上書き
俺は保健室で目覚めた。
「うん?ここは?」
「あ、起きた……」
すぐ横には桃花がいた。
だが、彼女は見るからに落ち込んでいた。
「桃花?」
「……ごめんなさい…ごめんなさい」
そして、なぜかずっと謝ってくるのだ。
くそっ!
あの女許さねー!!
俺の初めてのキスは桃花とだって幼いころからの決まりだったのに!
「な、なんで謝るんだよ?」
「……私あのキスで気づいたの……光にあんな思いさせたんだって……」
「い、いや。俺はそんな思いは……」
「嘘でしょ?」
「!?」
桃花は気づいた。今回のことで。
「「燃えた!」なんて嘘なんでしょ?」
「………」
俺は何も言えない。
「私考えてた……でも分かんなかった……光はなんでつらくなかったのかなって」
彼女は一息おいて告げる。
「つらくないわけないよね……当たり前だった。だってずっと一緒にいた私がキスでこんなにつらいんだからつらくないわけないよ……」
「……桃花……なんで」
俺は嗚咽が漏れる。
感情が制御できない。
自分の感情じゃないみたいに暴れる。
「なんで、俺じゃなかったんだよ……俺は、お前が、お前だけが大好きだったのに………」
漏れた感情はもう止められない。
流れ、浮き、とめどなくあふれる。
「ごめんなさい……」
「そんな言葉じゃ!お、俺は……」
その瞬間、桃花が俺を抱きしめる。
「分かってる……許さないで……一生言い続けて……」
彼女は許しを求めはしなかった。
背負うこと選んだ。
彼女は求めた。許されない道を。
「うっ、うっ」
俺は桃花の胸でしばらく泣いた。
そうしてしばらくして落ち着いた。
「ごめん……弱いとこ見せた……」
桃花は横に頭を振る。
「もっと見せて……私、光の弱いところもっと知りたいから……」
「…分かった」
彼女の眼はただ悲しそうに苦しそうに見えた。
それは背負う覚悟の代償だろう。
だけど、その目は前を向いていた。
「なあ、桃花」
「うん?」
「お願いがあるんだ」
「なに?何でも言って?」
俺は少し視線を背けて、告げる。
「上書きしてくれないか?」
「上書き?何を?」
俺は手で強くシーツを握る。
「キ、キス」
「……!?」
桃花はみるみる赤くなっていく。
「な、何を言って……」
「お願いだ!初めては桃花だって思っていたんだ!」
「で、でも彼女がいるのに!?」
「ああ、だが彼女がどうした!初めてはお前がよかった!」
「無茶苦茶!?」
それを聞いて少し桃花は悩む。
もう少しだ!
「どうせチャラビーとはたくさんしたんだろ?俺だけしないのはずるい!!」
「うっ!?」
迷ってる、迷ってる。
いい感じだ。
「わ、分かったわよ」
「よし!じゃあ、お願いします!」
俺は覚悟を決め目を閉じキスを待っているのだが一向に来ない。
目を開けると桃花は顔が真っ赤だった。
「おい、どうした?慣れたもんだろ?」
「う、うるさい!少し集中してるから黙って待ってて!」
「お、おう」
彼女の鼓動は早鐘のごとくなっていた。
そう彼女はキス以上のことはやっていた。
だが、キスはしたことがなかった。
それはチャラビーが体の関係に満足してしまっていたからだ。
キス、つまり愛は無意識に求めてなかったからだ。
「まだかー?」
「も、もう少し」
ゆっくり確実に彼の唇に彼女の唇は触れる。
それはほんとに数秒の時間だった。
「は、はい!これでいいでしょ!じゃあね!」
そういって彼女は去っていく。
少しの間、俺は呆気にとられていた。
だが、その事実に俺の感情はあふれた。
「よっしゃーーー!!」
その喜びの声は廊下まで響いていた。
一方、その頃、桃花は……
「はあ、はあ」
何あれ?鼓動は収まらない。
キスってこんなにいいものなの?
だが、そこで気づく。
「喜一君とじゃあんなにならない……」
気づく彼女。
「私は好きなんだ……」
改めて実感する彼への感情が確かな恋であり、愛なのだと。
「こ、これからどんな顔して合えばいいの……」
彼女は顔を真っ赤にさせながらもだえ苦しむのだった。
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