不公平
「くそ!」
俺は胸の中の言いようのないもやもやを声に出す。
何でこんなことに!
本当だったら、今頃、俺は可愛いくてスタイルのいい彼女に抱き着かれながら、優越感に浸りながら登校しているはずだったのに。
昨日のせいでまためんどいことになってしまった。
遡り、昨日。
「え?ど、どういうことだよ?桃花」
桃花は何も言わない。
ただ黙って手を強く握っていた。
「おい!何か言えよ!」
俺は桃花の手を取り、問い詰める。
「おい、チャラビー落ち着け」
西木が俺を止める。
「桃花、何か考えがあるんだろ?」
桃花は一息おいて話し出す。
「……私、本当は分かってた……こんなの卑怯だって」
「桃花、何言ってるんだ?」
「喜一君、私、光の好意を断ることもせず、その好意に甘えて喜一君と付き合った」
な、何を言ってるんだ!?
そんなこと別にいいじゃないか!
どうせこの世はいつだって不公平だ!
それが世の常だ!
「桃花……」
西木は少し悲しそうに桃花の名前を呼ぶ。
桃花は視線を西木に向けて告げる。
「だから、もう一度、ちゃんとしたい」
「ちゃんと?」
「うん。初心に戻って、光の見ているところで真剣に喜一君に恋をする」
「…それが、桃花先輩の証明ですか?」
「ええ、私なりの証明の仕方」
桃花は真剣だ。
だが、俺は反対だった。
「まてまて、そんなことないだろ?」
「喜一君?」
「桃花、考えてみろ。世の中不公正じゃないか?そんな義理を通す意味どこにある」
そんな俺の言葉に桃花は迷いなく告げる。
「うん。わかってる。でも、私はこのままじゃ進めない」
「そういう話じゃ……」
「チャラビー無駄だ。こうなった桃花は止められない」
「だが!」
「チャラビーは自信がないのか?」
「な!?」
自信?
そんなものないわけないだろ?
俺はこの顔、スタイル、話術、テク、どれにも自信がある。
それだけの努力をした。
「……いいだろ。その証明とやらに乗ってやる」
それは後に強く後悔することになった。
戻って現在。
「恋ねえ……」
正直、桃花の証明には興味はない。
だが、俺のプライドが許さない。
女一人再度落とせないなんて。
そうすると目の前に桃花が見えた。
「おお、桃花…」
声をかけようとして、俺はとっさにやめる。
「桃花、おはよ」
「……」
西木が一緒だったからだ。
西木のあいさつに桃花は無視をしている。
ふん、当たり前だ。
俺の女だ。
「おーい」
「………」
「無視か……なら」
そう言ってバックから飴玉を取り出す。
「これはお預けだな?」
「ふん、そんなのでいつまでも釣れるわけ……」
「ピッチャー振りかぶって、投げ……」
「ええい!やめなさい!」
「ふ、焦る桃花も可愛いな?」
「あ、悪質……」
そうやって、仲良く登校している。
その光景は俺の心の内に焦りを生んだ。
二人は確かに不公平だった。
「まだ俺の邪魔をするのか……」
俺の人生における絶対の敵。
それは不公平。
だが、俺は負けられない。
あんないい女みすみす逃がしてなんかやらない。
俺は最高の男なのだから。
「桃花!!何してる?」
「喜一君……」
俺は桃花をにらむ。
おびえて固まっている様子は優越感を生む。
これが絶対強者の眺めだ。
「チャラビー……」
ふ、西木もなかなか驚いているな?
優しいだけがいい男ではない。
「こんな公然の面前でドSなプレイとは恐れ入る」
「は?」
その言葉に周りにいた生徒がこそこそしだす。
やがて周りには人がいなくなる。
「じゃ、じゃあな。二人とも」
逃げるように西木は校舎に入っていく。
「……喜一君、私たちも行こうか……」
「そうだな……」
桃花の証明は前途多難な証明になりそうであった。




