初めて光
昼休み。中庭。
俺は目の前の光景に戸惑っていた。
「喜一君?」
「な、なんだ?」
「ずっと呼んでいたのに反応がないから。どうしたの?大丈夫?」
最近チャラビーはこんな調子だ。
何か上の空で桃花の話を聞いていない。
その間に必死に愛を囁いている桃花。
「ああ、大丈夫だ。なあ、西木、今日は牧田さんはいないのか?」
「牧田?」
牧田か……
「牧田はきっと遠慮してるんだろうな……」
「遠慮?」
「ああ、昔もそうだった……」
「昔……それは私が知らない話?」
「ああ」
そうして俺は語りだす。
牧田との出会いを。
俺は中学時代、文芸部だった。
桃花は運動部に入っていた。
要するに桃花の部活が終わるまでの時間つぶしで入った。
そこで、牧田と会った。
「先輩、やる気あります?」
「ない!」
「はあ」
当時の彼女は今と違って眼鏡をかけていておとなしかったよ。
「俺は桃花の練習が終わるまでの時間をつぶしたいんだよ」
「そんな理由で入部しないでくださいよ……」
「いや、純粋に本も好きだぞ?」
「まあ、それは見ていてわかりますが……」
俺の横に置いているたくさんの読み終えた本を見て言う。
「でも、なんで、ちゃんと文芸部の活動しないんですか?」
「ふ、愚問だな。それはもちろん桃花との時間を優先したいからだよ!」
「はあ、じゃあなんでまだ付き合ってないんですか?」
俺はこの時桃花の前では消極的でいまだに付き合えてなかった。
「まあ……時期が悪い!!でも好きだ!!」
「とんでもないいいわけですね?」
「まあ、そうともいう」
そんな感じで放課後の時間を牧田と過ごしていた。
少なくても俺にとっても牧田にとっても、楽しい時間だったよ。
そうして卒業になって俺は最後に部室に行って牧田に告げられたんだ。
「今までありがとうな?」
「いえ、こちらこそ楽しかったです……」
かすかだが、確かに牧田は涙を流していた。
「おいおい、こんな不真面目な先輩のために泣くなよ?」
そう言って頭をなでる。
「不真面目でも先輩は先輩です…」
「そうか…ありがとう」
その時の牧田の眼はまっすぐで目が離せなかった。
確信していたわけじゃない。
でも、なんとなく気づいていた。
この子は俺のことが……
「先輩、好きです」
「ああ…でも俺は……」
「知っています……」
この子は初めから知っていたなのに好きになってくれた。
つまり覚悟して好きになってくれた。
そんな彼女を否定するのはつらい。
「すまない……」
俺にはそれしか言えなかった。
そうして俺は中学を卒業した。
そうして高校入学から今まで彼女は俺に近づいてこなかった。
それはきっと彼女なりの遠慮で思いやりだったんだ。
「そうか……」
チャラビーは何か思い詰めていた。
「それが、どうかしたのか?チャラビー」
「……牧田さんが気になる……」
「「え?」」
チャラビーの突然の発言に俺たちは固まる。
「喜一君、私は飽きたの?」
「そ、そんなわけねーだろ。ただ何となく気になるだけだ」
「だめだ!!」
気づけば俺は大きな声を上げていた。
「ひ、光?」
「い、いや、チャラビーは桃花がいるだろ?二股はよくないぞ?」
俺は焦って取り繕う。
だがこの時の言葉は建前だった。
ただ嫌だった。牧田まで取られるなんて……
「…安心しろ。ただ、気になっているだけだ」
「そうか……ならよかった」
私の時はこんなに焦ってなんてくれなかった。
なんで……私は大切じゃないから?
無意識にそんなことを考えていた。
「じゃあ、俺は先に教室に戻るな」
光の後姿は焦っているように見えた。
そんな彼初めてで、戸惑った。
「光……」
私はこの時確かに感じていた。
嫉妬というものを。
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