いや待て落ち着け。日記を書こう。
k月t日
木木木。一面どこを見ても木しかない。正に森。森林としか例えようがない。どうしろってんだよ、くそっ。
っと、いきなりすまない。私の名前は端芽野裕二。わりと大きなショッピングセンターで働くしがない平社員だった。
だった。という言葉どうり、今は違うのだ。別に首になったわけではないし、ストライキを起こしているわけでもない。…或いは本当に私を首にした結果が今の状況かもしれないが私には判らないことだ。そう…
辺り一面森の小さな小屋に一人でいるこの状況が!
いい年こいたおっさんが何をいっていると思うかもしれないが、ふざけている訳ではない。…まあ、この日記を私以外の誰かが読んでいるというのなら、わかってもらえていると思う。…しかし眠い。今でこそこうして日記をつけられる程度には落ち着いているが、つい先程までは自分であきれるほどわめいてしまって疲れているのだ。いや、瞬きしたら景色が突然変わってしまっていたのだ。しかたないだろう?子供のようだがこの際仕方がない。もう寝ることにする。起きたら元の家に帰っていますように。
k月h日
起きた。家じゃなかった。…ずっとここにいても飢え死にするだけだ。先程少し調べたが小屋のなかには俺の寝た布団、今使っている机と椅子、日記帳とゲームとかでよくみる羽ペンしかおいてない。因みに今は来たときに持っていたボールペンで書いている。いきなり羽ペンを使うなんて、ゲームの主人公でもない私には無理な相談だよ。
さて、憂鬱だが仕方がない。ここで少しペンをおき、外を歩いてこようと思う。願わくばまたこの日記に続きを書けることを。…まあ、蛇や蜘蛛に気を付ければ歩くだけなら大丈夫だろう。
…いったいなんなんだよここは!?
緑の怪物が狼のような生き物を殺していた。子供の頭ほどの大きさの石で、狼のような生き物を殴り、錆びたナイフやとがった石で滅多刺しにしていた。…全部が全部、笑いながら。
今日はもう寝る。一応今日とった林檎や小鳥の食べていたものと同じ木の実は布団の脇においている。明日食べるものには困らないだろう。
k月m日
最悪だ。
k月y日
よし、大分落ち着いた。やはりストレスが溜まったときは原因の一つ一つを整理して飲み込むに限るな。しかし気持ちの悪い光景だった。あんな怪物が彷徨いていたのではおちおち外にも出られない。ああ、一応書いておくが、武器になりそうなものは持っていない。…持っている方がおかしい。会社でデスクワークをするのにハサミもカッターも要らない。ましてやナイフを常備するなんてあり得ない。ハンカチとティッシュ、ボールペンと財布しか常備品はないよ。携帯電話は鞄にいれていたから持っていない。後輩のなかにはデスクにいても携帯電話を離さない者もいたが、外にでないなら内線で十分だ。…今となっては後悔しかないが。
その辺に落ちている木の棒を振り回すことはできるが、それでは牽制にしかならないだろう。であったり見つけたら逃げる。これは徹底しなければな。
k月i日
今さらだが、ここは地球ではないのか?
先だっての緑の怪人や見たこともない鳥や虫。このご時世だ。たとえ外国とはいえ見たこともない鳥や虫はともかく、緑の怪人のような存在が居るのはおかしいだろう。とはいえ、一日の長さは体感ではあまり変わらない。太陽も月も違和感は無いのだ。他の星?俺は星座なんぞ知らん。射手座だからそういう星座が有るのはわかるが、どれがそれかはわからんしな。
さて、ここが地球ではないと仮定したとして、難しいことも疑問もすべて後回しにしたとして、確認しなければいけないことがひとつ。…俺がとってきたものは、食えるのか?取りあえずは、一種類をほんのすこし食べてみて異常が出るか確認しよう。30分たって何も起こらなければ食べる。不用心に思えるかもしれないが、正直腹が減ってしょうがないのだ。男は度胸。また明日も、日記がかけますように。
k月r日
とりあえず、生きている。体にも異常はない。気絶して起きたとか、そんなことは断じてない。…あの林檎っぽいやつは暫く封印だな。味はよかったし、なんとか食べたい。耐性とかつかないかなぁ。
昨日今日で大分減ったし、また採取に出掛けよう。合言葉は?
見敵必逃
これに限る。願わくばまたこの日記に続きを書けることを。
今日は怪物には遭わなかった。さすがに緊張したよ。今日はもう寝る。
k月n日
昨日の成果。…全部最後には擬きがつくが、気にしない方向で。
苺…15こ
一ヶ所に群生していた。よく採りすぎはいけないと実家のばあ様に言われていたので一部だけだ。虫食いやついばまれた後もあったので、情報なしの物よりは安心である。…あくまで多少ではあるが。
胡桃…25こ
至るとこに落ちてた。食えそうだけど殻が割れない。石に叩きつけたりもしたけどまあ、素手じゃね。当面は投げて時間を稼ぐための礫だ。どこまで効果があるかはわからないが。
山葡萄…3房
実家のばあ様に言われていたので(ry
これは確実に安心だ。運ぶ途中にも鳥が啄んでは逃げるのだ。気になったから食べてみたが、滅茶苦茶旨かった。問題は自生地が少し遠いことかな。
林檎…2つ
旨かったのでつい採ってしまった。
一気に食うと気絶するみたいだし、食うときは気を付けよう。
木の実…1つ
これを書いてるときに摘まみ感覚で食ってたらこうなった。わりとうまいよ。
こんな感じか。果物ばかりだから、魚が恋しい。肉は…まだ暫く食べたくないな。
さて、軽く運動して寝よう。怪物から逃げれるようにならないといけないし、体をほぐして寝ないと明日に響くしね。全く、年はとりたくない。明日は…人でも探そうか。いる保証なんて無いけど。
男は、そこでペンを置いた。
彼の祖国、日本では平均的な170cm程の身長に程程ついた筋肉と脂肪。
正に平凡的な彼は手を組、体を伸ばした。そして脱力。椅子から立ち上がり頬を叩く。
「よしっ!」
掛け声をあげて気合いを入れる。
日記に書いた通り、軽く運動をするつもりなのだろう。
そんな彼を見守るのは、今は天に浮かぶ月のみ。
「腕立てと腹筋背筋。30回ずつ…は辛いから、まずは20回から慣れていこ」
降り注ぐ月光はただ優しく、小屋を照らし出していた。
誰か一人でも続きが見たいと言えば書く。
緑の怪人やら人探しとかこの星についてとかかけることは結構あるしね。受けがよくわからんので取り敢えず短編で