がきらびやかに彩られて誇示している特徴的な建物に入る。上階には宿泊施設としてホテルも併設されてるので遠くから見てもちょっとした高いビルであり、すぐわかる。
「こんにちは」
「こんにちは」「ちはー」
「ダンジョンご利用でしょうか?」
「はい」「うん」
「身分証のご提示をお願いします」
まず施設に入り、この近辺の住民であることを示す身分証を受け付けで提示する。僕等の場合は学生証だね。それで認証が済まされる。
「では、こちらがキーとなります。いってらっしゃいませ」
「ありがとうございます」「どーも」
それで、次にそのまま廊下奥へ行った更衣室『レディルーム』で動きやすい服装に着替える。
ケガをしないようにひじやひざにプロテクターをつける(危ないからね)。プロテクターはつけてても邪魔にならない位分厚くはない、なんかカハヤが言うには一昔前にローラーブレードと言うのがあって(カハヤも少しやってたみたい)それのよりも薄いとか………まぁなんか知んないけど改良されててこれはとっても軽くて丈夫。つけてもつけてなくてもおんなじ感じで動けるから違和感なんてない。
着替えやプロテクター、装備一式は個人ロッカーを持って預けておくことができる。それこそセーブデータのようにロッカーに入れて扉を閉めてキーを返して次来たら別の場所のロッカーを使うけど、中身は以前置いた形になって出てくるからちょっと不思議で面白い。冒険の後に汚れても希望すればサービスでプロテクターや衣類を指定してクリーニングしてくれるから至れり尽くせりだ(その時はロッカー内の指定ポケットに入れとく必要がある)。
更衣室には当然のようにきれいなシャワールームと洗面台があるし、天井からモニターが釣ってあってダンジョンのメンテナンス案内やイベント告知に各種ランキング等が定期で流れている。
着替えながら周りを見るとみんな運動しにきてるだけあって健康的な身体つきをしている。
「ヴェッフン!…ベクション!!」
「うぇ…あのおっさんいつも半裸で見るぞ…くしゃみかせきどっちかにしろよなww」
「聞こえるよ…?」
「大丈夫だよ、あれでも寝てんじゃん。でもよー、あのおっさんいつもあそこのベンチ占領しててさ、フィールドで逆に見たことないぞ」
いや、ちょっと訂正。更衣室はそこそこ快適なのでこういった革張りのベンチに寝そべって時間をつぶしてるような小太りのおじさんもいる。とても気持ちよさそうだ。
「あのベンチだけは空いてても使わねぇように気をつけよう…」
「カハヤ…」
一応、ダンジョンの入口の施設の地上階は宿泊施設と大衆浴場があるのだが、装備を着けたままだとここからは出られず、このおじさんのように頑張って着替えたんだろうけど、途中で力尽きてベンチでぐてーっとしてる人もいる。脇に一応小さいスペースで休憩所もあるんだけどな…。
「ん゛ん゛~……」
「…(こすりつけんなよ~)………」
身じろぐおじさんにカハヤが小声でぼやく。
あのベンチ気に入ってんのかな…。
「よっし、身に着けたな?忘れもんないな?」
「財布いらないんだよね?」
「ああ、デバイス上でできる」
「水は…」
「中で飲める」
「(食料……短時間だし……)あ、これ持ってっていい?」
さっきまで食べてて余った分の携帯食料を取り出す。
「いいけど、……お前まさか相変わらずそればっかりじゃないだろうな?」
「え、あー………」
「………………」
「…………」
「お前な、注意事項にあったろ?…あっち帰ったらなんも食えなくなるぞ?」
「…わかった。でも好きなんだ」
ここの街に来た時に住民登録する際、たくさん注意と警告の事項があり、それの説明会の中でも基本的で覚えてる中に食生活の乱れの喚起があったのを覚えてる。
「………」
「帰ったらスープとナシゴレンでも食べるよ。それで、じゃ、大丈夫かな?」
腕時計も携帯もデバイスに代わるし、鍵もロッカー…。
「そうだな、じゃ…」
ビーー!ビーー!ビーー!
「ん?」「え?」
急に僕らが入ってきた出入り口の方向からブザーが鳴った。
みんなも一様にそちらを見るが、すぐに向き直って各々のやってたことに戻っていく。
そこでは3人の僕より年下の子達がいた。
「バッカ、お前!」
「あれー?、あ、ごめん、アクセまだ着けてた!」
ブザーの原因はどうやら装備品のロッカーのしまい忘れのようだ。
持ち込むものは色々OKなダンジョンではあるけれど、このダンジョン内で扱っている装備品・アイテムの持ち出しは厳禁である。全てダンジョン内で消費もしくはロッカーに預け入れることがルールとなっている。
もし持ち出そうとすると今のように出入り口でセンサーが反応し、ブザーが鳴る。
これが確か第一警告。
「ごめんね、すぐ戻してくる」
言った子は戻ってすぐにアクセサリーを取り外してロッカーにしまうと仲間の下に戻り、部屋を出て行った。
「…ん゛ん゛~~……」
さっきのおじさんが眠りを妨げられたのか不満そうに身じろいでいた。
もし、アクセサリーと言えど着けたままここから出ようとすると更に警告と警戒の度合いはレベルを上げていき、受付にたどり着く前に格子や防壁が降りて一時的な封鎖になる。その堅牢さは人の身ではおろかこのダンジョン内で手に入るどんな武具でも決して破ることはできないという。完全に閉じ込められるのだ。そして、ルールを破った人には相応の罰が待っている。
その名のとおりここはまさしく、ダンジョン【地下牢】なのである。
「気をつけねぇとな。…いくか」「うん」
僕等は彼らとは反対の出入り口に向かい、ダンジョンの奥、フィールドへと向かう。